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台風16号は温帯低気圧に 台風の寿命を1日延ばした気象庁の意図

増田雅昭気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
雨の予測。黄色や赤色の周辺は激しい雨の可能性がある。

24日午前、台風16号は温帯低気圧に変わりました。ただ、形が崩れても、大雨のもとになる積乱雲や水蒸気が大量にあることには変わりありません。25日にかけて、急な激しい雨に油断できない状況が続きます。

温帯低気圧化後も強い風、急な激しい雨

台風が勢力を落として近づく場合、どのようなトーンで伝えるか悩みます。「台風が来る」だけ伝え、いかにも暴風雨が起こることを想起させる情報もありますが、明らかに今回はそこまでではありません。そうかといって、「大丈夫です」とも言えない低気圧です。

今回は、交通機関が大きく乱れるような暴風はないですが、それでも九州~近畿は24日を中心に、東海・関東~北海道は25日を中心に、風が強まりますし、急な激しい雨のおそれはあります。

人工延命で1日寿命が延びた16号

ところで、この台風16号は、23日に上海など中国の東岸を北上している時には、形が完全に崩れ、実質は台風ではありませんでした。

それを気象庁は、台風として残していました。おそらく、「防災上、警戒をゆるめないように」ということでしょう。いわば、人工延命で1日寿命がのびた台風だったわけです。

温帯低気圧化後、急に消える進路図

左:24日午前6時発表、右:午前9時発表。温帯低気圧になった途端、進路図は消える
左:24日午前6時発表、右:午前9時発表。温帯低気圧になった途端、進路図は消える

たしかに、台風が温帯低気圧に変わると、警戒がゆるむ空気はひしひしと感じます。その理由の一つは、「予想進路図(予報円など)」が出なくなるためです。台風の予想進路図が発表されなくなると、自動的に情報が出なくなるサイトもあります。

それなら、温帯低気圧に変わったあとも、台風進路図と同じ形式で、温帯低気圧の予想進路図を出し続ければ良いのではないでしょうか。台風ではないものを台風として延命させるといった意図的な操作をしなくて済みます。

「温帯低気圧に変わっても危険度は台風の時とあまり変わらない」と本気で呼びかけたいなら、それを情報として表現すれば良いと思うのですが、いかがでしょうか。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

TBSテレビ・ラジオ気象キャスター。大学在学中に気象予報士を取得し、民放キー局の報道番組に学生予報士として出演。気象キャスターに携わりながら、企業への予報やアドバイザーも長年担当し、甲子園での高校野球の大会本部気象担当を務めたこともある。災害から身を守る気象情報の使い方など講演も行うほか、Twitterで気象情報を毎日発信。著書に『TEN-DOKU クイズで読み解く天気図(ベレ出版)』がある。1977年滋賀県甲賀市生まれ。

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