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女子ラグビー元主将、五輪の夢追いかけて

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

女子ラガーが走る。目に緊張感、からだ全体には覇気が漂う。花冷えの13日、東京・辰巳の森海浜公園ラグビー場で、7人制ラグビーの日本代表候補の発掘を目的とした女子トライアウト『サクラセブンズ・チャレンジ』が開かれ、約40人が己の体力と技術をアピールした。

元日本代表主将の藤崎朱里(Rugirl7)も無名選手に交じって、体力測定、セレクションマッチなどに挑んだ。「オリンピックしか見ていません」と29歳は言う。「(日本代表を)抜けた時より、成長した自分を見てもらおうと思ってプレーしました。まずは、そこ(代表)にちゃんと戻りたい」

かつては実業団バレーボール・チームのエースだったが、2010年、「五輪出場」を夢見て女子ラグビーに転向した。トライアウトは、その競技転向の時以来、2度目となる。昨年6月の7人制ラグビーのワールドカップ(モスクワ)にも出場したが、その後、日本代表入りを辞退していた。

「セブンズのワールドカップでは何もできなかった」と悔やむ。「もう、そんな試合は二度としたくない。自分には何が必要かと考えたら、日本代表から離れ、自分を一から鍛え直すことが大事だと思ったんです。からだもスキルもココロも」

168センチ。体重はこの1年で約3キロアップし、「76、77キロ」になった。筋力トレーニングに打ち込み、ただいま、「肉体改造中」という。試合では、キックオフのボールをナイスキャッチし、そのままパラフルなランでインゴールに駆けこむなど、トライを何本もマークした。

元主将がトライアウトに臨むのはつらいかと思いきや、「違う視野でラグビーをもう一度見直すことができました」と前向きにとらえている。「しっかり自分のプレーを見ていただきたい。初心を忘れてはいけない。こういう経験をこれから生かしていきたい」。ラグビースキルはともかく、一番大事な闘争心やタフネスぶりは健在である。

もちろん、日本代表『サクラセブンズ』に復帰できるかどうかはまだ、わからない。決して甘くはなかろう。それでも「オリンピックでメダルを獲れるチームの一員になれるよう、まずは自分がレベルアップすることを課題にしたい」という。視線の先には2年後のリオデジャネイロ五輪だけが置かれている。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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