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韓国に雪辱しア大会優勝へ~セブンズ日本男子

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

季節は夏から秋へ。7人制ラグビー(セブンズ)の日本代表男子の戦いがつづく。仁川アジア大会(19日開幕)優勝を目標とする日本代表が2日、前哨戦となるマレーシアセブンズ(6、7日)に向け、「男子シニアアカデミー」合宿で調整に取り組んだ。

晴天のもと、千葉県成田市の中台運動公園のグラウンドには瀬川智広ヘッドコーチの掛け声が響きわたる。この日はディフェンスの整備が中心。「世界で戦っていく上では、アタックもディフェンスも粘り強くないといけない。基本的にはより攻撃的に、前に出ていかないといけない」と、同HCは説明する。

8月下旬のアジアシリーズ・香港セブンズでは韓国に苦杯を喫し、3位に甘んじた。メンバーの違いはあるが、アタックもディフェンスも淡泊だったからである。とくにディフェンスのシステムが崩壊した。「面」をつくることを意識し過ぎて、「待ち」の防御になってしまった。「チャンスのときは攻める、ダメなときは流す。その切り替えが大事です」

アジア大会の開催国、韓国の力は決して、侮れない。アジア大会で優勝すれば、選手には「兵役免除」のご褒美が与えられる。これは選手のモチベーションには大きいだろう。瀬川HCはこの日、ミーティングでそういった韓国の事情も説明し、香港セブズンの韓国戦のビデオを見せた。

「韓国は必死だと思います。いい準備をしています。香港セブンズでは韓国の出来がたまたまよくて、日本がへぼかったわけではありません。“日本はやるべきことを徹底して、プレーを正確にやらないと勝てないぞ”という話もしました」

日本代表の主力はトップリーグ(TL)で15人制の試合をしたあと、この合宿に集まってきた。まずはセブンズのからだ、試合勘を取り戻すことがテーマとなる。マレーシア・セブンズでコンディションを高め、韓国・仁川に乗り込む。アジア大会3連覇がかかる。「絶対、優勝しないといけない」と、瀬川HCは決意を新たにした。

空中戦のスペシャリスト、ベテランの桑水流裕策(コカ・コーラ)もグラウンドを走り回った。TLでは2試合にフル出場。ちょっとバテ気味で、「セブンズのからだに変えています」と苦笑する。

桑水流が不参加だった香港セブンズの韓国戦ではキックオフの獲得率が悪く、ボールポゼッションを高めることができなかった。「僕の役割はまず、キックオフ」と28歳は語気をつよめた。

「日本はアジアの中では絶対、負けちゃいけないと思っています。勝つ文化をつくるためにも、アジア・チャンピオンの座を取り返す。マレーシアで優勝して、勢いに乗って、アジア大会に臨みたい」

桑水流はまた、チームみんなの意志を代弁する。もう韓国には負けられない、と。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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