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女王・ベレーザ相手に完勝。大敗から修正したパルセイロ・レディースが見せた底力

松原渓スポーツジャーナリスト
雲ひとつない秋晴れとなった(C)松原渓

【両チームのここまで】

なでしこリーグは先週、日テレ・ベレーザ(以下:ベレーザ)がリーグ戦の優勝を決め、昨年に続くリーグ2連覇を達成。なでしこリーグカップと合わせて、今シーズン2冠目を手にした。

すでに優勝チームは決まったが、上位争い、残留争い、得点女王争いなど、残り2試合も見どころが盛りだくさんだ。

10月15日(土)に行われた第17節では、ベレーザがホームの多摩市立陸上競技場に、3位のAC長野パルセイロ・レディース(以下:長野L)を迎えた。

リーグ戦5連勝中のベレーザは、公式戦11試合無失点記録を継続中。一方、昇格1年目ながら、シーズンを通して上位をキープし続けてきた長野Lは、前節INAC神戸レオネッサ(以下:I神戸)に5−0と大敗を喫し、順位をひとつ下げた。一週間という短い期間ではあるが、修正し、気持ちを切り替えて上位フィニッシュを目指す。

前回対戦は、長野Lのホームでベレーザが5−1と圧巻の強さを見せた。長野Lは、アウェイで女王相手にどんな試合内容を見せるのか。

また、この試合のもう一つの見どころが「得点女王争い」だ。

トップを走るのは、ここまで16試合で18ゴールを決めている、ベレーザのFW田中美南。

「個人タイトルよりもチームが勝てればいいという思いでプレーしてきたんですが、今はベレーザが良いチームであることを証明するために、得点王を取りたいです。」(田中)

昨年、わずか1ゴール差で得点女王になれなかった悔しさをバネに、14節から16節までの3試合で9ゴールと量産中だ。

2位につけるのは、同15ゴールのFW横山久美(長野L)。カップ戦を含め3度のハットトリックを達成するなど、幾つものスーパーゴールでチームに勝利をもたらし、今季の”長野旋風”をリードしてきた。新生なでしこジャパンのストライカーとしての意地も見せたいところだ。

ベレーザの今季最後のホームゲームで、試合後は結果に限らずリーグ優勝セレモニーを開催することが決まっており、多くのサポーターが歓喜の瞬間に立ち会うべく、会場に訪れていた。

両チームのスターティングメンバーは以下のようになった。

【ベレーザ】

FW      9田中美南

FW      10籾木結花

MF 14長谷川唯       8上辻佑実

MF   20阪口夢穂  7中里優

DF 6有吉佐織 3村松智子 22岩清水梓 2清水梨紗

GK      21山下杏也加

【長野L】

FW    10横山久美 14泊志穂 

MF       11齊藤あかね 

MF  8大宮玲央奈     13児玉桂子

MF        6國澤志乃

DF 18五嶋京香 15鈴木里奈 7坂本理保 3矢島由希

GK   21林崎(※)萌維

※崎の右側は「大」ではなく「立」(以下同)

【試合レポート】

会場の多摩市立陸上競技場は、雲ひとつない見事な秋晴れとなった。

試合は、予想通り、ベレーザがピッチを広く使ったパスワークで優位に進めた。この試合がリーグ戦200試合目で誕生日でもあったMF阪口を中心に、多彩な崩しを見せる。

だが、長野Lは前節の大敗を引きずることなく、しっかりと修正し、気持ちを切り替えて臨んでいた。前線で横山と泊がパスコースを限定すると、それに応える形で、後方も迷わずボール奪取に飛び出していく。前節は、I神戸に対し、マンツーマン気味の守備で対抗したが、相手のポジションチェンジにマークが混乱した。

「どう守っても取られるし、どうシステムを変えても点を取られるんだったら、いつも通りに行きましょう、と。いい意味で開き直りました。」(長野L、本田美登里監督)

ダブルボランチから通常のワンボランチに戻し、ベレーザの攻撃のスイッチとなる縦パスを封じつつ、得点源の横山を生かすカウンターに狙いを定めた。

中央のラインを封じられ、トップの田中になかなかボールが繋がらないベレーザは、長谷川のミドルシュートや籾木のドリブルでシュートまで持ち込むが、長野の集中したDFラインを割ることができない。

そんな中、衝撃的なゴールで試合が動く。

21分、長野Lは相手陣内で大宮のパスを受けた横山がドリブルを開始。徐々にスピードを上げて村松、岩清水、有吉と3人のDFをかわし、最後はペナルティエリアの外からGK山下の逆をついたシュートをゴール左隅に突き刺したのだ。

なでしこジャパン招集経験のあるDFとGKの4人が築く鉄壁のディフェンスラインを破って決めた、洗練されたスーパーゴールに会場がどよめく。このゴールで、ベレーザは11試合無失点記録がストップした。

後半に入っても集中した守備で隙を見せない長野Lに対し、ベレーザは徐々に焦りの色が見え始めた。

67分、ベレーザはペナルティエリア内で籾木のパスを受けた田中が2人に囲まれながらも強引にターンに持ち込む。すると、たまらず坂本が腕をかけてしまい、ベレーザがPKを獲得した。蹴るのは田中。同点に追いつく絶好のチャンスだったが、コースを狙った丁寧なキックは、GK林崎がボールの軌道を完全に読んでキャッチ。長野Lはこの日、再三にわたる好セーブを見せていた林崎が大事な場面で大仕事をやってのけた。

するとその直後、再び長野Lにチャンスが訪れた。

前線でキープした横山に、ベレーザは4人のDFが引き付けられる。すると、空いた右サイドのスペースに走り込んだ泊にボールが渡り、冷静にGKの逆をついて決め、長野Lがリードを2点に広げた。

多彩な攻めを見せるベレーザは後半だけで10本のシュートを放ったが、最後まで猛攻を耐え凌いだ長野Lが2−0で勝利。

ベレーザは今季初の複数失点。得点女王争いの直接対決は、横山に軍配が上がる形となったが、総得点数では依然、田中が2点リードしている。

試合の公式記録はこちら

日本女子サッカーリーグ公式サイトより)

試合後の監督・選手のコメントはこちら

他会場(1部)の結果は以下の通り。順位は第17節終了時。

・日テレ・ベレーザ(首位/優勝決定)0-2 AC長野パルセイロレディース(3位)

・ジェフユナイテッド市原・千葉レディース(6位) 0-1浦和レッドダイヤモンズレディース(7位)

・アルビレックス新潟レディース(5位) 2-0 伊賀FCくノ一(8位)

・INAC神戸レオネッサ(2位)2-0 岡山湯郷Belle(10位)

・ベガルタ仙台レディース(4位)5-0 コノミヤスペランツァ大阪高槻(9位)

来週10月23日(日)は、今季最終節となる。注目は、2位から4位の上位対決だ。

I神戸(2位)は6連勝で2位をキープして終えたいところ。一方、長野L(3位)は仙台L(4位)との直接対決を制し、I神戸が引き分け以下の場合、もしくは仙台Lと引き分け、I神戸が負けた場合は、2位まで順位を上げることができるが、仙台Lに敗れた場合は4位まで下がる。

また、9位コノミヤと、10位の岡山の最終順位も入れ替わる可能性があり(※)、どの試合会場でも最終戦まで激闘が繰り広げられる。

※10位のチームは自動降格となり、9位は2部の2位との入れ替え戦に回る。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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