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教育委員会にも「良心」が残っていたらしい

前屋毅フリージャーナリスト

『毎日新聞』(電子版5月2日付)に「23府県・政令市『届け出不要』」という記事が掲載されていた。毎日新聞の取材で、15府県と8政令市の教育委員会(教委)が、高校生の校外の政治活動について学校への事前届け出を「必要ない」と判断していたことが明らかになった。

政府は選挙権年齢を18歳以上に引き下げたが、これについて文部科学省(文科省)は教育現場向けに「Q&A」を出して「事前届け出」を推奨するなど、高校生の政治活動を禁じる方針を強めている。この文科省方針に従って愛知県教委は、県下の高校全校の教頭らを対象とした研修会を開き、政治活動への参加を届け出る校則変更を促し、これに全校が従っている。徳島県でも県立53校中15校が事前届け出を決めているという。

そうしたなかで15府県8政令市が、「届け出は必要ない」と決めたのだ。いわば、文科省方針に「反抗」したといえる。

これは、高く評価されることだとおもう。文科省の監督下にある教委が、文科省方針に逆らうのは勇気のいることだ。それをあえてやったのは、教委の「良心」だといっていい。

先の『毎日新聞』は、「事前届出制を巡っては『思想・信条のチェックになりかねない』『政治参加を促す18歳選挙の趣旨にそぐわない』などの批判が出ていた。届け出を不要とし判断した教育委員会にも、同様の理由が目立った」と伝えている。

「不要」にまで踏み切れず、「学校の判断に委ねる」という判断をしている教委も多くあるが、それも同様の考え方からだという。ならが学校に責任転嫁せず、自ら決断すればいいとおもうのだが、そこは文科省のご機嫌を損ねたくないとの心理もあるのだろう。

いずれにせよ、「管理教育」を強める文科省が高校生の政治活動を意向を示すなかで、これに反対する姿勢が教育現場では強いことを感じさせる。文科省に「服従」の姿勢ばかりが目立つ教育現場だが、まだまだ「良心」が完全に失われているわけではない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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