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公立中学・高校での公用語は英語、ということになるかもしれない

前屋毅フリージャーナリスト

れっきとした日本の国立大学である東京工業大学の入学式で、学長が式辞の全文を英語で行ったそうだ。同校でも初めてのことらしい。国際的な舞台での活躍を目指してほしいとの学長の思いが英語での式辞になったようだが、それにしても、軽率すぎる。

国際舞台で活躍するのは望ましいことだし、それには英語の力も必要にちがいない。しかし世の中は、英語を使う環境だけでない。国内でも活躍する場はあるし、そういう人材も育ってくれなくては困るのだ。にもかかわらず、新入生に英語だけが重要だとおもわせるような式辞は、いかがなものだろうか。

国立大学の入学式で英語による式辞が飛び出してくるのも、最近の国をあげての「英語偏重」の動きにあるとおもわれる。英語さえできれば国際舞台で活躍できるといわんばかりの盛り上げようだが、それについては、いろいろなところで批判の声もあがってきている。

そうした批判も耳にはいらないのか、文部科学省(文科省)の英語偏重はとどまるところを知らない。今月4日には、全国の公立中学・高校の英語力に関する2015年調査の結果を公表した。それも都道府県別の状況で、結果的には「順位付け」にすぎない。

全国学力テスト(全国学力・学習状況調査等)の全国順位を公表して競争を煽っているの同じことを、文科省はやろうとしているようだ。

全国学力テストの順位を上げるために全国の教育委員会は目の色を変えているが、同じことが英語でも起きるにちがいない。そのあげく、「校内では英語しか使ってはいけません」という学校も冗談ではなく、登場しかねない。

英語力の調査結果公表で、ますます英語偏重に拍車がかかることはまちがいない。その裏返しとして、日本語軽視につながるかもしれない。

英語は得意でも日本語はおぼつかないという子どもが、日本にあふれるようになる。それを、国際化と国や文科省は考えているのだろうか。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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