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2013年後半戦の女子サッカーの楽しみ方

松原渓スポーツジャーナリスト

【なでしこリーグ3連覇!!】

INAC神戸レオネッサが、今年も盤石の強さで2011年、2012年に続き、リーグ3連覇を成し遂げた。

今年はリーグ全体が世代交代や監督交代など体制が大きく変化したチームが多く、特に前半戦はどのチームも新たなチーム作りに苦戦した印象が強い。

そんな中、INACも昨シーズンから監督交代や選手の入れ替えなどがあったものの、その強さは変わらず。主力である澤穂希、川澄奈穂美、近賀ゆかり、高瀬愛実ら代表メンバーに加え、韓国代表の「10」番を背負うチ・ソヨン、アメリカのトップリーグから加入し2年目となるゴーベル・ヤネズらが中心となってゴールを量産。4試合を残して13勝1敗と圧倒的な強さでリーグ優勝を決めた。

ここ3年、INACの「一強」状態が続いていることは確かだ。また、その一強状態に対して、否定的な声を耳にすることもある。

集客を考えれば、スター選手が各チームに分散して、いくつかのチームが優勝争いを繰り広げるような終盤戦は確かに魅力的ではある。

だが、現在のなでしこリーグで、今の一強状態が必ずしも悪いとは言えないと思う。

なぜなら、唯一「プロ」に近い形態で選手達がサッカーに集中できる環境を持つINACがひとつの理想型として他のチームを牽引している面があるからだ。

現在、リーグに所属する選手はアマチュア契約(昼間に仕事をして、夜練習する)がほとんどだが、各チームはなんとかして、INACのような契約(選手は社員として雇われ、昼間に練習ができ、コンディション調整に集中出来る)か、それに近い環境を得たいところだ。

実際、ワールドカップ優勝以降の2年間、他のチームもスポンサー企業の協力を得て練習時間を早めたり、芝生のグラウンドで練習が出来るようになったりと少なからず改善されてきており、その成果は少しずつだが表れてきている。

また、女子サッカーはここ数年で認知されるようになったとはいえ、男子に比べればまだまだリーグ自体が成長途上にある。そんな中で、なでしこジャパンの主力選手達が集まっているINACのようなチームが露出を高めてリーグをアピールしていくことも必要だ。未来のなでしこジャパンを目指すサッカー少女たちにとっても、INACのようなチームでサッカーをすることが、一つの目標になるだろう。

だからこそ、INACにタレントが集まっている状況を憂いて戦力の分散・均衡を図るよりも、女子サッカー全体の底上げの中でINACのライバルに名乗りを上げるチームの出現を待ちたい。

着実に頭角を現してきているチームもある。第12節では岡山湯郷Belleが主将の宮間あやの活躍もあり、2−1でINACに勝利。2011年から続いていた連続不敗記録を48でストップさせた。湯郷はオフシーズンの選手の出入り(新加入/退団)もあったが、監督や主力選手の流出はなく、他のチームに比べて大きく体制は変わらなかった。組織的なサッカーにはこれまでの継続の成果が表れてきている。

湯郷だけではない。第13節では伊賀FCくノ一がINACに2点をリード(結果的には2−4で敗れたが)。

もちろん、スコアだけで測れないのもサッカーだ。巧みな試合運びで接戦をものにしてしまうところもINACの強さだが、INACにとっても簡単に勝てない試合が増えてきていると言える。

そういう意味でも、リーグ終盤戦は2位争いにも注目したい。

2位に入れば、11月末からはじまる「国際女子サッカークラブ選手権」への出場権も得られるのだ。

世界中から強豪女子クラブが集まるこの大会は、個人的にも非常に楽しみだ。

【国際女子サッカークラブ選手権】とは?

今年で2回目となる「国際女子サッカークラブ選手権」が、11月30日~12月8日にかけて開催される。昨年発足したこの大会は、各大陸から女子クラブの代表チームが出場し、覇を競う女子版「FIFAクラブワールドカップ」。将来的にFIFA公認の大会を目指し、発展を期する。

創設初年度となった昨年はオリンピック・リヨン(2012年女子チャンピオンズリーグ優勝)、シドニーFC(オーストラリア W−League優勝)、そして日本からはINAC神戸レオネッサ(2012年なでしこリーグ優勝)と日テレ・ベレーザ(2013なでしこリーグカップ優勝)の4チームが出場し、熱い大会が繰り広げられた。

決勝戦ではINACとリヨンが激突。なでしこジャパンの主力が多いINACと、フランス女子代表の主力を抱えるリヨンの対戦は、昨年のロンドンオリンピックでのなでしこジャパン vs フランス女子代表の熱戦を彷彿させるハイレベルな激闘になり、1−1と90分でも決着がつかず、延長に突入。延長戦の末、リヨンが2−1で初代チャンピオンに輝いた。

初代チャンピオンの座はオリンピック・リヨンに!
初代チャンピオンの座はオリンピック・リヨンに!

今年は昨年からいくつかの変更点があり、その概要が発表された。

まず、大会参加チームが4チームから5チームに増加。現時点で発表されている出場チームは、

【日本1】(日本/2013年なでしこリーグ優勝クラブ)※

【日本2】INAC神戸レオネッサ/2013年なでしこリーグカップ優勝 

【アジア代表】シドニーFC(オーストラリア/Wリーグ2012−13グランド・ファイナル優勝)

【欧州代表】未定(近日発表予定)

【南米代表】CSDコロコロ(チリ/コパ・リベルタドーレス・フェメニーナ2012優勝)

※リーグカップ王者として既に出場権を得ているINACがなでしこリーグで優勝したため、2013なでしこリーグ2位クラブが繰り上がる。

今年は新たに南米代表チームとして、女子の南米選手権チャンピオンであるCSDコロコロ(チリ)が招聘されているほか、欧州代表は、昨年の女子チャンピオンズリーグチャンピオンで、決勝戦でリヨンを破ったヴォルフスブルクが候補に挙がっている。

日本からは既にカップ戦女王のINACが出場を決めており、もう一枠がリーグ戦2位のチームになる。現在2位争いは熾烈を極めており、

伊賀FCくノ一(勝ち点27)

岡山湯郷Belle(27)

日テレ・ベレーザ(26)

ベガルタ仙台レディース(25)

となっている。

残り3試合に引き続き注目したい。

また、昨年は関東近郊で全試合が行われたが、今年は東京都、岡山県、鹿児島県と、全国3カ所で行われることになった。

なでしこリーグは積極的に地方での試合開催を行っているが、その成果もあり、着実に全国に「女子サッカー観戦」の魅力が少しずつでも確実に広まっていると感じる。

海外のトップレベルの選手達とのハイレベルな戦いを1人でも多くの人が見られるよう願っている。また、昨年のリヨンとINACのようにクラブ間の交流(選手の移籍など)が生まれることにも期待したい。

国際女子クラブ選手権2012
国際女子クラブ選手権2012

mobcast cup INTERNATIONAL WOMEN'S CLUB CHAMPIONSHIP(英名)

モブキャストカップ国際女子サッカークラブ選手権(和名)

*期日および会場

【M1】 2013年11月30日(土)岡山県・カンコースタジアム(約15000人収容)

日本出場枠(1) vs アジア出場枠

【M2】 2013年12月4日(水)岡山県・カンコースタジアム

M1勝者 vs 欧州出場枠

【M3】 2013年12月4日(水)鹿児島県・県立鴨池陸上競技場(約20000人収容)

日本出場枠(2) vs 南米出場枠

【M4】 2013年12月7日(土)鹿児島県・県立鴨池陸上競技場

【3位決定戦】 M2敗退クラブ vs M3敗退クラブ

【M5】 2013年12月8日(日)東京都・味の素フィールド西が丘(約7000人収容)

【決勝戦】 M2勝利クラブ vs M3勝利クラブ

*放送: BSフジ

*大会形式:  出場5チームによるトーナメント戦。順位決定戦あり。試合時間90分間(前後半45分)とし、90分により勝敗がつかない場合は、PK戦により勝敗を決定。決勝戦のみ試合時間20分間(前後半10分)の延長戦を行い、勝敗が決定しない場合、PK戦により勝利チームを決定

*チケット発売 

<岡山>2013年9月28日

<鹿児島>2013年10月1日

<東京>2013年10月12日

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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