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ノート(22) 弁護人との接見を経て、基本的な弁護方針が固まる

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~逡巡編(7)

勾留初日(続)

筒抜けの接見室

 刑務官に挟まれて裏廊下を通り、ずらりと接見室が並ぶ事務棟2階の部屋までやってきた。接見室はいずれも扉をきちんと閉めていたものの、中の声が外まで丸聞こえだった。扉や壁が自殺防止房などとは比べものにならないほど薄っぺらかったからだ。

 特に接見室の扉は木製で年季が入っており、かなり頼りないものだった。また、被疑者や被告人の側と弁護人の側との間が透明のアクリル板で仕切られているため、声がこもって聞き取りにくく、自然と大きな声になってしまう、という構造上の問題もあった。

 アクリル板の下の方には声を通すための小さな丸い穴が幾つも開けられているが、あまり意味がないように思われた。

 弁護人の対応に不満でもあるのか、「話が違う!」「アンタのせいだ!」などと弁護人を怒鳴りつけている声も聞こえた。

――これでは、職員を接見に立ち会わせないようにしている意味がないな。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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