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6位でアルガルベカップを終了したなでしこジャパンの収穫と課題(2)

松原渓スポーツジャーナリスト
スペインの初優勝で幕を閉じた(C)

ポルトガルで行われているアルガルベカップに出場したなでしこジャパンは、順位を決定する5位/6位決定戦でオランダに2-3で敗れ、2勝2敗の6位で大会を終えた。

6位でアルガルベカップを終了したなでしこジャパンの収穫と課題(1)

以下、試合後の監督・選手コメント。

【監督・選手コメント】

高倉麻子監督

ーー結果を受けて、感想をお願いします。

5/6位決定戦ということで、悔しい思いを持ちながらも全員で、全力で勝ちに行こうという強い気持ちを持ってゲームに入りましたが、オランダの得意とするサイド攻撃とセットプレーから失点してしまい、ケアしていたところでやられたのは非常に残念です。そのあと2点返したところは、攻撃に対する選手の気持ちの表れと、日本の良さである、ボールを動かすところができていたと思います。ただ、相手が10人になってからはこちらがずっとボールを保持している状態で、またしても決まり切ったカウンターの形でやられてしまい、恥ずかしいゲームになってしまいました。

4試合を通じて1試合ごとに、選手をなるべくたくさん使いながら勝ちに行くという目標を持って、2週間過ごしてきましたが、結果的には2勝2敗という、とても残念な結果です。1対1の対応を含めて、勝負どころでボールを相手に渡してしまったり、奪いきれないところに甘さがありますし、日本がボールを回せても、技術的なアドバンテージを活かせず、足先だけのうまさになってしまったと感じています。私自身、この2週間は対戦相手によっていろんな課題を選手に出したり、選手といろいろな話をしましたけれども、(大会を終えて)攻守ともにやらなければいけないことが多いと感じました。非常に悔しい敗戦ですし、這い上がっていかなければいけないと感じています。

ーー失点の場面を振り返っていただけますか?

右サイドの7番の選手がスピードがあることは分かっていました。(裏のスペースに)蹴られるタイミングが分かっていても、止められない速さでしたけれども、そこで行かれてしまうのであれば、中を閉じてしまえば良いので、その点はゲームの中で修正していました。4試合とも、失点シーンは自分たちの集中力が欠けるところが目立ちました。まだまだ、勝負に対しての勝ち方、勝負どころに対する危機感が足りないと感じます。

ーー守備についての評価はいかがですか?

狙っていて、前から取りにいけるのであれば、積極的に行こう、と話していました。その点はトライしてくれたと思いますが、そこで(プレッシャーを外されて)行かれる場面もあったので、その辺は状況判断(を良くしなければならないところ)です。

選手同士の(守備の)距離感に関しては、(マークを)掴みにくい選手も掴みながら、良い関わりができていたと思います。ただ、最後にああいう形で失点してしまうところが、今のチームのすべてです。

ーー判断の部分を強化していくために、各チームに戻る選手たちに何を求めたいですか?

状況判断というのは、相手の状況、相手の強さ、自分たちのコンディションも含めたすべての要素を頭の中に入れながら、瞬間、瞬間で自分の体を動かしていくことです。ゼロコンマ数秒で隙を突かれることがありますし、逆に相手の隙をつくこともあります。日本だと、ある程度のスピードを持ってやれば通じてしまうので、その中でもより速く、より正確な判断が必要です。日々の練習で、プレーの精度を上げていくことを求めたいです。

ーー選手に多くの出場機会を与えた中で、今大会の収穫はどのようなことですか?

自分自身のプレーを、選手一人ひとりが真摯に受け止めて考えてくれていると思いますし、悔しい思いを(日本に)持ち帰って継続できるかどうかが大切です。私自身もそうですが、試合に負けたことをチームや他人のせいにするのではなく、自分がレベルアップすることによって、その壁を乗り越えていくことに、みんなでトライしていかなければいけません。若い選手が経験を積めたことは確かだと思いますし、スピード感とか国を背負う責任感を持ちながら、負けてしまった現実を受け止めて、今後、伸びてくれれば、この大会は無駄ではなかったと言えると思います。

DF 中村楓

ーー今日の試合の感想をお願いします。

(出場したのは)3試合目だったのですが、一番出来が悪いゲームになってしまいました。失点の場面は、最初の段階でもっと大きくクリアしても良かったと思います。ああいうところで勝ち切らないと、こういう相手にはちょっとした隙で失点してしまうので、はっきりとしたプレーで、あのような場面を作らないようにしたいです。

ーー今までの3試合と比べて、オランダの選手との間合いの取り方は難しかったですか?

個人的には(第3戦の)ノルウェーに近いかな、と感じたのですが、ノルウェーよりも組織的な印象がありましたし、スピードも右サイドの選手がとても速くて、その対応には課題が残りました。

ーー1対1の感覚は、試合を重ねる中で変わってきましたか?

最初は対応に迷う部分もあったのですが、慣れてきた中で、いくべきところで、しっかり強く当たりにいくことができるようになりました。

ーーこの悔しさをどのような形で晴らしたいですか?

2試合目、3試合目と無失点でこられたのですが、今日の試合で3失点もしてしまいました。少しずつ自信がついて、自分のプレーが出せるようになったところでこのような試合になってしまったので、反省しています。またチャンスをもらえるように、自分のチーム(アルビレックス新潟レディース)でしっかり取り組んでいこうと思います。

FW 籾木結花

ーー今大会を振り返って、どのような収穫がありましたか?

2戦目は自分たちが(2-0で)勝っている中で(65分から出場して)、チームとしては攻め急がないという判断もありましたが、自分としてはアピールをしたいという気持ちもあり、そのバランスの難しさを感じました。この大会で自分がやりたかったことはゴールを奪うことですが、その前に足を振れていなかったことが悔しいです。

ーーチームに戻って、どのようなことに特に取り組みたいですか?

(GKの山根)恵里奈さんと2人でシュート練習をしている時に、自分の中でドリブルシュートがまだまだだな、と感じました。パスを受けてのシュートやダイレクトシュートなどは、(自分が)持っている形なのですが、ドリブルシュートは、スピードが上がっている中でのボールタッチの質や最後のシュートを打つ前のプレーの質が足りなくて、シュートが枠に届かなかったので、これからは意識してやりたいです。

ーー相手が10人になった時の攻め方は、いかがでしたか?

相手がゴール前にギュッと固まってブロックを作っていたので、(相手が)1人少ないとはいえ、真ん中を崩していくことは難しかったですね。(日本は)攻撃に人数をかけている中で、(ボールの)奪われ方が悪かったです。後ろの人数は足りていましたが、奪われ方が悪く、同じ数でもスピードで剥がされてしまう。(あの時間帯は)自分たちの攻撃をシュートで終わらせることが大切だったと思います。

ーーこの大会で、横山選手とコンビを組むことが多かったですが、コンビネーションの手応えはいかがでしたか?

どの選手とも、初めて組んだ時は合わないことがありますが、(横山)久美さんとはノルウェー戦で、前半の内容をハーフタイムで話し合って、距離感を近くしようと修正して後半に臨んで、後半は2人でパスをつないでシュートまでいけました。コミュニケーションをとって改善しながら(コンビネーションも)良くなりました。自分はどちらかというとストライカータイプではなく、ストライカーの選手に合わせてゴールを引き出すプレーが多いので、久美さんやたなぴー(田中美南)をしっかり見てプレーしたいです。もちろん、決められるところは自分でもしっかり決めたいです。

FW 田中美南

ーー大会を振り返って、どのような課題が見つかりましたか?

外国の選手は一歩の寄せの速さやリーチの長さがあるので、日本でそれを(日頃から)意識してプレーするのは難しいのですが、日本で圧倒的に体も張れて、裏への飛び出しも圧倒的に取れる選手になれば外国人選手相手にも通用すると思うので、日本で徹底的に取り組みたいですね。

ーー今大会を通じて、通用したと感じた部分はどのようなところですか?

ボールを奪われる場面もあったのですが、自分の欲しいタイミングでボールが引き出せるようになったり、要求ができるようになりました。裏をとるタイミングや起点となる部分でも、以前よりは手応えを感じることができました。なでしこジャパンに呼ばれる中で継続してきたことは間違いではなかったと、あらためて感じることができました。今後は体の強さや、裏へのタイミングや一瞬のスピードのレベルを上げて、決めるところでしっかり決められる選手になりたいです。

ーーゴールが決められなかった悔しさを、どのようにリーグに活かして行きたいですか?

決めるところで決められなかったら、こうやって負けてしまうし、フィニッシュのところはFWの仕事です。それは永遠の課題ですが、日本に持ち帰ってシュート練習を増やしたり、リーグでもしっかり決めきることを目標に続けていくつもりです。

MF 阪口夢穂

ーー試合を振り返って、いかがですか?

スペインに比べて相手のプレッシャーもそこまで感じなかったのですが、自分たちのミスが多かったですね。3人目の動きを入れたいけれど、次を見据えたパスではなく、取られたくないから横に出してしまう感じで、攻撃のテンポがすべて一緒になってしまいました。すべてが勝負パスではなく、緩いパスとか短いパスを入れながら相手を引き出して、メリハリをつけて崩すことができませんでした。

ーー攻撃と守備では、どちらの課題が多かったですか?

どちらもですが、守備は奪われ方が悪かったです。攻撃は出る選手によっても変わってくると思うのですが、守備はやることが一緒なので、もっと合わせていかなければいけないと思います。

ーー初戦に比べて修正できたことはどのようなことですか?

ボールを受けたくないという感じは減りましたね。受けるために、(周囲の選手が)寄ってくれるようになりました。一度、前に上がって(攻撃参加をして)みたのですが、ボールが出てくるタイミングがなく、今日は(パスの)出し手の(役割の)日だな、と。10人になった時に、(宇津木)瑠美とフリーでパス交換できていたのですが、相手を動かせていませんでした。ただ、自分が(ボールを)持っているのもテンポが悪くなってしまうので、難しかったですね。

ーー4試合を終えて、どのようなことを改善していきたいですか?

悪いところは全部、出たと思います。特に、勝負弱さですね。同じことを繰り返さないようにしたいです。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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