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欧米の強豪国に走り勝つ!なでしこジャパンに注入された走力アップの秘訣とは。(2)

松原渓スポーツジャーナリスト
東京都内の西が丘サッカー場で国内合宿を行ったなでしこジャパン(C)松原渓

1月20日から都内で国内合宿を行っていたなでしこジャパンが、24日、東京都内の味の素フィールド西が丘サッカー場で最後のトレーニングを終えた。

欧米の強豪国に走り勝つ!なでしこジャパンに注入された走力アップの秘訣とは。(1)

2019年の女子ワールドカップ、2020年の東京五輪という大きな目標に向けて、なでしこジャパンが本格始動した。

このチームで臨む最初の大会は3月初旬のアルガルベカップである。そして、4月9日には熊本で、コスタリカ代表との親善試合が行われることも発表された。

高倉麻子監督が「フィジカル(を高める)キャンプ」と位置付けた今回の国内合宿。5日間の取り組みを通じて、選手たちが得た手応えとはーー。

監督・選手コメント

高倉麻子監督
高倉麻子監督

高倉麻子監督(23日練習後)

ーー朝原さんを招聘した経緯を教えてください。

昔からよく知っていたので、(なでしこジャパンの)監督になった時に、朝原君に「なでしこの足を速くしてよ」って言ったら「ええで」と言ってくれて。今まで体の使い方、身体意識とメンタルの部分にまったく手をつけていなかったので、選手自身が見つめ直して、ボールを使ったトレーニング以外で、気づいたり、発見したりと、変化があったらいいなと。細かいことにこだわってやっていくことが大切だとあらためて思いました。

ーー主にメンタルとフィジカルをテーマにした今回の合宿では、どのような収穫がありましたか?

栄養のことも含めてもう一回丁寧に、自分自身を見つめ直すということが大事だと思います。トップアスリートとして生きていくために、いろんなものから勉強できると思うので。違ったところから入ることで気づくことがあって、その中でサッカーが伸びていくということは、自分が現役の時もありました。

シーズンも始まるので、それぞれの選手がチームに帰ってトレーニングを積んで、「日本はフィジカルが弱い」と言われないように、そこを言い訳にしないでサッカーをやっていきたいと思います。

(24日練習後)

ーーキャプテンは決まりましたか?

熊谷紗希にやってもらおうかなと思っています。経験もありますし、年齢的にもちょうど真ん中です。でも、キャプテンだから何かを負わすというわけでもないですし、全員がチームのリーダーの自覚を持って、日本を引っ張っていくという気持ちでやってもらいたいなと強く思っています。

ーースピードとパワーにフォーカスした合宿でしたが、どのような手応えを得られましたか?

ずっとやらなければいけないと思っていましたが、どうしても合宿になると戦術的なところになってしまうので。シーズン初めで、選手のコンディションは難しい部分はあったんですが、体の疲れ方とか、どういうものが大事かということをあらためて確認できたと思うので、すごく良い合宿になったなと感じていますし、これを続けていくということがすべてだと思います。再び世界一を目指すという強い気持ちを持って、フィジカル的にも、技術的にももう一段階上がっていこうと感じてもらいたいと思っています。

熊谷紗希(先頭)
熊谷紗希(先頭)

DF 熊谷紗希(キャプテン)

(22日練習後)

ーー今回のキャンプの感想を教えていただけますか?

今は日本代表として立ち上げの時期ですし、私は向こう(リヨン)でシーズンは始まっていますけれど、こういうきっかけをチームでいただけることはすごく大事だと思うし、ここからは個々で継続していくしかないと思います。

ーーフィジカルを鍛えるという発想についてはいかがですか?

フィジカルとか筋力トレーニングは普段からやっているし、私も必要性をずっと感じているから続けています。でも、チームとしては、何人かは本当に初めての経験という選手もいましたし、継続する中でピッチのパフォーマンスにどう活きてくるかは、今までやっていなかった分、伸びしろしかないと思うので。合う、合わないはやってみて決めたらいいと思うし、今後はチームとしても個人としても、それぞれが続けた方がいいと思います。

ーー外国人選手だからフィジカルで負ける、というのは思い込みというか、意識を変えるだけでも変えられる部分は多いですか?

そうですね。元々、骨格とか体格は外国人の選手の方がある上に、外国人選手はフィジカルトレーニングをやっています。小柄な日本人選手がやらなかったら、差は広がるばっかりです。今年は(なでしこジャパンの)活動が増えますけれど、2019年、2020年に向けていい準備をしていくべきだと思いますし、いかにパフォーマンスの向上につながるかということは、それぞれの選手の責任でもあります。

宇津木瑠美
宇津木瑠美

MF 宇津木瑠美(22日練習後)

ーー今回の合宿には若手も多く呼ばれていますが、雰囲気はいかがですか?

高倉監督になってから、ショートキャンプが多いので、体の疲労が蓄積しても、メンタル的にはいい状態で合宿を終われています。チームのコミュニケーションに波がなく、和気あいあいとやれていると思います。ただ、ピッチ上では厳しさも必要だし、その厳しさをピッチ外でも持たなければいけないという自覚や認識のギャップは多少あると思います。ただ、まだ10代の選手もいるので、時間がかかることかもしれません。

ーー自覚を持つという点で、宇津木選手の実績や経験をどのように若い選手たちに伝えていきたいですか?

アンダーカテゴリーの選手たちは、同じ世代の選手たちとプレーしてきたので、先輩や年下も少なかったと思います。今はフリーのカテゴリーで代表に入って、誰も見てくれるわけではないので、自分で自分の良さを「誰かに見てもらわなくても出し切れる」という状態でなければいけないですし、それが自覚になると思います。ピッチ外のところでも子供が大人になる、大人がもっと大人になる、ということは、女子の団体では必要なことかなと思います。

ーー今後は、どのようなことが日本にとっての課題だと思いますか?

チームとして、パワーや持久的なものは継続して取り組んでいます。サッカーというよりは、スポーツにおいて大事な、一番ベーシックなところで、足の速さや強さはどのスポーツにも必要なことです。サッカーは技術のスポーツなので、(そういったことに)あまり着目することがなかったというのもあると思います。アスリートとして必要なことは、どのスポーツにも共通することが多いということを、今、あらためてみんなで認識しました。

ーー変われそうだな、という手応えはありますか?

人(選手)が変わって、チームが変わるのにはやっぱり4〜5年かかるので、2020年に間に合えばいいな、と思いますし、それを可能にできる選手たちしかいません。(練習)環境や(代表を支える)スタッフは揃っているので、今は選手たちが試されていると思います。

川村優理
川村優理

DF 川村優理(22日練習後)

ーー今回のキャンプはフィジカルに重点を置いていますが、どのような印象ですか?

技術の部分では日本は世界でも上を行っていると思いますけれど、映像を見ても、あと一歩寄せられたり、一歩の加速で負けていることが多かったので、そこで個人でボールを奪えれば展開が変わってくると思います。チームとして新しい試みだと思いますし、世界で戦う上で必要なことだと思います。チームメートも一緒にやれば日本女子サッカー自体のレベルが上がると思うし、ここで得たことをチームに還元したいと思います。

ーーこのチームでは経験がありますが、どのようなリーダーシップを取っていきたいですか?

私たちは上の選手たちが下の選手たちを引っ張っていく姿を見てきているので、チームを盛り上げたいですね。

若い子も上手い選手が多いですし、みんな一生懸命頑張っていると思います。高倉監督も「練習から競争」と言ってくれているので、そういうところを意識しながら練習できています。

ーーフィジカルで特に高めたいところはどんなところですか?

たくさんあります。世界に比べたらスピードが遅いですし、初速の速さはもっともっと高めなければいけないなと思います。アジアもレベルが上がってきて、フィジカルも日本よりは強いので、そういう点でもフィジカル面は高めていかなければいけないなと思います。

北川ひかる(左)
北川ひかる(左)

DF 北川ひかる(22日練習後)

ーー3日間の練習を振り返っていかがですか?

今日はゲーム(紅白戦)がありましたが、自信につながる部分もあったし、もっとうまくならないといけないなという部分がたくさん出てきました。

(3対3では、熊谷)紗希さんと同じチームでしたが、指示が的確で、すごくやりやすかったです。世界で戦ってきただけに冷静な判断がしっかりできていて、見習いたいと思いました。

ーー通用した部分と、向上していきたい部分を教えていただけますか?

自分の強みである1対1の対応や、ビルドアップの面では、ワンタッチでつないでゴール前まで行ける場面があり、通用する部分がありました。一つ一つの質は常に向上していかなければいけないなと思います。特に、ビルドアップの面や、より良いポジショニングをとることについてはもっと考えていかなければいけないなと思います。

ーー今後、目指したいサイドバック像を教えていただけますか?

それぞれの選手の特徴がある中で、自分なりのサイドバックを追求してきていますが、アグレッシブさという点では誰にも負けていないと感じています。課題を克服していけば絶対に一番になれると思っています。

ーーA代表に初招集されて、今年はどのようなことを目標にしたいですか?(24日練習後)

自分は身体能力的には海外の選手にも対応できると思っているんですけれど、やっぱり、体つきの面で、まだまだ細くて、そこを変えないと、ケガもしてしまうと思うし、これから戦っていくにあたって良い選手とは言えないなと思います。自分は強気なプレーやアグレッシブに行くところが持ち味なので、先輩たちの中でも積極的に自分を出していきたいと思います。

國澤志乃
國澤志乃

DF 國澤志乃(23日練習後)

ーー今回の合宿は、どのようなテーマを持って入りましたか?

自分の持ち味を出そうと思って入りました。チームではボランチですが、サイドバックをやらせてもらって、今回の合宿で4回目になりますが、継続してきたことをさらに積み上げようと思って入りました。

ーー今回はフィジカルキャンプなので、今までの合宿とは違いますが、どのような手応えを得ていますか?

自分の持ち味は、ディフェンス面のボール奪取だと思っていますが、レベルの高い選手たちの中でやっていると、もっともっとやらなければいけないな、といつも感じています。球際の部分で、1つかわされてしまうとそのまま抜かれてしまうことがあったので、予測の部分で対応を改善していきたいですね。

ーーフィジカルトレーニングをやった後のゲームでは、何か違いは感じましたか?

体が重くなっている中で、守備だけでなく、攻撃でもちょっとパスがずれたら、あと1歩が出ない、ということが課題です。

ーー今回の合宿を通じて、どのような収穫がありましたか?

すべてが収穫です。フィジカル的なトレーニングもそうだし、技術的にも、基本的なパスアンドコントロールの質を上げていきたいです。パスは、相手にぶつけるぐらいの強さで蹴れるように改善していかなければいけないですし、今回取り組んだメニューを、一年を通して継続していきたいなと思います。今シーズンは、パスミスや、判断のミスなども減らしていきたいですね。

市瀬菜々
市瀬菜々

DF 市瀬菜々(23日練習後)

ーー朝原コーチの講義を受けて、どのような発見がありましたか?

個人的にスピードを伸ばしていかなければいけないと思っているのですが、その面でも、今回の講義は勉強になりました。

ーー自分の得意な動きもありましたか?

自分ではバック走(後ろに走る)が得意です。苦手なのはジャンプとか、回転とか、動きが変わる時の動作ですね。そこは、チームでも継続していきたいと思います。

ーー年上の人たちの中で初めての代表合宿でしたが、どのような収穫がありましたか?

もっと自分のプレーを出せると思っています。上の先輩たちに遠慮なく、追い越していくぐらいの気持ちで取り組んでいかなければいけないなぁと思いました。ミニゲームでは、(熊谷)紗希さんと組んだのですが、マークの受け渡しなど、指示がとても分かりやすかったですし、前でのインターセプトを怖がらずに行けるところなど、学ぶことが多かったです。

ーー今回の合宿を通じて、今年の目標は見えましたか?

今回、ウェイトトレーニングやフィジカルトレーニングなどを行い、身体がきつい中でのゲームで動けていなかったですし、ウェイトトレーニングでも、筋肉が全然通用していませんでした。今年は一つひとつのプレーの正確性を上げることと、全身のウェイトトレーニングを続けて、世界で戦えるフィジカルをつけていきたいと思います。

籾木結花
籾木結花

FW 籾木結花(24日練習後)

ーー個人的に今、フィジカル面で力を入れていることはどのようなことですか?

体の基礎を作るというところで、使えていない筋肉を使うトレーニングを行ったり、基本の動作を、おもりの負荷を増やして強くしていくことを行っています。それを効率の良い走りにつなげていったり、いろいろな動作につなげていくところがこれからの課題です。

ーー初めてのA代表での合宿を終えて、今後代表に定着するために、何が必要だと感じましたか?

今回選ばれたということはスタート地点に立てたということなので、やはり、ここから生き残っていくためには自分のチームで結果を残さなければいけないと思っています。(自信は?)はい、あります。

ーーフィジカル面を強化する5日間の合宿に参加して、いかがでしたか?

意外と上半身が筋肉痛ですね。腕立てや懸垂などが効きました。走り方などは、サッカーのプレー中でも生きてくると思います。(朝原さんから)丹田という、お腹の力を常に抜かないということが大事と教えていただいたことが印象に残っています。足を動かすとどうしてもお腹の力が抜けてしまうことが多々あるので、難しいのですが、そこを強化して、今後のプレーに活かしたいと思いました。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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