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東京まだ氷張らず 統計史上最も遅い記録に

増田雅昭気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
(写真:アフロ)

この冬、東京都心ではまだ初氷が観測されていません。統計史上最も遅かった初氷が、2004年のきょう1月12日。今冬は記録を更新することになります。

暖冬を象徴する記録に

今冬は、日本付近への寒気の南下が少なく、朝晩の冷え込みが弱い日が続きました。それが初氷の遅れにつながっています。

今週はこれまでより気温が下がり、さらに来週はもう一段、気温が低くなりますので、そう遠くないうちに初氷を観測しそうですが、前半にかなり気温が高かったこの冬を象徴する記録として、後年まで残ることになります。

「気温」は下がっているのに氷が張らない?

この中に水を入れ、氷が張ったかどうかを観測する(東京管区気象台)
この中に水を入れ、氷が張ったかどうかを観測する(東京管区気象台)

ところで、今冬ここまでの東京都心の最低気温は、きょう1月12日と12月29日に1.9℃が観測されています。

過去には、3~4℃の気温が観測された時に、初氷を観測したこともあり、今年も気温から考えると初氷を観測していてもおかしくありません。

ここには、観測の“事情”があります。

「東京」は2014年12月に観測所が移転し、気温などの自動観測は北の丸公園で行われています。一方、氷が張ったかどうかを見るのは、900メートルほど離れた大手町の旧観測所。東京管区気象台で職員が確認します。

ビルに囲まれた大手町より、緑に囲まれた北の丸公園のほうが、最低気温が年平均で1.4℃低くなっています。

つまり、気温と氷の観測場所が離れていることが、「実測の気温は下がっているのに、氷が張らない」という結果を生んでいるのです。

少しの気温差が積雪の差にも

冷たい空気は、重く動きが鈍いため、特に冬は冷たい空気のたまる所、たまりにくい所で、気温にムラが出ます。この気温差が、雪か雨かの違いや、雪の積もる量にも影響します。

少し場所や環境が変わるだけで、気温、ひいては雪や凍り方に差が出る冬の天気の特徴を、今冬の初氷の観測結果が改めてあぶり出したと言えるかもしれません。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

TBSテレビ・ラジオ気象キャスター。大学在学中に気象予報士を取得し、民放キー局の報道番組に学生予報士として出演。気象キャスターに携わりながら、企業への予報やアドバイザーも長年担当し、甲子園での高校野球の大会本部気象担当を務めたこともある。災害から身を守る気象情報の使い方など講演も行うほか、Twitterで気象情報を毎日発信。著書に『TEN-DOKU クイズで読み解く天気図(ベレ出版)』がある。1977年滋賀県甲賀市生まれ。

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