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ラグビー日本女子、劇的Vで五輪予選へ弾み

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

アイルランドはダブリンから、朗報が届いた。23日開かれた7人制ラグビーの女子セブンズ・ワールドシリーズのコアチーム昇格大会で、日本代表(愛称サクラセブンズ)が決勝で地元アイルランドに13-12で劇的な逆転勝利を収め、優勝した。2位以上となった日本は初のコア(中軸)チーム昇格を決め、15-16年シーズンからワールドシリーズ全大会に出場できることになった。

同シリーズは世界王者のニュージーランドやカナダ、豪州などが転戦するステージ。そこで実戦経験を積むことができるということは、来年のリオデジャネイロ五輪に向けて何よりのチーム強化策となるだろう。

快挙といってもよい。優勝はもちろんだが、アイルランドほかオランダ、ウェールズの欧州勢、来年の五輪ホスト国のブラジルなどをことごとく破った意味は大きい。とくに難敵ウェールズには2試合(○17-14、○17-5)とも勝った。「みんなで走り勝つ」という強化方針を確認できたことで、選手たちは大きな自信をつかんだに違いない。

決勝はドラマチックだった。小雨のぱらつく中、日本は後半序盤、0-12とアイルランドにリードを許した。でも反撃。途中交代で入った鈴木陽子が快足を飛ばしてトライを返し、さらに主将の中村知春がトライを重ねた。これで10-12。最後に日本はPKを得て、故障から復帰した大黒田裕芽が終了ホーンとともに逆転PGを蹴り込んだ。

日本は浅見敬子ヘッドコーチの指導のもと、ハードワークを続けてきた。ストレングス、フィットネス、フィジカルは確実にアップした。けが人も復帰してきた。運動量で相手を圧倒し、全員に「仲間を助ける」という意識があった。からだを張った。素早いフォロー、しつこいタックル…。つないでつないでトライを奪い、だれもが最後まで相手を倒しにいった。執念の優勝だった。

もっともことしの大一番は11月に香港、東京で行われるリオ五輪アジア予選である。こんかい、8位相当に終わったライバル中国、プレート(5-8位決定戦)で中国を下した香港(6位相当)などがターゲットとなる。こんかいの優勝を生かすためにも、ぜひとも、五輪キップはつかまないといけない。

お互い、手の内は分かっている。中国、香港などの分析を重ね、戦術をどう組み立てていくのか。五輪キップを確保できるかどうかは、コンディショニングとともに、スタッフと選手が一丸となった準備の勝負となる。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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