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開幕まで、あと4日。FIFA U-20女子ワールドカップに臨むヤングなでしこへの期待(1)

松原渓スポーツジャーナリスト
9日にポートモレスビー入りした日本は現地の学生達から歓待を受けた(C)松原渓

【FIFA U-20女子ワールドカップがいよいよ開幕】

赤道直下の強烈な太陽が肌をジリリと焦がす。

日本から南へ、直線距離で約5000km。世界で2番目に大きな島であるニューギニア島と、1000を超える周囲の島々からなるパプアニューギニア。

この国で、11月13日からFIFA U-20女子ワールドカップが開幕する。

U-20日本女子代表は、直前合宿地のオーストラリアから9日にパプアニューギニアの首都・ポートモレスビー入り。

カメラを向けると最高の笑顔を向けてくれる
カメラを向けると最高の笑顔を向けてくれる

空港を出たところでは、地元の学生が中心となって、メッセージが書かれた手作りの旗や国旗を持ち寄り、華やかに日本の選手バスを出迎えた。

2016年10月21日、ヨルダンで開催されたFIFA U-17女子ワールドカップ決勝で、日本は北朝鮮を相手にPK戦の末に敗れ、惜しくも準優勝で大会を終えた。

2010年以降、日本は同大会で過去4大会中3大会で決勝戦に進出しており、2014年大会は世界一にもなった。高い組織力を活かした緻密なパスワークや技術は他国の追随を許さず、この年代では育成面で世界をリードしている。

だが、その上のカテゴリーであるU-20ワールドカップでは、同じような結果は残せていない。

U-20ワールドカップは2002年に始まって今回で8大会目(2年おきの開催)となるが、日本の最高順位は2012年大会の3位。

この2012年大会は当初、ウズベキスタンが開催地に決まっていたが、施設が基準に満たない等の理由により、急きょ開催地が日本に変更になった。大会は日本の躍進もあって大いに盛り上がり、3位という成績で開催地としての面目も保つことができた。 

だが、この大会で筆者の記憶に鮮明に残るのは、日本の健闘よりも、点差以上に大きな差があった、準決勝のドイツ(0−3)戦である。決勝戦はアメリカがドイツを激戦の末に破って優勝したが、両国とも日本と比べると、戦術面でのレベルの高さが際立ち、身体能力の違いを見せつけた。

【A代表が強いチームに共通することとは?】

アメリカとドイツは、これまでに行われた7回のU-20ワールドカップで、3回ずつ優勝している。育成年代の集大成とも言えるこの大会で実績を残してきた2か国が、世界ランキング1位と2位の座を長く守っている事実を、どう捉えるか。紛れもなく、継続的な育成の成果が、年齢制限のない代表チーム(以下:A代表)の強さに繋がっている。

ひるがえって日本は、なでしこジャパンがワールドカップで優勝した2011年以降を考えても、U-20代表とA代表(以下:なでしこジャパン)が、お互いのコンセプトを共有していたとは言い難い。

例えば、2012年ワールドカップで3位に輝いたU-20代表と、ロンドンオリンピックで準優勝に輝いたなでしこジャパンでも、サッカーの方向性は違った。近年、育成年代の代表に選ばれてきた選手がなでしこジャパンに引き上げられても、なかなか定着できなかった原因の一つは、その点にあるのではないかと考えている。

そういう観点から今大会をみると、とても期待できることがある。

チームを率いる高倉麻子監督と大部由美ヘッドコーチは、この年代を長く指導しており、選手によっては継続して8年以上も成長を見続けてきた。

そして、2013年にU-16日本女子代表として立ち上げられたチームは、高倉監督の一貫したコンセプトの下、アジア(U-16/U-19女子選手権)と世界(U-17ワールドカップ)で頂点に立ち、世界的にこの年代の女子サッカーをリードしてきた。

2人は今年の5月からなでしこジャパンの指導も兼任(U-23代表も同様)しているが、代表選手に求める条件や目指すサッカーのコンセプトは、どのカテゴリーでもしっかりと実践されている。

選手にとって、U-20からなでしこジャパンへのステップアップは、よりスムーズになるだろう。

後編

【U-20日本女子代表の強みとは?】

に 続く

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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