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日本ラグビー、新たな歴史に花

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

ウェールズ代表から金星を挙げたラグビー日本代表が、歴史を刻み付けられてきた『レーバーン盾』の保有国になっていた。日本は3度目の挑戦で初のタイトル奪取で、ラグビー界世界最古のレーバーン盾の第179代保持国となった。

ラグビーでは、国・協会の代表チーム同士の試合を、「テストマッチ」と呼ぶ。世界で最初のテストマッチは、1871年、英国エディンバラのレーバーン・プレイスという競技場で行われたスコットランド×イングランドとされている。これに勝ったスコットランドが、この競技場にちなんだ初代のレーバーン盾(Raeburn・Shield)の保持者となり、ボクシングの世界タイトルのチャンピオンベルトのごとく、保有国絡みのテストマッチの勝者に保持、あるいは移動されてきた。

いわば仮想のタイトルながら、コアなラグビーファンの間では大事に扱われてきた。ワールドカップ(W杯)や欧州六カ国対抗などの優勝争いとは違う、国・協会代表同士のテストマッチの勝者の名誉を重んじる趣であろう。前回の2011年W杯を制したニュージーランドが長期間保有し、昨年12月にイングランドに渡り、ことし3月の欧州六カ国対抗の最終戦でウェールズがそのイングランドを倒し、これまではレーバーン盾を保有していることになっていた。

日本代表はウェールズ代表に15日、23-8で勝ったのである。ただ19日のカナダ代表戦(名古屋・瑞穂)で敗れると、せっかく保持したレーバーン盾は残念ながら、カナダに渡ることになる。

レーバーン盾のホームページ(英語版)によると、過去の最多防衛テストマッチ数はニュージーランド代表『オールブラックス』の1987年6月から90年8月までの1155日の18試合。最短の保持期間はスコットランドの1999年10月の4日となっている。日本はカナダ戦を乗り越えないと、最短保持期間の記録に並ぶことになる。

ラグビーならではの名誉であろう。日本のような強豪国でなくても、タイミング次第では世界で唯一の称号の保持国になれたのである。タイトルの権威はともかく、これもスポーツが誘う楽しい想像である。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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