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陸上自衛隊の独自予報公表を気象庁が注意。問題点は?

増田雅昭気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

陸上自衛隊が独自の天気予報を公表し、気象庁から注意を受けたと、朝日新聞が報じました。

陸上自衛隊西部方面総監部(熊本市)が、自治体や電力会社、鉄道会社などが加わった会議で、独自の天気予報を公表し、注意を呼びかけた。気象庁は、気象庁長官の許可無く予報結果を発表することを禁じた気象業務法に違反する可能性があるとして、予報業務をしないよう注意した。取材に対し、気象庁が明らかにした。

気象庁などによると、会議は5月20日に宮崎市で開かれた「九州・沖縄地区防衛協議会」。西部方面総監部は、1~4月の気温や降水量を過去と比較して、豪雨や台風が相次いだ1997年と似ていると分析し「梅雨の末期に集中豪雨が起きる可能性がある」「台風が九州に2~3個上陸する可能性がある」との予報を伝えた。その後、マスコミからの問い合わせにも同じ趣旨の回答をした。

出典:朝日新聞デジタル

気象庁によると、正式な注意というよりは、口頭説明くらいとのことですが、指摘したのは事実だそうです。

無許可で独自の予報をしたとしても、内々に伝えるだけなら問題はありませんので、今回は「外に向けて」ということが問題視されたのでしょう。

法律順守ということに異論はありません。

ただ、今回のケースがNGなら、たとえば、寒試し(寒の内の約1か月間の天候推移を、その1年と重ね天候を予測する古来からの方法)で、地域の農家に広く知らせたり、それを地方紙などが「○○さんによると、今年の夏は…」などと報じているのは?

これも統計的手法による長期予報で、それを無許可で公表しているという点では変わりません。

また、ネット上に無数にアップされている、無許可の独自予報(的なもの)は?

全部に注意をするのは現実的に難しいと思いますが、となると、「注意」の対象はどうやって選ばれるのか、疑問となってきます。

気象庁の「引き締め」に一定の理解はしますが、それに比べると、「活かす」ことの力の入れ方に物足りなさを感じます。

現在、気象予報士は約9000人も合格しています。ただ、気象業務法の下で行われる試験に合格後、気象庁から気象予報士に資格を活用することを後押しするようなコンタクトは、ほとんどありません。

気象庁の発表する防災情報を、地元密着的な情報として噛み砕いて伝えるなど、人数や技能を活かすことで、防災・減災に資することは、いくつもあるはずです。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

TBSテレビ・ラジオ気象キャスター。大学在学中に気象予報士を取得し、民放キー局の報道番組に学生予報士として出演。気象キャスターに携わりながら、企業への予報やアドバイザーも長年担当し、甲子園での高校野球の大会本部気象担当を務めたこともある。災害から身を守る気象情報の使い方など講演も行うほか、Twitterで気象情報を毎日発信。著書に『TEN-DOKU クイズで読み解く天気図(ベレ出版)』がある。1977年滋賀県甲賀市生まれ。

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