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明治ラグビー、勝って反省

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

ラグビーの全国大学選手権第2ステージは21日行われ、注目のC組では明大が大味なラグビーで難敵の大東大を41-29で倒し、2連勝で勝ち点を12に伸ばした。明大の丹羽政彦監督は「勝ち点6をとったことだけ、今日は評価できる」とぶ然とした表情だった。

「FWがつくったチャンスを、バックスがことごとくミス、選択ミスをしている。チームでやろうとしていることが、みんなに浸透できていない。私を含めたコーチのせいだと思います」

明大は早大戦での敗退後、看板のFWがまとまってパワーアップしてきた。スクラムで圧力をかけ、ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)でも優位に立ち、相手ボールを何度も奪取した。試合開始直後のトライのあと、敵陣ゴール前のスクラムで「ST」(スクラムトライ)を狙うと見せて、ナンバー8の山下誉人がすぐに左サイドを突いて、左隅に飛び込んだ。さらにスクラムの右サイドを突いた後、オープンに回して、WTB紀伊皓太がトライ。17-0と先行した。

だが、大量リードに気が緩んだのか、ハンドリングミスが重なり、窮地を招く。SO田村煕(ひかる)を故障で欠いていたこともあって、ゲームメイクもチグハグだった。2トライを返され、17-10で折り返した。

後半も、一時34-10としながら、ラスト3分には34-29と詰め寄られた。プロップの勝木来幸主将やFWリーダーが途中交代で不在だったこともあるが、相手ゴール前スクラムで「ST」を狙いにいったところ、コミュニケーションミスでボールを出して、バックスに展開する場面もあった。

つまるところ、意思統一がなされていないのである。ボールへのレスペクトと技術がないから、ハンドリングミスを犯すのである。FWの押しをバックスが生かせない。チームとして、強さともろさが同居している。

勝木主将は、試合前のロッカー室で、「負けて学ぶものはもう、ない!」と檄を飛ばしたという。必勝を期したわけだが、「全然、満足できる内容ではなかった」と反省する。

「相手もシーズンの終わりがかかっているので、決してあきらめない。スタンドオフには1年生の堀米(ほりまい=航平)くんが入っていたので、いつもと違うデシィジョンをやってしまうこともある。でも、そこは助け合い。FWがとにかく前に出て、プレーすることが大事だと思います」

準決勝進出をかけた第2Sの最終戦(27日)の相手は、黄金バックスを誇る筑波大である。FWが相手を圧倒しなければ、厳しい戦いを強いられることになる。「絶対、負けられない」と勝木主将はコトバに力を込めた。

「メイジといえば、FWが看板なので、そこで前に出れば、チームも乗ってくる。今日とは別のチームになります。メンバーの意味ではなく、チームの気迫がガラリと変わって、もっとFWを前面に出していきます」

王者復活への望みをつなげることができるか。もっとシンプルに、もっと激しく。勝負のポイントとして、同主将は「FWとディフェンス」を挙げた。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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