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主な新興国・米国経済ニュース(25日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

米シーブイエス・ヘルス、薬剤給付大手オムニケアを1.5兆円で買収へ

米ドラッグストアチェーン大手シーブイエス・ヘルス(旧社名:シーブイエス・ケアマーク)<CVS>は21日、長期治療向け処方箋薬給付サービス事業を拡大するため、この分野で急成長している薬剤給付サービス大手オムニケア<OCR>を123億ドル(約1.5兆円)で買収することで合意したことを明らかにした。

買収額には23億ドル(約2800億円)のオムニケアの債務承継分が含まれている。債務を除いた104億ドル(約1.3兆円)は1株当たり98ドル(約1万2000円)の現金で支払う。これはオムニケアの20日終値に対し3.6%、また、直近100日間の平均株価に対しては24%のプレミアム(上乗せ額)となっている。

オムニケアは、がんや多発性硬化症など1人当たりの薬代が年間5万-10万ドル(約600万-1200万円)といった高額の処方せん薬の給付サービスで急成長している。老人ホームなど高齢者や身体障害者を収容する養護施設向けに長期にわたって処方せん薬を給付するサービス分野では全米最大規模を誇り、同社の昨年の売り上げ64億2000万ドル(約7800億円)の4分の3を占める。オムニケアは全米47州160カ所に拠点を構え、全従業員数は約1万3000人。

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米HP、清華大学と資本提携―中国子会社の51%売却へ

米コンピューター大手ヒューレット・パッカード<HPQ>は21日、中国事業の再編の一環として、データネットワークサービスを提供する中国子会社H3Cテクノロジーズと中国でのサーバーやストレージの事業を統合した新会社H3Cの過半数の株式(51%)を清華大学(北京)傘下の清華ホールディングスに23億ドル(約2800億円)で譲渡し、清華大学と資本提携することで合意したことを明らかにした。

新会社H3Cは、データネットワークやサーバー、IT関連コンサルティングサービスなどを提供し、8000人の従業員を持ち、年間31億ドル(約3800億円)の売り上げの達成を目指す。また、ヒューレット・パッカードは引き続き中国で、企業向けITサービスのHPエンタープライズサービスやソフトウエア、ハイブリッドクラウド製品・サービス「HPヘリオン」などの事業を単独で継続するとしている。

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18-22日のロシアRTS指数、3週ぶり反落―原油・ルーブル安で

前週(18-22日)のロシア株式市場は、RTS指数(ドル建て)の22日終値が前週比2.2%安の1051.21と、3週ぶりに反落。原油安やECB(欧州中央銀行)の国債買い取り拡大、ロシア中銀による外貨取得でルーブル安となったことが響いた。一方、外国人投資家からのロシア株式市場への14-20日の資金の流れは前々週の4590万ドル(約56億円)の流出超から1010万ドル(約12億円)の流入超と、一転して3週ぶりに流入超となった。

週明け18日は指数が上昇。ルーブル高やVTB(対外貿易銀行)の配当実施決定で3.8%高となったことが要因。翌19日は反落。ECBが量的金融緩和(QE)で5-6月の国債買い取りを増額する方針を明らかにしたことでユーロが売られてドルが急伸しルーブル安となったことが嫌気された。20日も大幅安となり2日続落。中銀が外為市場で外貨買いの介入実施でルーブルが下落した。個別銘柄では信用不安が広がっている鉄鋼・石炭大手メチェルが大口債権者のガスプロムバンクとVTBの債務処理をめぐる協議が進展したことから9.3%高となった。

21日は3日ぶり反発。米国の原油生産と備蓄の減少を受けて原油先物価格が上昇したことやロシア経済の先行き見通しの改善が好感された。週末22日は小幅上昇し2日続伸。原油安となったものの、外国人投資家が買い越しに転じたことが好感された。

今週(25-29日)のロシア市場は、引き続き原油とルーブルの相場動向が相場変動要因となる。ルーブルは企業の納税時期を控え、ルーブル需要が強まることが予想される。

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前週のインド株は3週続伸―利下げ期待で=BRICs市況

前週(18-22日)のインド株式市場で代表的株価指数SENSEX指数の22日終値は前日比148ポイント(0.5%)高の2万7957.5となり、週間ベースでも15日終値比634ポイント(2.3%)高と、3週連続で上昇した。市場ではインフレ鈍化で中銀は来月2日の金融政策決定会合で利下げに踏み切るとの観測が強まり相場が押し上げられた。

週明け18日は指数が急伸。気象当局が前日、南部ケララ州が昨年より早めにモンスーン期(雨季)に入ると発表したのを受けて、市場では農業の収穫量に影響を与えるモンスーン期の雨量が例年並みとなれば、現在のインフレ率が鈍化傾向にあることから、利下げの可能性が高いとの観測が広がった。翌19日は反落。前日の3週ぶり高値から利食い売りが広がり自動車と銀行が下げた。

20日は1カ月ぶり高値に上昇。手掛かりは中銀の来月初めの利下げ観測。電力最大手タタ・パワーが四半期決算で利益が市場予想を上回り上昇した。21日は反落。鉄鋼大手タタ・スチールの四半期決算で赤字が予想を上回ったことから金属セクターが売られた。銅精錬最大手ベダンタも下落。週末22日は上昇。再び中銀の利下げ観測が手掛かり材料になり相場が押し上げられた。

今週(25-29日)のインド市場は引き続き6月2日の中銀の金融政策決定会合に関心が集まりそう。また、アナリストは週末に心理的に重要な200日移動平均を超えたことから今週も相場は上昇を続けると見ている。主な経済指標の発表は、29日の2014年10-12月期GDP(国内総生産)伸び率など。

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前週のブラジル株は大反落―ペトロブラスと金融課税強化で=BRICs市況

前週(18-22日)のブラジル株式市場は22日のボベスパ指数が前日比1.33%安の5万4377.29となり、週間ベースでも15日終値から5%安と、昨年12月以来5カ月ぶりの大幅下落となり、3週ぶりに反落した。

週明け18日は指数が大幅下落。中銀が発表した経済週報「フォーカス・ブルティン」で、IPCA(拡大消費者物価指数)で見た2015年のインフレ見通しが前週予想の前年比8.29%上昇から8.31%上昇へ下方修正(悪化)され、同年の実質GDP(国内総生産)伸び率見通しも1.2%減と、1990年以来の大幅減少となり、リセッション(景気失速)懸念が広がったことに加え、財務省が財政再建のため、銀行など金融機関の利益に対する課税強化(税率を15%から17%へ引き上げ)を打ち出すとの一部報道が嫌気された。翌19日も下落。汚職事件で揺れる国営石油大手ペトロブラスは経営再建に取り組んでいるが、米証券大手ゴールドマン・サックスが10月までに原油価格は1バレル45ドルにまで値下がりすると予想したことを受けてペトロブラスが6.3%安となり、相場全体を引き下げた。

20日は3日続落。政府が財政再建のため、株式の税制優遇制度を打ち切る可能性があるとの一部報道が嫌気された。21日は4日ぶりに反発。4月失業率が市場予想を超え、また、3月IBC―Br経済活動指数のマイナス幅が市場予想を上回ったことから景気懸念観測が強まり、ブラデスコ銀行が1.7%安となるなど銀行セクターが売られた。週末22日は下落。政府が銀行や証券会社、クレジットカード決済会社の利益に対する課税率を15%から20%へ引き上げる方針を発表したことから銀行株を中心に値を下げた。

今週(25-29日)の株式市場に影響を与えそうな主な国内の経済指標は、26日のジェトゥリオ・バルガス財団(FGV)の5月消費者信頼感指数と4月経常収支、28日のFGVの5月IGP-MIインフレ指数、29日の1-3月期GDP(国内総生産)伸び率と4月財政収支など。

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中国株式市場、前週の上海総合指数は2週続伸=BRICs市況

前週(18-22日)の中国株式市場で、主要指標となる上海総合指数は週間ベースで2週連続の上昇となり、7年ぶり高値となる4657.95(15日終値比349ポイント(8.1%)高)で取引を終了した。

週初18日は指数が下落。景気懸念に加え、投資家が新規株式公開(IPO)に伴う新株発行で既存株を売って投資資金を回すとの懸念が強まった。19日は反発。1月21日以来4カ月ぶりの大幅上昇となった。割安感が強い銘柄が物色され、証券株やエネルギー株が値を上げた。20日は続伸。政府が技術革新や起業を支援するための追加措置を講じるとの観測で、テクノロジー株が急伸。ロボット・機械メーカーの新松機器人自動化は取引制限いっぱいの10%高となった。

21日は3日続伸。終値が2008年2月以来7年ぶり高値を付けた。5月HSBC製造業PMI(購買担当者景気指数)が3カ月連続で悪化したことから、政府は追加景気刺激策を講じるとの観測が強まった。週末22日は4日続伸。7年ぶり高値を更新した。市場では値固め局面が終わりに近づいたとの見方から買いが優勢となった。

今週(25-22日)の株式市場の見通しについて、アナリストは、今後、証券当局が行き過ぎた株高を抑制する動きに転じた場合、過去最高の1兆3200億元(約26兆円)に達している信用取引残高やリターンを大きくするためのレバレッジ(借り入れ)が最大のリスクになる、と警戒している。主な経済指標の発表は予定されていない。

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インドネシア中銀、住宅ローンの頭金比率20%に引き下げへ

インドネシア中央銀行(BI)のアグス・マルトワルドヨ総裁は先週末、記者団に対し、住宅市場の活性化による景気刺激の一環として、新規住宅取得者に対し、住宅ローンの最低頭金比率を現行の30%から20%に引き下げる方針を明らかにした。ジャカルタ・グローブ(電子版)が伝えた。

今後は、住宅ローンを提供する金融機関は建築面積が70平米を超える住宅については、住宅ローン比率(LTV)を現行の70%から80%まで引き上げることが可能になる。ただ、この措置は不良債権比率が5%を下回る優良金融機関にだけ認められるとしている。現在、建築面積が20-70平米の小規模住宅の新規取得者に対するLTVは80%となっている。

また、同総裁は2軒目以上の住宅取得についても住宅ローンの最低頭金比率を10%ポイント引き下げたいとしており、いずれも住宅ローンの運用見直しは6月に正式発表するとしている。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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