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松岡修造、脳裏ウォーキングのすゝめ

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)
「脳裏ウォーキング」の大切さを熱く語る松岡修造さん

「笑顔でウォーキング!」「レッツゴー・ウォーキング!」。エネルギーがスリムなからだにさらに満ちる。いつも元気な松岡修造さんがウォーキングを熱く語った。「脳裏が動くから、からだも動く。だから、そこを正しく動かしてあげれば、必ず、いいウォーキングができます」とし、新語『脳裏ウォーキング』を提唱した。

「そのためには、笑顔と型ですね。日本人は型を大事にしています。フォームとか、歩きの型を、脳裏に焼き付けてあげれば、間違いなく、正しいウォーキングができて、からだもいい方向にいく。こころもからだも、いつも笑顔でウォーキングできるんじゃないかと思います」

21日に都内で開かれたミズノの新型ウォーキングシューズのプロモーションビデオの発表会。ミズノのブランドアンバサダーを務める松岡さんは会場をぐるぐると歩き回って登場した。姿勢がいい。軸がぶれない。上半身を安定させ、胸が動かない状態で足をしっかりと動かす。

「僕は街を歩くときは、目線を絶対、変えません。ひざが悪いので、なるべくかかとの感覚を大事にしています。エア・ケイ(錦織圭)ではなく、“エア・修造”として、ふわーと浮く感覚を持つようにしています」

シューズを変えれば、歩き方を変えれば、気分も変わる。この日は、一般参加者からの悩みも聞いた。「去年まで着られたスーツが(太って)着られなくなった。もう一度着たい」との女性の相談。理由を聞けば、「暑くなって、運動しなくなり、ただただビールを飲んでご飯を食べていたら、体型が変わった」と説明した。

松岡さんはシンプルだ。スマッシュのごとく、「食べなきゃいいじゃん。ビールもそんなに飲まなければいい」と返した。「もっと歩けばいいじゃないですか」と付け加えた。

「これは僕の考えですよ。例えば、腹筋。普通は最初やっているときの腹筋は全然きつくないじゃないですか。そこは(筋力を)鍛えてないと思います。きつくなって初めて、筋肉が“さあ、新しい自分に変わります”というときなんです。だから、疲れているときこそ、ヨッシャと思わないといけない。疲れているとき、階段でいけばいい。そうしたら、筋肉もつくし、メンタル的にも前向きになれるんです」

大事なことは、きつくても笑顔、満面の笑顔であると説明する。きついときほど、脳が喜んでいると考えて歩く。そうすると、全部が楽しくなると持論を展開した。

「そりゃ、周りから変なやつと思われるかもしれません。でも、気にしなくていい。全然、周りに迷惑をかけているわけじゃない。ただ中途半端な笑顔では、前向きにはなれない。おかしいぐらい、(極端な)笑顔で歩いてみてください」

二人目の相談は男性。「お酒を飲んだあとのラーメンがやめられません。3日連続して食べたら大変なことになった」。どうすればいいんですか。

松岡さんは、真顔で「当たり前じゃん。それ、当たり前のことですよ」と言った。

「(飲み会の)帰りにラーメンを食べたい。ひときわ、おいしいですよね。ただ、夜食べると、そのままからだにくっ付くイメージがあります。食べたあとはどうするんですか?」

「食べたあとは風呂に入って寝ます」

「(自宅そばの駅の)ふたつぐらい前の駅のラーメン屋で食べたらどうです。僕は夜、食事が終わったら、消化をしない限り、なるべく寝ないようにしています。ラーメンを食べて、走るのはきついけど、歩くのは楽しくはありませんか。ラーメンを食べたらすぐ、歩く。それを癖にしたらどうですか」

できれば、姿勢をよくして、大股で歩いたほうがいい。すると、脚の筋肉だけでなく、からだの腰回りもお腹の筋肉もぜんぶ使うので、いい運動になる。

3人目の相談は再び、女性。「体型が気になり、ダイエットを試みたが、失敗の連続。この暑い夏も一向に食欲が落ちませんでした」。運動をし、バランスよい食事をすれば、体脂肪を落とすことができるだろう。

松岡さんは「僕自身もムチャクチャ太る体質なんです」と打ち明けた。

「一番大事にしているのは歩きなんです。体脂肪を落とすのに一番いいのは、超遅いジョギングか、ウォーキングです。(リポーターをやっている)“くいしん坊!万才”。(番組の)収録の空きが2時間あると、僕はすぐにウォーキングシューズを履いて、歩き回るんです。くいしん坊の収録にいくと、体重が減って帰ってきます」

松岡さんの爆笑トークがつづく。額に汗の粒を浮かべながら、身振り手振りで。

毎日、運動をしていない人が夜食べて、飲んで、ラーメン食って寝たら、太らないわけがない。ちょっとした時間を利用して、歩けばいい。できれば、早足、大股歩きのほうが効果的である。

そこで、ミズノの新製品をPR。プロモーションビデオの「松岡修造にはウラがある」は、ウラ、すなわちソール部(靴底)に特徴があるウォーキングシューズを意味している。クッション性と安定性を両立させたミズノウェーブ。「これは、みなさんの味方になると思います」と松岡さんは言葉を足した。

この発表会には、運動生理学・バイオメカニクスを専門とする川上泰雄・早稲田大学スポーツ科学学術院教授も登壇した。終了後、気になることをひとつ聞いた。「腰やひざの悪い高齢者のウォーキングはどうすればいいのでしょうか?」と。

川上教授は言った。

「(からだが)痛いと歩くのはしんどいので、まずは水中ウォーキングですね。プールで、ある程度、痛みがなくなり、筋力がついてくれば、少しずつ平地の運動に移していくのがいいと思います」

たかがウォーキング、されどウォーキング。少し熱すぎる48歳の松岡さんの情熱に触れると、こちらもつい、歩きたくなるのだった。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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