原発事故自主避難者への「無理解」と「いじめ」の本質はどこにあるか

黒澤知弘弁護士(原発自主避難者のお話しを聴く会で12月23日筆者撮影)

原発事故から6年目、福島県外47都道府県への避難者は4万245人、県内避難者は4万2735人で、計8万人を超えている(*1)。しかし、同じ避難者でも、避難状況と政府の対応には「差」があることをご存知だろうか。

1.政府が避難勧告を行った「帰宅困難区域」「住宅制限区域」「避難指示解除準備区域」からの避難。これらの区域は福島県内に限られている。

2.政府が「汚染状況重点調査地域」として、住民に避難指示を出さずに「除染」を行っている汚染地域からの避難。その地域は8県(岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉)に及ぶ。

3.政府が「汚染状況重点調査地域」にすら指定しないが、放射能汚染がある地域からの避難で、避難状況が公的には把握しきれていない(*2)。

神奈川県の「原発避難いじめ問題」に見る政府の差別

そんな中、今年11月に明らかになったのが、神奈川県で起きた自主避難家庭の子どもに向けられたいじめ問題だ。「ばいしょう金あるだろ」と150万円が巻き上げられた子どもによる勇気ある手記で、氷山の一角が姿を現した(*3)。

しかし、上記1~3のうち、東京電力から賠償金を受け取っているのは1で、2や3のいわゆる「自主避難者」の確固たる頼りは、福島県を通した避難先での住宅支援だけだ(*4 2017年1月6日加筆)。なかにはそれすら受け取っていない人もいる。

つまり、「ばいしょう金あるだろ」といういじめ自体が、1,2,3への対応が違う政府の差別政策と、そのことに無知・無関心な大人たちの誤解に基づいている。いじめ問題が知られてなお、そこに焦点が当たらないという根の深い問題である。

生活再建むなしく2017年3月前に退去を迫られる

問題は、自主避難者への住宅支援が2017年3月末で打ち切られ、住んでいた場所からの退去を求められていることだ。汚染から逃れ、努力して新たな生活を積み上げてきた避難先で、再び、住処を奪われるという事態だ。

事務局の石崎大望さん
事務局の石崎大望さん

12月23日、横浜市開港記念会館では、そうした自主避難者の話を聴く会が開かれた。

いじめ問題を機に、急遽、企画した「自主避難者への住宅支援を打ち切らないで@かながわ事務局」の石崎大望さんは、「子どもを守りたいという一心で避難してきた親としての気持ちを応援したい。声を上げようとしている人を支えていくために、言葉としてうまく言えないけど、周りの層を厚くしていきたい」とその開催趣旨を語った。

この日、話をした4人は「汚染状況重点調査地域」から東京、神奈川、埼玉への自主避難者だった。

原発事故発生直後、新幹線にも高速バスにも飛行機にも乗れず、ガソリンや水を手に入れるために、汚染物質が降り注いでいることも知らず、子どもの手を引いて並んでしまったこと、実感してきた健康被害や若者の急死を語った。「鼻血が出ることは私たちの間では当たり前の話なのに、『美味しんぼ』で、あれだけの騒ぎになり怖いと思い、話せなくなった」と話した避難者もいる。

主催者からは、4人の顔写真や個人が特定できる情報発信を控えるよう参加者に伝えられ、ある避難者は、「覚悟が足りないと言われるかもしれないが、子どもを守りたくて避難者しているからなのです」と説明を行った。

大人に対するいじめ

避難の共同センターの瀬戸大作・事務局長
避難の共同センターの瀬戸大作・事務局長

「避難の共同センター」の瀬戸大作・事務局長は、支援活動を通して、「大人に対するいじめを感じてきた」と語った。

「ある避難者は、ネックレスをして外に出ると『賠償金額で買ったのか』と言われ、そこから5年間、避難者であることを話せなかったと、泣きながら話した」、「避難者がなぜ声を上げないのかという人がいるが、『避難者、立ち上がれ』ではなくて、一緒に考えなければならない」「政府は、自主避難者への住宅支援を17年3月で終了する。自主避難者が迫られているのは、戻って被ばくか、避難先で貧困化という選択だ」(瀬戸さん)。

福島原発被害者支援かながわ訴訟弁護団事務局長の黒澤知弘弁護士(冒頭写真)は、「いじめ問題がこんなに反響があると思わなかった。なぜなら、僕たちにとってはよく聞く話だったからだ」と述べた。「本質的な点は、これが東電や国という加害者と被害者の問題であり、天災なのだから支援しようという話ではない。犯罪であり法的に責任を問わないといけない。住宅を提供することは国の義務だ」と語った。

「避難者の被害者としての位置付けをまわりが理解していない。被害を受けて避難している人をなぜ誹謗中傷しなければならないのか。国が加害者としてやるべきことをやっていないからだ。」(黒澤弁護士)

話を受けての質疑応答では、避難者自らが、「自主避難者への住宅支援打ち切りの次には、避難区域の解除が進められ、賠償もなくなる。深刻な問題として、日本全体を覆います。どうか問題を広めてください」と訴えた。

質疑応答は自主避難者への住宅支援を打ち切らないで@かながわ事務局の武井由起子弁護士の司会で行われた
質疑応答は自主避難者への住宅支援を打ち切らないで@かながわ事務局の武井由起子弁護士の司会で行われた

(*1)福島県平成23年東北地方太平洋沖地震による被害状況即報(2016年12月19日時点)

(*2)既報「 原発事故から6年目、避難者の今~岡山」(2016年7月22日)

(*3)2016年11月16日神奈川新聞150万巻き上げられ いじめ被害の生徒手記 原発避難「賠償金あるだろ」

(*4)福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(SAFLAN)」の福田健治弁護士によれば、「原子力損害の判定等に関する中間指針追補」に基づく「自主的避難等対象区域」)や、福島県南地域、宮城県丸森町の自主避難者等(詳細は東電プレスリリース)には賠償金の支払いがある。また、「原子力損害賠償紛争解決センター(ADRセンター)」を通じた追加賠償も可能になった。

実際の支払対象者や支払額は、東電サイトの「自主的避難等に関わる賠償」にある各プレスリリースが詳しいと言う。