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掛け声ばかりの政府に女性官僚たちは怒りだしたのか

前屋毅フリージャーナリスト

掛け声ばかりが勇ましい、そういう印象が安倍晋三政権には強い。6月24日に閣議決定した新成長戦略で「女性が輝ける日本へ」という掛け声をかけているが、労働力の不足を女性で補おうという意図ばかりが見え見えだ。

そんななかの6月26日、霞ヶ関の女性官僚6人が加藤勝信・内閣人事局長に対し、「子育てと両立できる働き方を実現するための提言をした」(『朝日新聞』6月27日付)。その提言とは、新成長戦略で打ち出した子どもを預かる学童保育の拡充などではなく、「定時に仕事を終わらせるための業務の見直しや、職場に深夜まで残らなくて済むよう、自宅で仕事をする『テレワーク』の実現などを求めた」という。

女性が輝ける日本は、子どもを預かる制度を拡充して女性が職場に向かいやすい環境をつくるだけで実現できるわけではない。それで喜ぶのは、労働力を調達しやすくなる企業ばかりだ。

女性が輝くためには、女性が実力を発揮しやすい職場環境、働き方を実現することである。そこに踏み込まないのでは、「女性が輝く日本へ」の掛け声だけが空しく響くだけでだ。

霞ヶ関でも事情は同じである。政府は、昨年10月時点で3%でしかない中央省庁の女性幹部の割合を、2015年度末までに5%程度に引き上げる目標を掲げている。女性の輝く日本の見本を中央官庁が示す、ということらしい。

しかし、働き方そのものを改めずに、ただ女性幹部職員の数だけを増やしても、さらに家庭などを犠牲にしなければならない女性を増やすことにしかならない。それでは、女性が輝くことにはならない。

今回、女性官僚たちによる業務見直しの提言は、「女性の輝ける日本へ」と言いながら、ほんとうに女性が輝ける環境づくりを考えていない証拠ともいえる。掛け声だけが勇ましいのだ。

女性官僚たちの提言を受けた加藤・内閣人事局長は「経験豊富な皆さんの提言を取り込みたい」と話しているそうだが、掛け声はかけたものの、これまで働き方そのものに踏み込むつもりはなかったようにも聞こえる。提言を受けたことで働き方そのものにまで踏み込むなら、手本になれるだろうし、「女性が輝ける日本へ」もただの掛け声だけに終わらない、かもしれない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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