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勝利を引き寄せた「長野劇場」。AC長野パルセイロ・レディースの今季を振り返る(監督・選手コメント編)

松原渓スポーツジャーナリスト
試合後はサポーターとともに勝利のラインダンスを踊る(C)松原渓

なでしこリーグ最終節。

3位のAC長野パルセイロ・レディース(以下:長野L)は、ホーム最終戦に4位のベガルタ仙台レディース(以下:仙台L)を迎えた。

試合は長野Lが2-1で勝利し、昇格1年目のシーズンを3位の成績で終えた。

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試合後の監督と選手の言葉から、この最終節と、2016シーズンを振り返る。

【試合後の監督・選手コメント】

★本田美登里監督

ーー試合を振り返って

最終戦ということで、選手たちはこちらが何も言わなくてもしっかりとスイッチが入っていました。仙台はスタメンの平均身長が4cm違うぐらい、非常に高さのあるチームです。危ないシーンも幾つかありましたが、全員で守りきれたかなと。

坂本の1点目は、ホームのカップ戦で横山が非常に長いFKを決めたこともあったのか、相手のゴールキーパーのポジショニングが非常に低くて、(ゴール)ライン上に立っていたんですね。本来、彼女はあと2、3m前に出てきている選手です。それを見て、直接狙うのではなく、坂本に合わせた横山の判断も非常にクリエイティブだったと思います。泊の2点目は、その前に2回ほど(決定機があり、それを)決めてくれていたら、自分たちがもう少し楽に試合を運べたんですが(笑)。三度目の正直でしたが、彼女の得意な部分(シュートエリア)でした。それよりも、内山が横山に(パスを)出さずに、よく泊に出したな、と。多分、3年前だったらあのスペースは見えていなかったので、その点は評価してあげたいです。

ただ、できれば横山に得点を取らせてあげたかったという私自身の思いはありますし、選手も同じだったと思いますが、横山がフォアザ・チームで、チームが勝つことを優先させた(1点目の)アシストだったと思います。

これまでには勝てる試合もあったし、カップ戦ではあと勝ち点「1」取れていれば決勝トーナメントに行けたので、それは次の課題にしたいと思います。

この1年、なでしこがリオオリンピックに行けない中で、女子サッカーを盛り上げていこうという自分自身の思いがありましたが、去年まで2部にいたチームが3位になったことで、長野から発信することができたかなと思います。

ーー開幕前の目標は6位でしたが、3位で終えたことについては。

ビギナーズラックということもあると思いますし、前半戦は特に、我々はほとんどマークされていなかったので、そこでしっかり勝ち点を取れたのが大きいと思います。目標よりは、目の前の相手に負けたくないと考えて、毎週、一杯いっぱいになりながら、相手のスカウティングと自分たちの振り返りをしていました。

3位という成績自体は、パルセイロの選手たちを褒めてあげたいなと本当に思います。3点取られても4点取るようなチームでしたから、彼女たちが伸び伸びサッカーをやっていたんだろうなと思います。ただ、2部から上がってきたばかりのチームが3位ということで、女子サッカー界の現状をもう少し、捉え直さなければいけない気がしますし、だからこそ、リオ(オリンピック出場)を逃したのかな、とも思います。

各チームが、もっと気を引き締めて個の強さを磨いていかなければ、やはりフランスワールドカップでも東京オリンピックでいい成績を残すのは難しいと思います。代表に何人もの選手をパルセイロから輩出していくために、もっともっと彼女たちには高いものを求めていきたいと思います。

ーー来年さらに上の順位に行くためには何が必要だと考えていますか?

元々、持っているポテンシャルはそれほど高くないチームで、下手くその集団ですから(笑)。やはり、個の技術で、止める、蹴る、出したいところに出せる、ということが大事です。判断も遅いし、悪い。そういったところで、個人の能力をもっと上げていく必要があると考えています。

ーーこの後に始まる皇后杯の目標は。

今日の試合を考えることでいっぱいだったので、まだ考えていません(笑)。ただ、この長野という土地は、選手たち自身もチームもそうですが、成績が上に行けば行くだけ観客の皆さんが盛り上がってくださいます。できれば1試合でも多くこの2016年のチームでやっていきたいし、ベスト4までいければいいですね。

★DF坂本理保(キャプテン)

ーー見事な先制ゴールでした。

(FKで)横山から良いボールが来ました。カップ戦のホームゲームで、あの位置から横山が(直接ゴールを)狙ったことで、今日はキーパーが低い位置に立っていたので、横山と「その間を狙えるね」という話はしていました。2人の共通意識で、ドンピシャの良いボールが来たので、ほぼ横山の得点ですね。お互いに気持ちが通じ合ったので、「ナイスゴール!」と言い合いました。

ーー今日もサポーターが4000人を超えました。

今シーズン平均3000人を超える方々に集まっていただいた中で、選手として本当に幸せを感じます。クラブが愛されているなということも、集まってくださるサポーターの方々を見て感じることができます。1年目でしたが、その声が本当に後押しになったので、感謝の言葉しかないですね。

ーー来週から皇后杯です。

リーグでは長野旋風を巻き起こせたと思いますので、皇后杯でも引き続き勢いに乗って、なんとか上位争いに加われるように頑張ります。

★FW泊志穂

ーー試合を振り返って

前からディフェンスをして、高い位置で奪って攻めるという共通理解がしっかりと表現できていたので、最初から自分たちのペースに持って行けました。最後の試合でしたし、ベレーザ戦で勝てた勢いもあったと思います。私がチャンスで外して焦っていたんですが、前半の最後に坂本が決めてくれて安心しました。

ーー自身の(2点目の)ゴールを振り返って

内山選手から良いボールが来ました。その前に横山選手からのパスを外してしまったので、絶対に決めようと。(GKの)平尾(恵里)選手と練習していた、股の間を狙うシュートがあの場面で蘇って、狙い通りに打つことができました。本当に嬉しかったし、ホッとしましたね。チャンスで決める、というところは今後の課題ですね。

ーーこの順位まで来られた要因をどのように考えますか?

本当に、「勢い」だと思います。(横山)久美がいつも苦しい時に点を取ってくれて、それに助けられたし、その分みんなが体を張れました。全員が役割をまっとうして、責任を持ってプレーできたと思います。 もっと失点が少なかったら2位になれたかな、とも思いますが、今年は3位で満足ですし、ホッとしています。

ーー4300人のサポーターが集まって、雰囲気はどうでしたか?

パルセイロがボールを持つたびにすごい歓声が上がって、本当に背中を押してもらいましたね。メインスタンドでも歓声があって、歌を歌っていただいて。「絶対に勝つ」という気持ちを持てました。

ーー個人的にはどのようなシーズンでしたか?

毎試合が勝負で、チャレンジ精神を持って戦ってきたし、1試合ごとに成長できたのではないかと思います。1部でプレーできたことを自信にして、できなかったことは課題にして、レベルアップしていきたいです。皇后杯でもしっかりチャレンジして、点を決めたいです。

★FW横山久美

ーー3位で終えられたことの要因をどう思いますか?

前期のうちに勝つ回数が多かったというのは、研究される前に試合に勝てたことが大きかったですし、日本一のサポーターの皆さんがいて、南長野で試合ができたことはすごく力になっていました。

ーーさらに上に行くために、来年はどういうことが必要だと思いますか?

(目の前の1試合に集中していたので)来年のことはまだ考えていないんです。 皇后杯についても、同じです。

ーー皇后杯という大きなタイトルに向けて、目標は?

皇后杯は、負けたら今シーズンが終わりなので、一戦一戦大事に戦いたいと思いますし、チームの団結力が問われる大会だと思うので、また一丸となって戦いたいと思います。

★MF大宮玲央奈

ーー勝利で最終戦を終えられたことについて

どんな形であれ、勝てば3位ということで、気持ちが入っていました。この順位で終われて本当に良かったと思います。

ーー前節、ベレーザ戦で勝利したことで自信がついたように見えました。

はい。ベレーザ戦でしっかり勝ち切れたので、あの試合のようなサッカーをすれば絶対に勝てるという自信を持って臨みました。自分が守備のスイッチを入れる役目だと意識していたので、しっかり体を張ろう、と思っていました。

ーー今日の布陣はいつもと違いましたが、監督からはどのような指示があったのですか?

中盤が横関係のフラットで、4−4−2のような形でした。相手からも研究されて、(ワンボランチの)國澤選手の周りのスペースを狙われていたので、中盤に厚みを持たせて、國澤選手の負担を減らす狙いはあったと思います。

ーーその意図が、試合の中ではすんなり表現できましたか?

前半は、ボランチ2枚とフォワードの間が空きすぎてしまって、セカンド(ボール)が拾えない現象が起きていると、ハーフタイムに選手同士で話しました。後半はそこをうまく修正して入れましたね。

ーー皇后杯に向けて、個人的な目標は。

リーグでは自分たちでも信じられない結果で終われたので、できれば皇后杯の準決勝でもう一回ベレーザと戦って、勝ちたいですね。

★MF國澤志乃

ーー試合を振り返って

仙台は球際が強く、激しい試合になると予想していたので、球際では絶対に負けないことは大前提でした。(個人的には)球離れを早くしようと思っていたんですが、何回かトラップしたところを狙われたので、皇后杯にむけて改善したいです。

ーー1年目でこの順位(3位)についてはどう感じていますか。

想像していなかったですね。自分たちのサッカーを1試合1試合積み重ねていった結果が、この順位につながったと思います。このチームの良さは攻撃的なところですね。また切り替えて皇后杯に臨みます。

ーー(なでしこジャパンでも共にプレーした)川村選手とのマッチアップについては?

ダブルボランチの川村選手と岸川選手の2人にはやられないようにしよう、と、山崎選手とマークを確認しあいながら90分間やりました。マークがルーズになってしまったり、受け渡しができない場面ではディフェンスラインの選手がカバーしてくれて、なんとかやれました。

ーー今年は1部リーグ初挑戦で、代表にも入りました。成長を感じる面は?

1部でシーズンを通して試合に出られたことは良かったです。毎試合自分の課題として、攻撃面でのミスを減らそうと取り組んできましたが、まだまだ多いですね。

★MF山崎円美

ーー今日はボランチでプレーしましたが、手応えは?

あまり攻撃には関われなかったんですけれど(笑)。今日は相手のボランチを完全に抑えたかったので、そこを徹底して狙っていました。攻撃の時はトップ下のイメージで、もう少し自分らしく関われたらな、と思いましたが、なかなか飛び出せなくて。まずはチームが勝てたことが一番です。

ーー今季途中加入で、ケガもありましたが、どんなシーズンでしたか?

今日の試合は勝てば3位で負ければ4位だったので、絶対に勝ちたい試合でした。チームとサポーターとスタッフも含めて一つになれた勝利でした。

ーー移籍前の所属チームである新潟との違いをどんなところに感じますか?

新潟は個々の上手さがあるのですが、本田監督は選手のモチベーションを上げるのが上手いですし、勝たせ方を知っている。ることが徹底していて、ここぞという場面で力を発揮出来るんです。あとは運動量ですね。みんな一人一人が頑張っている、そこは非常に大きいと思います。運動量があって、一人一人が頑張って、ここぞという場面で力を発揮出来るところは魅力だと思います。

ーー個人としてはどんな変化がありましたか?

新潟では合わせてもらう場面が多かったんですが、長野に来てからは、自分も合わせて行こうと意識しています。それと、自分でも積極的に仕掛けるとか、前を向くことですね。以前は簡単に下げる場面も多かったんですが、強引に前に行く動きやシュートを打つことを監督から要求されているので、強く意識しています。

試合後には、MF内山の100試合出場記念セレモニーが行われた
試合後には、MF内山の100試合出場記念セレモニーが行われた
スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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