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台風発生は間近か 姿もないのに発生が分かる理由

増田雅昭気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
気象衛星による雲画像。1日正午。

今年の台風は、いまだに一つもできず、1号発生の最も遅い記録に肩を並べようとしている状況ですが、ここにきて発生する可能性が出てきました。

なぜ発生前から分かる?

今の天気予報は、数値予報と呼ばれるコンピューターによる計算がベースになっています。

数値予報は、現在の世界中の大気の状態(風・気温・湿度・気圧など)を初期値として入力し、それが今後どうなっていくか、天気図などのデータとして弾き出します。

その時点で台風がなくても、熱帯の水蒸気の量や風の変化などから、「今後、雨雲が大量に発生し、渦を巻く」と計算してきます。

数値予報は、システムの更新のたびに精度が向上し、雲のかたまりすらない状態で1週間以上先の台風の日本接近を当てていた、ということも珍しくありません。

台風発生の気配は?

5日(火)の風の予測。フィリピンの東に低気圧の渦がある。(気象庁配信データ)
5日(火)の風の予測。フィリピンの東に低気圧の渦がある。(気象庁配信データ)
5日(火)の地上天気図。フィリピンの東に低気圧がある。(米国海洋大気庁HPより)
5日(火)の地上天気図。フィリピンの東に低気圧がある。(米国海洋大気庁HPより)
5日の地上天気図。フィリピンの東に低気圧。(ヨーロッパ中期予報センターHPより)
5日の地上天気図。フィリピンの東に低気圧。(ヨーロッパ中期予報センターHPより)

もちろん、数値予報が計算した通りになることばかりではありません。「台風が発生する」といったん計算されたのに、実際は発生しないこともあります。

今回は複数の数値予報(※)において、「フィリピンの東海上で台風らしき低気圧が発生する」という傾向がそろってきているうえ、実際、台風のもととなる積乱雲もフィリピンの東海上で多くできはじめています。今年これまでで、最も台風の発生する可能性が高まっていると言ってもいいでしょう。

なお、進路予測は、早めに衰弱、大陸方面へ、日本へ接近と、それぞれの数値予報でバラバラです。つまり、もし台風が発生したとしても、まだどこに進むか分からないという状況です。

※数値予報は日本の気象庁だけでなく、世界各国の気象機関で行われデータが出されている。

インパクトの強い画像が拡散する問題

台風の進路予測がバラバラということは、珍しくありません。

ところが、日本を直撃することを示すデータなどインパクトの強い画像だけが、SNSなどで拡散することが、近年しばしばあります。日本へ台風が来る確率が低い場合でも、です。

確率が低いことで空騒ぎすると、不要な対策コストを費やしたり、身近にせまった別の災害情報を見逃したりするおそれがあります。

これから迎える本格的な台風シーズン、画像だけを見て瞬間反応せずに、解説を読んで納得してから拡散するなど、冷静な見きわめをお願いします。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

TBSテレビ・ラジオ気象キャスター。大学在学中に気象予報士を取得し、民放キー局の報道番組に学生予報士として出演。気象キャスターに携わりながら、企業への予報やアドバイザーも長年担当し、甲子園での高校野球の大会本部気象担当を務めたこともある。災害から身を守る気象情報の使い方など講演も行うほか、Twitterで気象情報を毎日発信。著書に『TEN-DOKU クイズで読み解く天気図(ベレ出版)』がある。1977年滋賀県甲賀市生まれ。

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