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世界一!!!

松原渓スポーツジャーナリスト

★初優勝!!!

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FIFA U-17女子ワールドカップ コスタリカ 2014 は、4月4日に決勝戦を迎えた。日本では4月5日朝のキックオフとなったが、テレビでも緊急生中継が決まり、生中継をご覧になった方も多かったのではないだろうか。

グループステージ3試合を15得点無失点で勝ち上がったU-17女子日本代表は、準々決勝もメキシコに2−0で勝利し、準決勝ではベネズエラに4-1と快勝し、決勝に進出。そして、決勝戦の相手は、グループステージ初戦以来2度目の対戦となるU-17女子スペイン代表。

初戦では2−0と勝っていた相手ではあったが、ともにトーナメントを勝ち上がる中で成長した2チームは、初戦で当たった時からは互いに成長していた。しかし、その決勝戦でも日本は堂々たる試合運びで2−0と勝利を収め、U-17女子ワールドカップで大会初優勝を果たしたのだ。6試合を終えて、全勝、23得点1失点という圧倒的な成績での大会制覇だった。

【グループリーグ】

(第1戦)

2014年3月16日

日本 2-0 スペイン

(第2戦)

2014年3月19日

日本 10-0 パラグアイ

(第3戦)

2014年3月23日

日本 3-0 ニュージーランド

【準々決勝】

2014年3月27日

日本 2-0 メキシコ

【準決勝】

2014年3月31日

日本 4-1 ベネズエラ

【決勝】

2014年4月4日

日本 2-0 スペイン

この大会が始まった2008年以来、初の全勝優勝(最多得点・最少失点)のチャンピオン※となったことも、その強さを物語っている。

※以下は第1回からの優勝国とその成績。

第1回 2008年ニュージーランド大会 優勝:北朝鮮 4勝2分0敗

第2回 2010年トリニダード・トバゴ大会 優勝:韓国 4勝1分1敗

第3回 2012年アゼルバイジャン大会 優勝:フランス 2勝4分0敗

第4回 2014年コスタリカ大会 優勝:日本 6勝0分0敗

大会MVPとなるゴールデンボールを獲得したのは、主将をつとめたMF杉田妃和(藤枝順心高校)。 ボランチながら、得点ランク2位タイの5得点でチームを牽引した。

また、GK松本真未子(浦和レッズレディース)がゴールデングローブ(最優秀GK)を獲得し、3得点のMF長谷川唯(日テレ・メニーナ)がブロンズシューズ(得点ランク3位)を受賞した。

★2020年を担う黄金世代

2011年のなでしこジャパン以来の快挙だ。

結果とともに内容も素晴らしく、準優勝のスペインは総失点5で、そのうち4失点が日本に決められたものだという。

今大会の”リトルなでしこ”は、個と組織が高いレベルで融合した素晴らしいチームだった。「個」においては、どの選手も身体の使い方がうまく、日本より一回り大きいヨーロッパや南米の選手のフィジカルもハンデと感じさせなかった。「組織」においては、日本の連動したパスワークは突出していた。

複数のポジションをこなす選手が多かったことも、選手層に厚みを持たせた。試合毎に変化するメンバー構成で、他国の目を欺くことに成功した。MFの選手がSBでプレーすることもあったし、左サイドの選手が右サイドでプレーすることもあった。選手の適性を見極めた高倉麻子監督のコンバートと起用に、選手達がしっかりと応えたのだ。ポジションをコンバートさせることにより調子を落とす選手もいるが、ハマれば、新たな才能を開花させることにもつながる。

また、決勝でゴールを決めたFW児野楓花(藤枝順心高)や、準決勝で先制ゴールを決めたMF 長野風花 選手(浦和レッズレディースユース)など、サブの選手が試合を決めることも多かった。交代選手が結果を出すのは監督の力でもある。彼女達はスタメンの選手に負けないぐらいの自信を持ってプレーしているようにも見えた。その好循環は、2011年のなでしこジャパンで、日替わりでヒロインが生まれたドイツW杯を彷彿させた。

チームの核となったのは、MF杉田妃和とMF長谷川唯(日テレ・ベレーザ)の2人。

この2人は、2012年にアゼルバイジャンで行われた前回大会にも出場していた。同大会で日本は初戦でブラジルに5−0と快勝し、グループステージを17得点0失点という強さで勝ち上がりながら、準々決勝でガーナに0−1と敗れた。彼女達は悔しい思いをしたが、国際大会の舞台を踏んだ経験は何ものにも代え難いものであることが、今大会で証明された。

杉田は中盤で司令塔としてチームを操った。チーム最多の5得点を挙げる決定力と、チームをまとめあげたリーダーシップにも、なでしこジャパンの明るい未来を感じさせる。

なでしこリーグの強豪・ベレーザでも主力として活躍している長谷川は、昨年、飛び級でU-19女子日本代表に招集されていた。しかし、チームは昨年のAFC・U-19女子選手権で4位の成績に終わり、目標としていたU-20女子W杯への出場権を逃してしまったため、U-17への復帰が決まった。もし、U-19が敗退していなかったら彼女はこの場にいなかったかもしれない、と考えると複雑ではあるが、何より大事なことは、その豊かな才能が輝く舞台を得られたということだ。長谷川は身長155センチと小柄だが、今大会では柔らかいタッチと両利きとも言える高い技術と豊富なアイデアで、センスを存分に発揮した。

同様に他の選手も将来性豊かな選手達ばかりだったが、特にこの2人は、お互いの長所を生かし合い、短所を補い合う、漫画「キャプテン翼」の翼くんと岬くんのような関係だったのかもしれない。

彼女達は、東京オリンピックが開催される2020年を23歳で迎えることとなる。6年後、なでしこジャパンに選ばれるかどうかの保証はもちろん無いが、その経験と自信はきっと日本に多くをもたらすことだろう。

★「世界一」の女性指導者の誕生

また、今大会はもう一つの意味でも実りある大会となった。以前の記事でも書いたが(http://bylines.news.yahoo.co.jp/matsubarakei/20140208-00032462/)、それは、「日本で初の女性監督によるW杯優勝」を成し遂げたということだ。

チームを率いた高倉麻子監督は、2012年から2年連続で「アジア年間最優秀コーチ(女子の部)」を受賞。現役引退後は女子サッカーの育成・普及に努め、ママさんサッカーの指導にも携わっている。ちなみに、私は選手としてそのママさんチームと対戦したことがあるのだが、とても雰囲気が良く、笑いが絶えないチームだった。最後は高倉監督も混じって一緒にボールを蹴った。様々な年代を指揮してきたその経験も、あの大舞台のピッチに生きていたのだろう。

昨年2月の年代別代表合宿で取材をした際、当時、就任したばかりだった高倉監督の言葉は、非常に力強かった。

【チームの印象について】

「今のU-16(現U-17)の世代は、13歳、14歳からエリートプログラムで顔を合わせている選手が多いです。その中で、なでしこが2011年にワールドカップで優勝して、オリンピックで銀メダルというのを間近に感じている世代。もちろん日本女子サッカー界もレベルが上がって来ている中で育ってきた選手達なので、メンタルはまだまだこれからですけれども、技術的には非常にいいものを持っているなという印象です」

【女子の選手を指導するのに、男性の監督とは違って、女性の監督だからこういうこともケアできる、という部分はありますか?という質問に対して】

「女性のスポーツで、女性の監督が良いという意見は最もだと思います。逆に分かってしまうだけに、甘えを許さないみたいなところがありますね。男性の指導者って意外と優しいところがあって、女の子が甘えるとどうしても許しちゃうところはあると思いますが、逆に女性の方が、それは甘えてるだろというところに気づいたりして、逆に厳しいのかなという気はしますけれど。とはいえ男性の指導者、女性の指導者関係なく、一指導者としては、性別は関係ないとは思います」

【ワールドカップにつながる年代で初の女性監督としての自負やプレッシャーはありますか?という質問に対して】

「自分自身が選手のときからいつも一歩目を歩く人間だったので、誰かがそこを踏み出すというよりは、たまたま私がその役目をさせていただくということなので、この後もたくさん良い指導者が育ってくると思いますし、そのために恥ずかしくないような足跡をつけていきたいなと思います」

2011年のなでしこジャパンの優勝で、サッカーを始める少女達の数が増え、その好影響は少しずつ表れてきているのかもしれない。今大会の優勝で、再び女子サッカーに日が当たることを願う。そして、女性指導者が増えることにも期待したい。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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