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伊豆大島で記録的豪雨 局地前線による降水強化か

増田雅昭気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
左:16日午前3時の解析雨量(気象庁HPより) 右:16日午前3時の地上気温と風

東京都の伊豆大島で、24時間で824ミリという恐ろしいほどの豪雨が降りました。

24時間で824ミリというのは、国内の全地点の統計でも9番目に多い記録です。10位以内に入っている他の地点はすべて、背後に高い山地がある場所。島でのこの雨量は異例です。

当然、台風26号の雨雲による雨ではあるのですが、それだけだと他の地点でも同様の雨量が出てもおかしくありません。

なぜ伊豆大島だけ、飛び抜けた量が降ったのか?

原因は、大島の周辺に、上昇気流が生まれる“ジャンプ台のようなもの”が形成されたためと考えられます。

一般的に、上昇気流が強まる所で、雨雲は発達し降水が強まります。上にも書いたように、山地の近くで雨が多くなるのも、斜面をのぼる風によって上昇気流が起こるためです。

今回の豪雨時は、伊豆大島付近から房総半島にかけて、細長い活発な雨雲が見られます。

この周辺の地上の風と気温を見ると、関東平野などから流れ出したやや冷えた空気が南下し、一方で海からは東風によって暖かな空気が流れ込み、ぶつかっています。

異質な空気のぶつかる所を「前線」と言い、今回のように比較的、狭い範囲で形成される場合は「局地前線」と言います。

この局地前線がジャンプ台のようになり、海から流れ込む、水蒸気たっぷりの空気を上昇させ、降水を強めたのでしょう。

また、山地とはまでいきませんが、平らな海の上での島も、ジャンプ台の役割を果たした面があるでしょうし、台風に近い時間が長かったぶん、より高温多湿の空気が流れ込み、他の地域より雨量が多くなったと思われます。

このような局地前線は、陸地に冷気が蓄えられやすい秋から冬にかけて、発生しやすくなります。沿岸部では、秋は意外と豪雨の季節。沿岸部にお住まいの方には、知っておいて頂きたい知識です。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

TBSテレビ・ラジオ気象キャスター。大学在学中に気象予報士を取得し、民放キー局の報道番組に学生予報士として出演。気象キャスターに携わりながら、企業への予報やアドバイザーも長年担当し、甲子園での高校野球の大会本部気象担当を務めたこともある。災害から身を守る気象情報の使い方など講演も行うほか、Twitterで気象情報を毎日発信。著書に『TEN-DOKU クイズで読み解く天気図(ベレ出版)』がある。1977年滋賀県甲賀市生まれ。

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