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初戦はスペイン相手に苦戦。敗戦から得た教訓と課題(2)

松原渓スポーツジャーナリスト
スペイン戦に臨んだなでしこジャパン(C)松原渓

ポルトガルで行われているアルガルベカップに出場しているなでしこジャパンは、1日、初戦でスペインと対戦し、1-2と敗れた。

成長著しいスペインとの対戦で、A代表デビューの選手もいる中、選手たちが得たものとは?

初戦はスペイン相手に苦戦。敗戦から得た教訓と課題(1)

以下、初戦・スペイン戦後の監督・選手コメント。

【監督・選手コメント】

高倉麻子監督

ーースペイン戦の試合の感想をお願い致します。

残念な結果になってしまいました。スペインがマンツーマン気味に、球際で相当、強く来ることは予想していたのですが、跳ね返せないまま、前半はディフェンスも後手を踏んでしまいました。ハーフタイムに選手とシステムを変えた中でゲームが落ち着いた部分もあったのですが、自分たちの良さである、ボールを動かすことについては、シンプルなサポートの質と運動量を含めて、ぼやけた試合になってしまったと思います。失点のシーンは、スローインと、集中力が一瞬切れたところでやられたな、と。まだまだ、勝負に対する甘さを感じました。

ーー球際については、今後に向けてどのようなことを修正したいですか?

球際でも負けているシーンが多かったですね。球際の強さについてはずっと課題にしています。もっと相手とぶつからないサッカーを追求していますが、今日は、とにかくボールが動かなかったです。サポートが遅く、ボールをもらうのを怖がっている部分もあって、すべて、悪いところが出てしまいました。

ーーなでしこジャパンで初出場した長谷川(唯)選手と北川(ひかる)選手の評価を教えていただけますか?

北川はポテンシャルの高い選手ですし、左利きで対人にも強いので思い切って起用しました。本人は緊張していたかもしれないですが、及第点です。まだまだ、自分自身で主導権を取って判断を下して行くところでは迷っている部分があるので、もっとできると思います。長谷川は、後半に入って、いい形でボールを受けて前線に繋ぐプレーで流れが変わりましたし、戦術眼の高い選手だと改めて感じました。2人に関しては、それなりに期待に応えてくれたと思います。

ーー中1日で、アイスランドとの試合です。どのような点を意識して臨みますか?

新しいチームで手探りのことも多いので、この負けで下を向く必要はないですし、できたこととできなかったことをしっかり分析して消化して、反省点をプラスに変えて行くことに全力で取り組んで、一つひとつ、ブロックを重ねて行く作業だと思っています。(負けたことは)非常に悔しいですが、課題が出るというのは成長できることでもあるので。しっかり次の試合に向けてコンディションを作っていこうと思います。

FW 横山久美

ーーー今日の試合を振り返って、ご自身のプレーはいかがでしたか?

ルーさん(宇津木瑠美)からコーナーキックから縦パスが入った場面は決めたかったのですが、ファーに決めるかニアに決めるかの判断が遅くなってしまって、正面に蹴ってしまったのが悔しかったです。オフサイドに引っかかって決定機を逃してしまったところも修正したいです。

ーー1点を取れたことについては?

0-2で終わるよりは収穫があるかな、と思います。(途中からピッチに)入って足元で受けた時に、ボールを収められている手応えがあったので、もう少し前にボールを入れることができたら、キープしたり、前を向いたりということができたのではないかな、と。

ーー日本のパスワークの良さを出すためには、何が足りなかったと思いますか?

前でボールを受けた時に、人は足りているのに、周りの選手がみんな(裏に)抜けて行ってしまっていました。足元で受ける人と裏で受ける人のバランスを修正したいです。パスの距離も少し遠かったですし、バランスが悪かったですね。

MF 長谷川唯

ーーA代表のデビュー戦はいかがでしたか?

緊張もせず、いつもどおり、リラックスして試合に入れました。守備では自分の良いところを出せたと思いますが、攻撃では、まだまだやりたいことがあります。

ーー前半は、(ベンチで)どのように試合を見ていましたか?

前半は相手とこちらのフォーメーションの形のズレもあったのですが、あまり守備がはまっていなくて、相手のサイドハーフをケアできていなかったので、そこを修正しようと思って入りました。その点は、後半、左サイドからやられないようにできたので良かったです。

ーー中盤で連携して崩した場面もありました。攻撃面の手応えはいかがですか?

田中(美南)選手のスルーパスから、一本、裏へのスルーパスを出せた場面があったのですが、試合の中で、「スルー!」と声をかけて合わせられましたし、普段から(日テレ・ベレーザで)一緒にプレーしていることで活かせた部分もあります。奪った後のボールや、センターバックからのボールを間で受けられそうな場面が何回かあったのですが、タイミングが合わなかったので、次はもっとボールを受けてチャンスメイクできたらいいなと思っています。

ーーアシストの場面を振り返っていただけますか?

あのタイミングは、(横山)久美さんしか見えていなかったのですが、うまく相手の裏をとることができて、タイミングが合って良かったです。

ーー国内でプレーすることや、U-20代表との違いをどのようなところで感じましたか?

スペインはパススピードが速く、近い距離でも良いパスを出して、良いトラップをしていました。スペインは技術的に高いと感じましたね。スピードは、U-20の時と変わらないと感じました。スピードの部分で対応できると感じられたことは、次に活かしていきたいです。

DF 北川ひかる

ーーA代表のデビュー戦を終えて、感想を教えてください。

試合が始まる前まではすごく緊張していたのですが、始まってからは緊張することなく、(歳)上の人たちも声をかけてくれて、自分らしさを出せたと思います。(スペインは、アンダー)20で対戦した時より、3人目の動きや、ビルドアップが上手いと感じました。

ーー手応えを感じた部分を教えていただけますか?

1対1の守備は、自分の中では手応えがありましたが、特に前半、相手をはめることができなかったのは課題ですね。自分が(指示の)声を出せなかったので、そこは修正して、チームとしてしっかりとした守備ができるようになりたいです。ビルドアップの面では、落ち着いてプレーできました。

ーーピッチの中では、迷いはありませんでしたか?

守備ではかなり迷ってしまいました。自分が考えていることと、周りの選手が考えていることが一致しなかった場面もあったので、話し合いながら変えていきたいです。攻撃参加する時は、もっと高い位置を取りたかったのですが、まだ戸惑ってしまうところがありました。

ーーボールに対する間合いは、最初から強く行けましたか?

相手のスピード感がわからなかったので、最初は強く行けなかったのですが、3回目ぐらいからは強く行って、相手に自由を与えないようにできたと思います。サイドで誰が行くのか、自分が行くのか、ということがはっきりしなくて、連携がうまく行かずにボールが取れなかった部分もあるので、映像を見てしっかり修正したいと思います。

MF 宇津木瑠美

ーー試合を振り返って、どのような収穫がありましたか?

何もできなくても、なんとかゼロで抑えられる試合が過去にありました。そういう意味でも、一人ひとりの耐える力は、まだまだ必要なのかな、と感じました。スコア的に見たら負けですし、内容的に見ても勝てる内容ではなかったのですが、収穫できたこともあったと、ポジティブに捉えたいです。

ーー女子サッカー全体のレベルが上がっている中で、スペインチームについて、どのように感じましたか?

女子サッカーが発展する上で、メディアに(取材)対応することや、映像などの情報が増えれば増えるほど、スペインも含めて、今までスポットが当たらなかった国の選手たちが成長できる可能性が高まると思います。日本はそういう環境が整うのが早かっただけで、実際の成長の速度は変わらないのかな、と感じるんです。そういう意味では、これからは多くの情報の中で、何をチョイスして実行するか、ということが、今の自分たちには求められていると思います。自分たちにとって何が大切なのかを判断して、決断する責任感を持たないと、スペインや、他のチームには勝てないと強く感じています。

ーーチームの完成度を高めるために、2020年までの4年間をどのようにイメージしていますか?

このチームで、高倉監督の下でサッカーをした期間が一番少ないのは、私を含め、今、チームでベテラン(と言われる年齢)の選手たちです。そのことについては、『私たちで良かったな』と思っているんです。たとえば、ベテランが長く高倉監督のサッカーをしてきた中で、若い選手たちが後から来て、4年間でこちらにフィットする方が難しいと思います。そういう意味で、私たちはいい意味でのプレッシャーをすごく感じていて、だからできることもあります。ノリさん(佐々木則夫前監督)の(下でチームを作るためにかけた)10年間をこれからの4年間で、ということではなく、これまでの(10年間の)経験を反映させながら、ここからの4年間をより進化させていくと考えれば、短い期間だとは思いません。その分、国際試合を増やさなければいけないとは思います。海外組が参加できる試合は少ないのですが、小さな大会や試合でも参加できる機会を増やしていきたいですね。常にリアリティを持って試合をするということが、大切だと思います。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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