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財務省は教育破壊をやりたいのか

前屋毅フリージャーナリスト

公立小中学校の教職員の定数について、財務省は今後9年間で3万7000人減らすよう文部科学省に求めていく構え、と10月23日のNHKニュース・ウェブ版が伝えている。少子化がすすんでいるため教職員数も減らして当然という理屈らしいが、ただ予算を減らしたいという財務省の本音が透けてみえる。そうした姿勢が、教育を破壊する。

子どもの数が減って教職員の数に余裕がでてくるというのなら、思い切った少人数学級を実現すればいい。現在、文科省は公立小学校の1年生で「35人学級」を導入しているが、それを独自の判断で全校に広げたりしている自治体も少なくない。それは、少人数学級が評価されているからにほかならない。

小中学校における教育は、ただ知識を詰め込むことに終始すべきではない。一人ひとりの人間としての成長を助けるものである。それには教職員が生徒一人ひとりと、きめ細かく接する必要がある。そのためにも、一人の教職員が担当する生徒数は少なければ少ないほどいい。35人学級でじゅうぶんなのではなく、それは質の高い少人数学級を実現するための一歩にすぎない。

にもかかわらず財務省は昨年10月、35人学級を40人学級に戻させようとした。それで教職員の数が4000人減らせる、という理屈だった。それによって教職員の人件費における国庫負担分を年間約86億円削減できるという試算まで提示している。教育の質を高めるよりも、支出を減らすことしか眼中にないのだ。

教育の現状をまったく考えず、ただ算盤勘定だけしか頭にない財務省が、子どもたちの成長を阻害しかねない。安倍晋三政権は教育再生を政策の大きな柱に掲げているが、再生どころが教育破壊につながりかねない財務省の動きを許しておくなら、それこそ政策の真意が問われることになる。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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