師走の富士山 見える日数は半世紀前の7倍に
冬の澄みきった青空に雪化粧した富士山はよく映える。
冬は富士山が最もよく見える季節
東京都庁では大気の濁り具合、大気汚染を監視する目的で、毎日、富士山を観測(撮影)しているが、月ごとの平均観測日数を見ると、最も少ないのは6月で、わずか1.1日。
一方、最も多いのは1月で18.3日、次いで12月の16.9日。
冬は東京から富士山が最もよく見える季節である。
冬型の気圧配置で、晴れて乾いた季節風により空気中の水分が少なくなるので、視界を妨げるものが減少し、見通しがよくなるためだ。
また、季節的な乾燥だけでなく、都市化による乾燥化も富士見には一役かっている。
12月は半世紀前の約7倍見えるにように
ただ、乾燥した冬でも、富士山が東京からあまり見えない時代があった。
1963年から富士見日数を観測している東京・吉祥寺の気象観測所(成蹊学園併設)によると、高度成長期で大気汚染がひどかった1963年、1964年、1965年の12月の富士見日数は、平均で3日。
大気汚染が深刻で、特に冬は、地表付近が冷えることで、汚れた空気が地表付近に溜まりやすかったためである。
当時は煙霧※日数も年間で冬が一番多かった。
冬は意外に見通しの悪い季節だったのだ。
1970年代には大気汚染対策が進み、その後、富士見日数は年間を通して次第に増加。
近年の富士見日数は、2012年12月は19日、2011年12月は21日、2010年は20日で、半世紀前の12月と比べると、約7倍も見えるようになった。
日本の大気汚染汚対策は、法規制および技術面でも世界のトップレベルにあり、東京都はディーゼル車の規制(2003年以降)もあって、大気汚染物質の排出量の少なさは、アジアの都市で1位。越境大気汚染や都市型・生活型の大気汚染対策の課題はあるが、世界の都市でもトップクラスとまで言われるようになった東京の大気の透明度。
富士山が見えると、なんだか得した気分になるけれど、乾燥している証拠でもあるので、火の元、のど元にはご用心くださいませ。
(※煙霧 乾いた微粒子により視程が10km未満→つまり晴れているのに見通しが悪い状態)
【参考】
倉嶋厚 (2003):『大学テキスト 日本の気候』古今書院
【データ提供】
私立成蹊学園気象観測所