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関東で近年にない大雪 なぜこんなに降ったのか?

増田雅昭気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
8日午後3時頃の東京・赤坂

8日の関東地方は、東京都心で45年ぶりに積雪が25cmに、熊谷では60年ぶりに40cmに達するなど、近年にない大雪となりました。なぜ、これだけ降ったのか。理由をひとことで言うと「すべての条件がそろったから」です。

バランスのとれた低気圧

関東の大雪は、本州南岸を進む「南岸低気圧」で降ります。ただ、ほとんど降らなかったり、雨で終わったりすることも多々。気温がわずかに高い、降水量が少ないなど、「何か」が足りない場合が多いのです。

ところが、今回は足りない条件がなく、バランスのとれた低気圧だったと言えます。

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■低気圧のコース

8日、本州付近が寒気の影響で低温となっている中、南岸を低気圧が進み雪を降らせた。
8日、本州付近が寒気の影響で低温となっている中、南岸を低気圧が進み雪を降らせた。

低気圧が、関東の南海上を離れて通ると、陸地に雪雲が届きません。一方、陸地に近すぎると暖気が入り、雨となります。今回はそのどちらでもなく、昔から「雪が降りやすい」と言われる伊豆諸島南部コースでした。

■低気圧の発達

経験上、気圧が12時間で8ヘクトパスカル以上、下がるような発達をすると、内陸など北から寒気を引きずり込みやすくなります。今回はそれくらいの発達に。

■気温

数日前に来た強い寒波の影響で、上空も地表付近も低温となっていました。

4日(火)に降った雪によって、地上付近がいっそう冷えていた効果もあるのでは、と個人的には考えています。

■降水の多さと長さ

降る量が多ければ、当然、雪の量も多くなります。今回は、朝から夜までほぼ一日の長時間、しかも比較的強く、降りました。

また、降水量は気温にも影響します。降り方が弱いと、上空の寒気を引きずり下ろさないためか、地上付近の気温が下がりきらず、雨になることがあります。今回はそういったことがありませんでした。

■降り出すタイミング

今回の降り出しは、気温の低い未明や明け方。早くから積もったため、気温の上昇が抑えられ、効率よく積もる要因となりました。

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8日は、これらの条件が、すべてそろったわけです。

ただし、千葉県の外房や茨城県南部の沿岸では、雨で経過した所も。

あと20~30kmほど、上空の暖気が北へ広がったり、海からの少し気温が高い風が内陸まで届いていれば、東京都心あたりもずっと雨だった…関東の雪はそれくらい微妙な状況の中で降っています。

今回のようにバランスのとれた低気圧は、また数十年以上先に現れるのか、それとも、意外と早く現れるのでしょうか。

首都圏の雪予報で知っておいていただきたいこと

※積雪量を最新の情報に合わせて、更新しました。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

TBSテレビ・ラジオ気象キャスター。大学在学中に気象予報士を取得し、民放キー局の報道番組に学生予報士として出演。気象キャスターに携わりながら、企業への予報やアドバイザーも長年担当し、甲子園での高校野球の大会本部気象担当を務めたこともある。災害から身を守る気象情報の使い方など講演も行うほか、Twitterで気象情報を毎日発信。著書に『TEN-DOKU クイズで読み解く天気図(ベレ出版)』がある。1977年滋賀県甲賀市生まれ。

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