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ダイゴの新たな挑戦始まる

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

あのダイゴは健在である。ラグビーのトップイーストも13日に開幕、日野自動車×釜石シーウェイブス(日野)も行われ、日野自動車の33歳、CTB山下大悟が切れ味鋭いランを披露した。試合は5-16で惜敗。「チームとしてはまだまだ。精度が足りないのかなって思います。僕自身の調子はいいですよ」と、さばさばとした口調だった。

2002年度に早大主将として大学日本一、07年度にはサントリー主将としてチームをトップリーグ(TL)制覇に導いた生来のリーダー。サントリーからNTTコムに移籍し、ことし、TL下部のトップイーストに所属する日野自動車にやってきた。

「もう3チーム目ですから」と、とくに山下に気負いはない。「自分がチームをひっぱっていくよう期待はされているかもしれませんが、自分ひとりでは何もできません。しっかり仲間と協力しながら、(TL昇格に向け)少しずつ、チーム力を上げていきたい」

日野自動車は1950年創部。このところ会社挙げてラグビー部の強化に乗り出しており、「日野・山下」も誕生した。昨季はリーグ7位。釜石には5-71で大敗していたけれど、今季は互角の勝負を展開した。「ちょっと、はがゆい感じがしました」と山下は漏らす。

「コンタクトはできているんですけど、少し我慢のきかないところがあるんです。チームが若いからか、精神的なこともあるでしょうが、スキルとしてハンドリングがまだ上手じゃないんです。もっと努力が必要でしょう。練習から勇気を持ってチャレンジしていかないとスキルは身につかないのです」

自分に厳しいベテランの存在は、若手にも好影響を与えるだろう。試合中も、大声でポジショニングなどの指示をチームメイトに出していた。自身の目標は?と聞けば、「全試合、フル出場です」と山下は即答した。

「NTTコムのときも2シーズン、フル出場したんです。一日一日、一試合一試合、一所懸命に自分を追い込んでいくだけです」

来月11月には34歳となる。まだプレーにキレがあるのは、食事やコンディション管理、トレーニングなどがしっかりしているからだろう。元気ですね、と声を掛ければ、「ぼくは自分のルーティンワークを高めているだけです。自分のからだが切れているか、切れてないかはわかります。切れてないとき、どうしないといけないか、も分かっているつもりです」と自己管理に自信を漂わせる。

その真摯な姿勢と勝ち運が、若いチームにどう影響を与えるか。新天地で、チーム最年長のダイゴの新たなチャレンジがはじまった。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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