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なでしこリーグ2017開幕直前。2013年以来のタイトル獲得を目指すINAC神戸レオネッサ(2)

松原渓スポーツジャーナリスト
昨年の皇后杯決勝では途中出場で流れを変えた杉田妃和(写真:アフロスポーツ)

なでしこリーグ1部開幕を26日に控え、今回は4年ぶりのリーグタイトル奪還を目指すINAC神戸レオネッサ(以下:INAC)の2017年シーズンを展望する。

なでしこリーグ2017開幕直前。2013年以来のタイトル獲得を目指すINAC神戸レオネッサ(1)

以下、開幕戦前の監督・選手コメント。

監督・選手コメント

松田岳夫監督

ーー今シーズンは、昨シーズンから、どのような点で上積みをしたいと考えていますか?

去年よりもボールを支配して、ゴールまでの道をより多く作りたいですね。失点はできる限りゼロに近づけたいですが、まずはシュートを増やしたいです。

ーーなでしこリーグでは唯一、昼間からサッカーができる環境(※)ですが、練習量はどのように調整していますか?

2部練習を週に3回、行っています。1回は全員で行っていて、残りの2回はコンディションも整えるために若手選手中心にしているのですが、参加したいという選手が多いので、週に2回はほぼ全員で2部練習をしています。

(※)INACは選手をグループ企業で雇用しながら、社業としてサッカーをするようにしているため、サッカーだけに集中できる環境がある。

ーー日本全体の女子サッカーのレベルを上げるために、クラブレベルで意識していることはありますか?

まずは、サッカーが好きになること、サッカーを知ることですね。選手たちにいつも話をしていますけれども、実はサッカーが好き、知っていると思っている選手たちも、もっと上があることをまだ知らない。サッカーは奥深く、僕自身、まだわからないことがたくさんあります。そういう部分をまず選手に知ってもらうこと。知ってもらう中で、(選手が)自分の良さを出せるように意識しています。

ーーチームを指導して3年目ですが、その手応えは得られるようになったのではないですか?

サッカーを楽しめていると思うのは、まだ何人かですよ。サッカーは奥が深く、もっと楽しいことがたくさんあることに気づいていない。性格的なものもあるけど、声を出して笑うだけが楽しさではなくて、色々なプレーができた時の喜びとか、点を取って単純に嬉しいとか、そういうものをストレートに出してくれればいいな、と。意外と静かにやる選手が多いでしょう?僕が最初にここに来た時は、そんな選手ばかりだったんです。でも、澤(穂希)とか、大野(忍)とか、年上の選手たちに元気があって、年下の選手を引っ張って来たのが1年目でした。それが2年目になって、若い選手たちが少し元気になって来た。それが3年目になると、また元気だった選手たちが大人しくなって来ているようにも感じています。

ーー二部練習ではどのような練習をしているのでしょうか。

二部練習の時は、午前中はコートを大きく使って、紅白戦もやります。午後の練習は駆け引きを重視しています。味方とのコンビネーションで相手をだましたり、個人の判断(の質やスピード)も要求されて、相手との駆け引きも要求されるようなメニューを取り入れています。

ーー特に、今シーズンに期待する選手はいますか?

全員ですね。例えば、昨年の(杉田)妃和とか(守屋)都弥など、いろんな経験をしてグッと伸びた選手もいますし、誰が伸びてくるかは(指導する中で)楽しみの一つです。若い選手は、まだまだ持っている力を出しきれていないと感じています。試合で、遠慮や緊張など、いろんなプレッシャーの中で出せてこそ、本物の力です。練習でのびのびできても、そういったプレッシャーの中でやれるだけのものはまだ、持っていないということでしょうね。そのために、できるだけ試合に近いプレッシャーの中でトレーニングをすることを心がけています。

ーー開幕に向けたメンバー選考については、いかがですか?

新しく加入した選手たちがまだ自分の力を出せていないので、これまでの選手がメインになっていくと思いますが、毎日が競争ですね。メンバーを入れ替えながらやっていきたいし、チャンスは与えたいです。でも、誰にでもチャンスが平等にくるものではないことも、みんなに伝えてあります。

ーー開幕戦はノジマステラ神奈川相模原との対戦です。

相手がどのようなサッカーをしてくるか、詳しくは分からないのですが、間違いなく、チャレンジャーとして向かってくると思います。でも、うちはチャンピオンではないし、チャレンジャーの気持ちを持たないと、食われてしまうかもしれない。開幕戦は難しくて、いいプレーをしようとイメージしすぎると、変にタッチ数が多くなったり、いつものプレーができなくなることがあります。トレーニングで身につけたもので、自然と体が動くのが本当の力だと思うので、本能でプレーしてほしいと思います。

MF 杉田妃和

ーー新加入選手も入った中で、チームの雰囲気はいかがですか?

紅白戦でも、球際など一つひとつのプレーで「奪いたい」「奪われない」という意識が高く、競争力が高まっていると感じます。

ーー今シーズン、特に伸ばしたいと考えているのはどのようなところですか?

今までは上の選手に引っ張られてプレーしている部分が多かったのですが、今シーズンは、もっと周囲の選手を活かして上手にゲームを作ったり、流れの中で違いを作りたいです。昨シーズンよりは得点に絡みたいですし、昨シーズン試合に(コンスタントに)出て経験したことを、しっかり今シーズンに活かしたいですね。

ーーディフェンスラインの連携面の手応えはいかがですか?

韓国のクラブから加入した2人については、言葉の問題もあって、今はすぐに伝わらない部分もあるのですが、だからこそ、早めに指示をすることや、予測を早くしています。機転を利かせて周りの選手が動けている部分もあるので、その点では良い準備ができるようになっています。連携面では、ゲームの中でもいろんな選手が関わって、(ボールの)出しどころが増えたり、プレーのしやすさも感じています。

ーー今シーズンの具体的な目標を教えてもらえますか?

リーグ優勝が(2013年以来)ずっとできていないですし、去年は自分が試合に出ていた中で優勝できなかったのですごく悔しいです。今年こそは、チームとしてタイトルが獲れるように頑張ります。

個人としては、自分のプレーの良い、悪いだけでなく、周りの選手の特長を活かすために、試合を全体的に見られるような視野と余裕を持ってプレーしたいと思います。

DF 田中明日菜

ーー昨年に比べると、DFラインは再構築しなければならない部分もあると思いますが、連携面の手応えはいかがですか?

言葉の面の難しさがありますが、ボールサイドに寄せることや、(自分が)寄せられない場合はカバーリングをすることなどは徹底していますし、味方同士の距離感もすごく気にしています。

練習試合の中でたくさん反省が出たので、それらを直せるように取り組んでいたのですが、やらなければいけないことが多すぎて、考えすぎてもうまくいかないな、と難しさを感じています。

ーー特に難しさを感じているのは、どんな部分ですか?

なかなか、相手の足元に(ボールにアプローチするために)寄せられない部分ですね。(前線から最終ラインまでが)間延びしていたり、(相手の)ボール保持者がフリーだったり、原因はいろいろありますが、そういう中で、センターバックが後ろから(ラインを上げて)前線の選手を押し出すことで、ファーストディフェンダーを決めていかなければいけない場合もあります。そういう中で「全部やらなきゃ」と考えすぎて逆に中途半端になっていたので、全部はできへん、割りきらなあかんな、と。今は、練習試合の時よりは良くなってきました。

ーー新しい選手たちとのコミュニケーションはいかがですか?

卒業式などの行事でいなかった時期もあったので、まだ、8人全員とは十分に話せていないのですが、チームに馴染んできた感じがします。一緒にプレーしていて、まだ掴みきれへん部分もあるので、そこはこれからですね。

ーー今シーズン、個人的にどのようなことをテーマにしていますか?

ディフェンスラインを統率したいですね。良いセンターバックって、ドン、と構えるオーラがあるじゃないですか。そのオーラが欲しいのですが…たどり着けないんです(笑)。それはずっと目標にしています。「このセンターバックがいるから守りきれる」という安心感を与えられるようなオーラのある選手になりたいです。もちろん、ペアのコンビネーションも大事なのですが、一人でもそういう存在感が出せたらいいと思いますし、安心して前の選手が攻撃に上がっていけるような存在になれれば、最高ですね。

DF 鮫島彩

ーー昨シーズンからメンバー構成が変わった中で、最終ラインの連携面はいかがですか?

まだ粗い部分はありますね。紅白戦でも(主力組の)失点が多いですし、去年に比べると、最終ラインの4人の繋がりが、GKも含めてまだまだ薄いと感じています。

ーー改善するためにどのようなことに取り組んでいますか?

局面、局面で出た課題をその都度、解決していくことですね。たとえば失点シーンを話し合って、決まりごとをある程度、作っています。(チェ・)イェスルも、(まだ日本語に慣れていないので)言えばすぐに伝わるというわけではなく、修正が難しい場面も多いので、「こういう時はこうしよう」と、ある程度の決まりごとを作っています。

ーー攻撃面ではどのようなことを意識していますか?

縦のラインでペアを組む選手の動きのクセをつかむことが大切ですね。サイドバックとサイドハーフの縦の繋がりがあってこそ、中(のスペース)が使える、と、松田さんからも言われていますし、練習試合でもそういう縦の関係がまだ少ないと感じています。

ーー新しい選手とコンビネーションを築く時に、どのようなことを意識していますか?

まずは、お互いに自分のプレーの特長を伝えることですね。動きではっきり示して、その中で合わないことがあれば、話し合って合わせていく。最初から相手のプレーに完全に合わせようと思うと、逆にうまくいかなくなることが多いですね。

ーー昨年はサイドバックが起点になる攻撃も多かったですが、今年はどのようなイメージですか?

ハマる(ピンチになる)時も、そこ(サイドバックが上がった時)が多かったと思います。悪い時はディフェンスラインが重かったり、ビルドアップのところから詰まってしまうことが多いですね。(ボールを持った時に)もっと早く開くとか、そういう動きは代表でも言われていることですし、もっと入れていきたいと思います。

ベレーザの籾ちゃん(籾木結花)とか(長谷川)唯ちゃんは、常に動いていますよね。動き直しがすごく細かくて、「だから(マークが)掴みにくいんだな」と、(代表で一緒にプレーして)感じました。動き直しがあると、パスを出す時も出しやすい。その点を、今シーズンは意識したいと思っています。

ーー鮫島選手が刺激を受ける、他のチームのサイドバックはいますか?

(サイドバック同士で)マッチアップすることはないのですが、キング(有吉佐織)は本当に上手いです。中盤(のポジション)もプレーできる選手ですし、彼女には、何もかないませんね(笑)。

ーー今年の具体的な目標を教えてもらえますか?

リーグで優勝することが一番ですね。それから、昨年の(リーグ戦での)失点が「19」だったんですが、(優勝した)ベレーザは「8」で、失点数にも(1位と2位の)大きな差があることを感じました。今年の目標としては失点数を10点以下に収めたいとは思っていますが、現実的には、昨年より確実に減らしたいですね。まずは初戦(26日、vsノジマステラ神奈川相模原)でしっかり勝てるように、気を引き締めて臨みたいと思います。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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