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イオンモバイルMVNO参入の衝撃。大手3社のシェアを奪うこともあり得る

三上洋ITジャーナリスト
イオンがMVNOに

イオンモバイルがついに通信事業者になる。今までの「格安スマホ販売店」から、MVNOとして直接ユーザーに向けてSIM+スマホを販売する。2月18日に発表会が行われた。

全国492店舗で一斉開始。直接サポート強化と料金の充実

イオンリテール株式会社・橋下昌一氏
イオンリテール株式会社・橋下昌一氏

今までのイオンのスマホは、あくまでSIM(通信カード)とスマートフォンをセットで販売する「代理店」に過ぎなかった。それが2月26日からは、自らがMVNO(大手キャリアから回線を借りて運用する通信事業者)になる。これにより大きく変わことが3点ある。

1:サポートの大幅強化

今まで料金プランの変更や端末故障をイオン窓口で相談しても、MVNO業者かメーカーに問い合わせる面倒があった。しかしイオン自らがMVNOになることで、その場で料金プランの変更や故障サポートを受けることができる。故障の際には、代替え機まで用意するとのこと。イオンの最大の強みは、全国492店舗のイオンだから、これは大きな武器だ。

2:ヘビーユーザー向け50GBプランもある3タイプ・29種類の料金体系

「音声系(データを含む)」「データ系」「家族シェア」の3タイプを用意。しかもデータの容量を細かく刻んでおり、最小は500MB、最大はヘビーユーザー向けの月間50GBまで用意した。今までのイオンは、高齢者など始めのスマホユーザーをターゲットにしてきたが、今後は「20代・30代のヘビーユーザーにもご利用いただきたい(イオン・橋本氏)」と対象を広げる。もちろんMNPによる電話番号継続も可能だ。

なおイオンモバイルは、あくまでMVNOであって、大手3社と直接やり取りする「MVNE」ではないとのこと。焦点となっているHLR/HSS開放については「MVNEと相談していく(橋本氏)」と述べるに留まった。

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3:「縛りなし」「解約手数料はとらない」という方針を堅持。安心感で強み

イオン橋本氏は「お客様が解約するということは、当社のサービスに不満があるということ。本来ならお詫びしたいぐらい。そのお客様に対して、解約手数料を取ることはしない」と発表会で明言した。大手携帯電話会社では縛りがあって解約手数料を取るのが一般的で、一部MVNOでも縛り・解約手数料がある。しかしイオンは当初から「縛りなし・解約手数料ゼロ」を強調してきた(短期間の解約を除く)。MVNOになっても、この方針を堅持するとのこと。ユーザーフレンドリーであり、安心感からイオンを支持する人も多くなるだろう。

初心者でもMVNOを使える時代に。他社MVNOに脅威である上に、ドコモ・au・ソフトバンクを食うこともある?

地方に強いイオン、安心感のある料金体制、サポート充実の3点で、他社MVNOを圧倒する内容だ。スピード面はスタートしてみないとわからないが、顧客サポート充実が売りなだけに、品質を落とすことは許されないだろう。イオン橋本氏は「3年以内にシェアNo.1を目指す」と述べている。

競争はMVNOだけの話ではない。ドコモ・au・ソフトバンクの大手キャリアにも影響が出て、シェアを落とすことが考えられる。

音声+データ2GBで月額980円、データ2GBでは月額480円のキャンペーン

大手携帯電話会社が真っ青になる理由は、料金の安さとサポートの充実がセットになることだ。料金はキャンペーンながら音声+データ2GBで月額たったの980円。音声は30秒20円の従量制だが、電話をかけない人が増えている時代なら問題ない。大手では、データ1GB+電話5分かけ放題で4900円だから、圧倒的にイオンモバイル・MVNOのほうが有利だ。

格安料金+サポート強化で大手キャリアに脅威
格安料金+サポート強化で大手キャリアに脅威

今までMVNO利用には「知識が必要」「サポートが薄い」というハードルがあったが、今回のイオンモバイルMVNO化で、そのハードルは低くなる。イオンの店頭で、プラン変更から故障までトータルサポートするからだ。これだけの要素があれば、多くのユーザーがMVNO・イオンモバイルに移ることが考えられる。大手3社は総務省の要請で「5000円以下のプラン提供」をやっと出してきたが、そんなことは吹き飛ぶインパクトがある。イオンMVNOはドコモ回線であるが、提供する卸側のNTTドコモのシェアを落とすことになるかもしれない。

ITジャーナリスト

セキュリティ・ネット事件・スマートフォン料金を専門とするITジャーナリスト。テレビ・ラジオ・雑誌などでの一般向け解説多数。読売オンライン「サイバー護身術」、アスキー「5分でわかる時事セキュリティ」などを連載。文教大学情報学部非常勤講師

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