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組体操事故、禁止にしない千葉県の姿勢は評価できるのだが・・・。

前屋毅フリージャーナリスト
(ペイレスイメージズ/アフロ)

全国で年間8000件もの事故が起きて問題になっている「組体操」だが、千葉県の公立小中学校・特別支援学校では、今年度の運動会や体育祭での組体操事故が、昨年度の432件から183件に減ったそうだ。激減である。

ただし理由は簡単で、組体操を実施しなかった学校が多かっただけのことなのだ。県内の公立学校は1223校あるが、組体操を実施したのは昨年の709校から369校と半減した。

実施した学校が減れば、事故件数が減るのも当然といえる。そうなると、「事故を防ぐために組体操を禁止すればいい」という短絡的な結論にもなりかねない。

実際、大阪市のように禁止を打ち出した自治体も少なくない。東京都も、都立学校について組体操のなかでも難易度の高い「ピラミッド」と「タワー」を2016年度は原則禁止を発表している。

それで事故件数が減れば「善し」、という考えなのだろうか。問題化を防ぐためになんでもかんでも禁止する、そんな安易な発想におもえなくもない。当然ながら、それでは問題解決とはいえない。

事故件数が減ったことを公表した前述の千葉県はというと、県体育課が「実施は各校の判断。中止などは呼びかけず、事故防止の周知徹底に努めたい」(『毎日新聞』地方版12月1日)とコメントしている。

自治体として中止を強制しない、という姿勢である。この姿勢は評価したい。繰り返すが、禁止したところで根本的な問題解決にはならないからだ。だから、千葉県の姿勢は評価できる。

ただし、「事故防止の周知徹底」だけで済ませてしまってもいいのだろうか。組体操の事故には練習不足、技術不足など、さまざまな要因が考えられる。なによりも、子どもたちの体力不足が大きく関係しているのではないだろうか。

そうした問題を根本から解決していくには、禁止という非生産的な対応が意味のないことはもちろんで、もっと広い視野から生産的な対応を議論し、実施することが必要である。それには、学校に丸投げせず、口先だけの介入だけでもない、自ら積極的に行動する自治体の姿勢こそが重要である。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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