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なでしこリーグ開幕に向け、浦和レッズレディースが取り入れた走力アップの秘策とは?(2)

松原渓スポーツジャーナリスト
走る際の踏み込みのフォームを丁寧に確認した(C)松原渓

日本女子サッカーのトップリーグ、通称「なでしこリーグ」の2017/18シーズンが、3月26日に開幕する。

各チームは選手の移籍や新体制発表などの発表を経て、今季を戦う陣容もほぼ固まり、シーズン開幕に向けたチーム作りを着々と進めている。そんな中、浦和レッズレディース(以下:浦和L)は隔週で、選手向けに全3回の「スプリント講習会」を開催。

スプリントコーチの秋本真吾氏をゲスト講師に招へいし、より速く、より効率良く走るための技術やメカニズムを学んだ。

なでしこリーグ開幕に向け、浦和レッズレディースが取り入れた走力アップの秘策とは?(1)

以下、トレーニング後のコメント。

【監督・選手コメント】

秋本真吾氏(プロスプリントコーチ/200mハードルアジア最高記録・日本最高記録保持者)

ーー走りのフォームを改善する上で、身体能力の高さも効果の差を分けるのでしょうか?

(上半身と下半身の)コーディネーションの方が重要ですね。タイミングの取り方も大事です。Jリーガーやプロ野球選手の指導をしていますが、コーディネーションはプロ野球選手の方が良い選手が多いんです。野球は上半身も使いますが、サッカー選手は脚しか使わない方もいるので、腕が振れないことがあります。そういうことも、フォームの動きづくりの中で得て、サッカーの動きにつなげてもらいたいと思っています。

ーーフォームの指導をする上で、どのようなことを意識していらっしゃいますか?

サッカー選手の方に、どの要素を鍛えたいかを聞くと、「初速を上げたい」ということが第一に来る方が多いのですが、ベースの走り方がしっかりしていないのに、いきなり初速を上げるのは難しいです。まずは素走りでしっかり走れるようになってから、段階を踏むことが大事だと考えています。

ーー女子選手に特徴的な傾向はありますか?

女子選手だけではなく、サッカー選手に共通して言えることですが、脚を遠くに出して進もうとしてしまう傾向がありますね。かかとから着地してしまったり、地面に着いてからキックしようとするので、足が後方に流れたり、ロスが発生してしまうんです。陸上選手はゴムのトラックを走っているので、地面の反発を上手にもらうことが大切ですが、サッカーでは地面から反発が得られない分、自分の力でグッと踏み込んでしまう。それがロスにつながるので、もっと効率良く、楽に走ることが大事です。一本のダッシュでガソリンをたくさん使ってしまうと、戻る時がきつくなります。楽に走れると、使うガソリンの量も減るので、燃費のいい車になるんです。

レッズの(トップチームの)選手は、同じ指導で90分間持つようになったとか、怪我が減ったり、「楽に走っているのに速くなった」という選手もいて、実際にスプリント回数や最高速度にも表れてきています。女子選手にもそういう効果を期待したいですね。

ーー普段から続けることが必要ですか?

習慣化させることが大切です。僕自身、フォームが崩れて(ハードル競技で)3年間記録が出ない時があったのですが、原因を辿るとフォームの乱れでした。それで、技術的なところを一からコツコツ直していったんです。同じ練習を毎日やって半年以上かかったのですが、ある時から走りの感覚が大きく変わったんです。身につくまでが時間がかかるので、どれだけ我慢できるか辛抱が必要ですね。

石原孝尚監督

ーー開幕に向けて、スプリントトレーニングの他にどのような取り組みを考えていらっしゃいますか?

モビリティ、スタビリゼーション、コーディネーションと、男子のトップチームが週明けにやっているメニューをスタッフが勉強しに行って、女子でも始めています。持久系のメニューを週明けにやって、週の後半にはサーキット的なスピードトレーニングとステップワークなどを入れています。今回、秋本さんには選手の状況を見て、柔軟にトレーニングを進めてもらっています。講習会をやった後はすぐに変化がありますが、定着させることが難しいので、日々の取り組みの中で意識してもらいたいですね。

宇賀神(友弥)選手や槙野(智章)選手など、男子の選手も教えている方なので、慣れていて分かりやすいですね。

MF 長野風花

ーー2回目の講習会でしたけれど、走りの変化は感じますか?

初回の後はふくらはぎとか、下腹部が筋肉痛になりました。使うべき筋肉をしっかり使えていなかったんだなと思います。スプリントトレーニングは新しいことだらけで、いかに今までの自分のフォームがちゃんとしていなかったかが分かりました。身につけるための積み重ねが大事ですが、一度身につけられれば、少しでも他の選手と差がつくと思うので、1日1日をしっかり意識してやっていきたいと思います。

ーーボランチというポジションで、どのようなポイントが活かせそうですか?

ボランチは、相手のドリブルについていく時の、体の外側の体重移動が必要になってくるので、すぐに足を切り替える動きは活かせると感じました。

ーー他に、自主的に取り組んでいることはありますか?

代表で食事や栄養の講義を受けることはあったのですが、チームでは初めてなので、今まで当たり前のことができていなかったなと感じました。最近は毎食を意識するようにしています。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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