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アイスランドに完勝。待望の初勝利で新たな一歩を踏み出したなでしこジャパン(2)

松原渓スポーツジャーナリスト
初戦から先発メンバー7人を入れ替えて臨んだ(C)松原渓

ポルトガルで行われているアルガルベカップに出場しているなでしこジャパンは、グループリーグ第2戦でアイスランド女子代表と対戦し、2-0で勝利した。

アイスランドに完勝。待望の初勝利で新たな一歩を踏み出したなでしこジャパン(1)

以下、グループリーグ第2戦・アイスランド戦後の監督・選手コメント。

【監督・選手コメント】

高倉麻子監督

ーー新体制での初勝利ですが、いかがですか?

新しいチームで、(最初は)なかなかうまくいかないと分かっていても、一つ、勝たないと落ち着けない部分はありました。1試合1試合、選手たちは真剣に課題に取り組んでくれていますし、若い選手とベテランがそれぞれ、持っているものを融合する途中の段階です。私自身がやりたいサッカーを、まだ選手に落としきれていない部分もある中で、選手たちは迷うこともあると思いますが、とにかく明るく前向きにチャレンジしてくれています。その中で勝つことができたので、非常に嬉しいです。その反面、課題が多く、まだまだやれることがたくさんあると思います。自分たちの良さである、パスを全員でつなぎながらゴールを目指す形はできつつありますが、特にゴール前のアイデアやコンビネーションのところでは物足りなさを感じました。

ーースペイン戦から修正できたところと、もの足りないと感じたところを教えていただけますか?

意識の上で、(相手のプレッシャーに対する)準備をもっと早くしようと伝えていました。プレッシャーの速さがスペイン戦とは違いましたけれど、動き直しなどについては、この間の試合よりは良くなったと思います。ただ、パスの質とか、前を向ければビッグチャンスを迎える場面で後ろ向きにボールを受けてしまうとか、パスのスピードが弱かったり、次のプレーにつながらないタイミングの悪いパスを出してしまうシーンがありました。プレーの流れや連動性についても物足りなかったですし、ゴール前でも、結局、(プレーやボールを)止めてから考えてシュートを打つ流れがほとんどでした。それでは絶対に点が入らないので、取り組む姿勢は評価しますが、質という部分ではまったく満足していません。

ーー2ゴールを決めた長谷川選手の評価をお願いします。

長谷川は、U-17の大会を含めて長く見てきている選手ですけれども、非常によく(周囲の)状況を見ていますし、1点目のゴールは完全に、個人の戦術で取った得点だと思います。足を止めずに、ボールによく絡んで、得点以外のところでも活躍していたと思います。そうすると自然にボールが集まってくるというところもあって、本人は気持ちよくプレーしていたのではないでしょうか。得点が取れない時期もあったのですが、(今回の遠征中は)練習からなんとなくシュートが決まっていたので、今、すごく勘が冴えているのかなと思います。

ーー初の無失点勝利になりました。守備についてはいかがですか?

無失点で終えることはとても大切なことです。試合を重ねておらず、組み合わせも替えている中で、連動した守備をすることについては難しい部分があると思います。その中で、自分たちで映像を見て、こういう場合は行ったほうが良いとか、マークを変わったほうが良い、など、自分たちで話をして作り上げてくれています。球際でもゴール前でも、集中してやれていたと思います。

ーー2試合を終えて、多くのメンバーを起用する中で、3試合目と順位決定戦は、現状のベストメンバーで臨むのでしょうか?

コンディションも含めて、それぞれの選手が何をグラウンドで表現できるか、ということは見えてきましたけれども、元々、持っている能力を出し切れていない選手もいますし、使っていく中で成長する選手もいます。いろんなことを決めつけずに、交代選手も含めてトータルでゲームに勝てるような並べ方をしたいと考えています。

MF 長谷川唯

ーー1点目のゴールを振り返っていただけますか?

普段から、遠目のシュートは狙って練習しています。あの位置で、あのタイミングで打ったらキーパーは大体、前に出ていることが多いので、(GKの頭の)上を越して入るイメージで打ちました。前を向いたらタイミングで打つことは普段から心がけているので、形になって良かったです。

ーーキーパーの位置を見て打ったのですか?

あの(シュートの)場面は、見えていませんでした。もうちょっと(打つ位置が)前だと、キーパーは下がっているのですが、あの位置だったら大体、前に出ているので。ハーフウェーラインのちょっと前あたりではシュートを狙うことを心がけています。今大会のうちに1点は取りたいと思っていたので、嬉しいです。

ーー2点目についてはいかがですか?

(宇津木)瑠美さんがミドルシュートを打つ時に、こぼれ球を(横山)久美さんが右を狙って、自分が左を狙っていたんですけれど、キーパーが右に弾いたところで、久美さんが中を見て速いボールをくれたので、当てるだけでした。

ーースタメンで出ることについて、どのように受け止めましたか?

本当は初戦(のスペイン戦)でスタメンで出たいと思っていて、練習でもアピールしていたのですが、(出られなくて、)後半から出られそうな感じがあったので、出たら思い切ってプレーしようと思っていました。普段から(所属する日テレ・)ベレーザの先輩たちとはあまり遠慮せずに話ができているので、そういう部分をなでしこ(ジャパン)でも出せているのはいいことだと思います。

ーーボールに絡むプレーが多かったですが、ご自身の評価はいかがですか?

ボールに絡まないと自分の良さは出ないと思うので、左サイドにボールが来なかったら中に入って絡んでいこう、と。前半は右サイドまで行ってボールに絡むことができたのですが、後半はあまりいい形でボールが受けられなかったので、90分間を通じて継続することが課題です。

ーー監督の指示を受けた動きだったのでしょうか?

結構、自由にやらせてもらっていて、自分の判断でプレーできています。左サイドバックが(U-20でも一緒にプレーした北川)ひかるで、やりやすさもありましたし、(育成年代から指導を受けてきた)高倉監督だからこそ許してもらえる動きもあります。あんなに自由にやっていたら、監督によっては難しいこともあると思いますから、その点では活かせてもらえているのかな、と思います。

DF 中村楓

ーー代表デビュー戦を終えて、いかがですか?

無失点で勝てたことは、次に活かせる部分だと思います。緊張はしなかったです。もともと緊張するタイプではないので、自分のプレーを出せたと思います。

ーーパワーのある相手に、どのように対応しようと考えていましたか?

普段、日本のチーム(アルビレックス新潟レディース)だとカバーリングをすることが多いのですが、今日は相手の足元に入ったボールは特に強くいくことを徹底的にやろうと決めていました。

ーー熊谷選手とセンターバックを組むのは初めてですが、いかがでしたか?

やってほしいことをはっきり伝えてくれるので、すごくやりやすかったです。ラインコントロールの部分で、周りからサポートの声のおかげでやれていたので、自分もそういう指示ができるように心がけたいと思います。

ーー自分の良さを、このチームでどのように出していこうと考えていますか?

自分の強みである1対1の守備とカバーリングをしっかり出していくことと、チームでやることを明確に理解した上でプレーに出すことが大事だと思っています。またチャンスをもらえるように、しっかりプレーしたいと思います。

ーー代表のユニフォームを着てピッチに立って、どんな実感がありますか?

自分のプレーをしっかりしようということを考えていたので、今は試合を終えたという感覚しかないですね。帰ってから家族や周りの方に声をかけられて初めて実感するんだろうな、と思います。

DF 川村優理

ーー宇津木選手とのコンビネーションで、どんなことを意識しましたか?

(宇津木)瑠美と話していたのは、スペイン戦では相手の勢いに飲み込まれてしまって、自分たちは失うものはないし、やられるなら、(自分たちのできることを)やり切ってやられた方が改善もできるし、とにかく出し切って終わろう、と話をしていました。

ーーやりやすさはありましたか?

そうですね。選手同士の距離感も近かったのでやりやすかったです。 個人的には、相手を引きつけて、食いついたところで縦パスを入れるとか、相手が寄ってきたところで逆サイドにチェンジすることを意識していました。

ーースペイン戦と比べて、距離感がよくなった理由はなんでしょうか?

FWの追い方が良くて、そこで限定してくれたので、ボランチやサイドハーフでもう少し寄せたり、センターバックが(相手)FWを潰しやすくなったと思います。

ーーフリーでボールを受ける場面も多かったですが、受ける前の準備に関してはどのようなことを意識していましたか?

相手が引いていたことでフリーで受けられた場面もあったのですが、そこからどう展開するかというところや、どうやって縦パスを入れるか、というところをもう少し工夫できれば良かったなと思います。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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