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ノート(34) 内側から見た拘置所における娯楽の実態、嵐の前の静けさ

前田恒彦元特捜部主任検事
(ペイレスイメージズ/アフロ)

~解脱編(6)

勾留9日目

ダダ漏れ

 大阪拘置所では、毎日、昼と夕方の2回、居室に設置されたスピーカーからNHKラジオのニュース番組が流れてくる。拘置所側が事前に放送内容を検閲しているので、昼に流されるのは朝の、夕方に流されるのは昼のニュースの録音だ。

 ただ、検閲で放送内容がカットされることはなかった。夕方から就寝時間までの間、ほぼリアルタイムでラジオ番組が放送されており、ニュースコーナーなどの中で様々な事件報道も行われているので、NHKニュースだけを制限しても意味がないからだ。

 この日の昼の放送、すなわち朝のNHKニュースは、「最高検の取調べで前田検事は意図的な改ざんを認め、これを当時の大坪部長や佐賀副部長に報告したと供述している。これに対し、彼らはこの事実を全面的に否認している」といった内容だった。

 彼らを刺す供述調書にサインをしたのは前日の夜だったが、報道までの間、これを誰にも話しておらず、弁護人と接見すらしていなかったので、まさしく最高検しか知り得ない極秘のネタにほかなかった。

――最高検は、相変わらずマスコミに情報を流すのが早いなぁ。

 僕は呆れたものの、中村検事に詰め寄った勾留4日目の時のような憤りの感情はなかった。全ての事態をありのままに受け止めるという達観した心境に至っていたし、しょせん検察とはそういう組織であり、僕が憤ったところでその本質が変わることなどあり得なかったからだ。

ラジオ放送

 ここで、拘置所生活、特に独房における娯楽について触れておこう。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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