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なでしこリーグ注目の上位対決。INAC神戸は長野パルセイロ・レディースにリベンジなるか?

松原渓スポーツジャーナリスト
上位対決を制したのは…

3連休となった今週末、各地でなでしこリーグ第16節が行われている。

8日には首位の日テレ・ベレーザ(以下:ベレーザ)がアウェイでベガルタ仙台レディース(以下:仙台L)を下し、残り2試合を残してリーグ2連覇を達成。

一方、同時刻に行われた3位のINAC神戸レオネッサ(以下:I神戸)と2位のAC長野パルセイロ・レディース(以下:長野L)の上位対決も、因縁のある注目の一戦となった。

【両チームのここまで】

長野Lのホームで行われた前回対戦は、衝撃的な結末だった。

I神戸が前半に2点を先制したが、後半に長野Lが3ゴールを決めて劇的な逆転勝ちを収めたのだ。

昇格1年目ながら、長野LはエースのFW横山久美を中心に「3点取られても4点取る」攻撃的なサッカーで今季のリーグを盛り上げてきた。

失礼を覚悟で書くが、シーズン前、長野Lが優勝争いに絡むとは(筆者は)まったく想像していなかった。だが、今では、長野Lに対して「次はどんな風に予想を裏切ってくれるだろうか」という期待感がある。

実際、ドラマチックな逆転劇や、信じられないようなファインゴールも何度か会場で目の当たりにしてきた。

この勢いは、どこから来ているのだろうか。

ジャイアントキリングを続ける長野パルセイロレディース。昇格1年目の”長野旋風”とは?

出典:http://bylines.news.yahoo.co.jp/matsubarakei/20160510-00057545/

15試合で15得点を決めているエース・横山の類まれな決定力は、誰もが認めるところだろう。

加えて、特筆すべきはホームの強さだ。

南長野運動公園総合球技場では、ここまで8試合を戦い、6勝を挙げている。球技専用のスタジアムで、ピッチと客席が近く、大勢のサポーターがスタンドをオレンジ色に染め上げる雰囲気は、相手を飲み込むような威圧感がある。

集客力もダントツだ。

今季、長野Lのホームゲームの観客数は14節終了時点でリーグトップの3622人(1試合あたり)。2位がI神戸の2777人で、リーグの平均は1700人強である。

2011年のW杯優勝以来、リーグ随一の人気と集客力を誇ってきたI神戸にとって、昇格1年目の長野Lには負けられない意地もあるだろう。

勝てば順位が入れ替わる状況だが、松田監督(I神戸)は、「順位以前に、直接対決で負けたくない」とキッパリ。

「長野の今シーズンの躍進は素晴らしいですが、勢いに乗らせたきっかけはうち(8節の逆転負け)だと思っているんですよ。2−0でうちが勝っているところからの長野の諦めない気持ちが逆転勝利につながって、自信を持って突っ走ってきたようなところがあるので。まずはそこをしっかりと叩いて勝利を収めたいですね。」(松田監督)

松田監督が指揮を執って2年目を迎えるI神戸は今季、増矢理花や杉田妃和といった、各年代代表で活躍してきた才能豊かな若手選手たちが、確かな成長を見せている。

リーグ前半戦でいくつかの試合を落としたことが響き、逆転優勝の芽はなくなったが、こちらも中断期間明けの9月は3連勝。

この勢いは、岡山湯郷Belleから加入したGK福元美穂の存在も大きい。

「彼女は自分の考えを積極的に口に出すので、みんながそこに対して意識がいくんです。チームが一つになるきっかけを作ってくれています」(松田監督)

代表でも長く正GKを務めた福元の持ち味の一つが「コーチング」だ。90分間逆サイドのゴール裏まで届くほどの大声でチームを鼓舞し続ける。そして、その姿勢は練習でも変わらない。そんな福元に刺激を受けてフィールドプレイヤーにも変化が現れ、試合前日の練習場は活気に満ちていた。

4連勝をものにするのは、果たしてどちらか。

両チームのスターティングメンバーは以下のようになった。

【I神戸】

FW   10大野忍   11高瀬愛実

MF 14 京川舞             7中島依美

MF    18杉田妃和 16チョソヒョン

DF  3鮫島彩 5甲斐潤子 4田中明日菜 23守屋都弥

GK        1武仲麗依

【長野L】

FW      10横山久美

14泊志穂       28山崎円美

MF     11齊藤あかね   

MF    5木下栞 6國澤志乃

DF 18五嶋京香 15鈴木里奈 7坂本理保 3矢島由希

GK   21林崎(※)萌維

※崎の右側は「大」ではなく「立」

【試合レポート】

3連休の初日は、秋らしい涼しさも感じられる気候となった。

試合は序盤からI神戸が押し込む。長野Lは通常のワンボランチからダブルボランチにし、CBの木下が一列上がる形で守備重視の布陣にし、マンツーマンの守備を徹底。しかし、I神戸は前線の7人が流動的にポジションを変えるため、長野Lは次第にマークのずれが目立ち始めた。

そして前半7分、早くも均衡が破れる。

相手陣内の右サイドでFKを得たI神戸は、中島のピンポイントのキックにCBの田中がヘディングで合わせて先制。

カウンターを狙う長野Lだが、得点源の横山は厳しいマークに苦しみ、シュートまで持ち込めない。攻撃の起点となるべき國澤、齊藤、泊らが中盤の守備に奔走させられてサポートに回りきれず、前半のシュート数はゼロにとどまった。

後半はI神戸のゴールラッシュとなった。

59分、I神戸はFKを京川が胸トラップから美しいボレーで合わせて2点目。2分後には、京川のパスに抜け出した高瀬の折り返しに大野が飛び込んで3点目。71分には、鮫島が縦に仕掛けて2人を抜いてクロスを上げ、ゴール前で杉田が合わせて4点目とした。

長野Lは終盤、ゴール前で児玉がGKと1対1の絶好のチャンスを迎えたが、体調不良のGK福元に代わって先発した武仲が好セーブを連発してピンチをしのぐ。

I神戸は89分には途中交代で入った増矢がドリブルで仕掛け、自ら獲得したPKを決めて5点目。

試合はこのまま終了。

冷静な試合運びで終始先手を取ったI神戸の強さが光った。

試合の公式記録はこちら

日本女子サッカーリーグ公式サイトより)

試合後の監督・選手のコメントはこちら

この結果、I神戸と長野Lとの勝ち点が「31」で並んだが、得失点差で順位が逆転し、I神戸が2位に浮上。

I神戸は先日、サイドバックの近賀ゆかりのキャンベラ・ユナイテッドFC(オーストラリア)への移籍が発表された。次節がホーム・ノエビアスタジアムでのラストゲームとなる。

一方、敗れた長野Lは次節、優勝を決めたベレーザと対戦。横山と田中美南の得点女王争いの直接対決は見どころだ。長野Lは最終節で4位ベガルタとの上位直接対決も残しており、最後まで気の抜けない試合が続く。

また、2部ではノジマステラ神奈川相模原がホーム最終戦でセレッソ大阪堺レディースと引き分け、2部優勝(来季1部昇格)を決めている。

他会場(1部)の結果は以下。

(順位は試合後)

・ベガルタ仙台レディース(4位)0−1日テレ・ベレーザ(優勝決定)

・伊賀FCくノ一(7位)0−2浦和レッドダイヤモンズレディース(8位)

・岡山湯郷Belle(10位)0−3ジェフユナイテッド市原・千葉レディース(6位)

※アルビレックス新潟レディース(5位)vs コノミヤスペランツァ大阪高槻(9位)の試合は10日(月)に開催予定。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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