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ポケモンGOで被災県観光振興。ポケストップやジムを被災地に追加へ。レアなポケモンも?

三上洋ITジャーナリスト
位置情報ゲームと連動した被災県観光振興 記者会見

ポケモンGOが被災地への観光誘致を始めます。ポケモンGOのポケストップやジムを、被災地に追加することも検討。ポケモンGOが観光誘致・町おこしに生かされる例になるでしょう。

ナイアンティックと岩手・宮城・福島・熊本県が共同記者会見

8月10日に岩手県・宮城県・福島県・熊本県の被災4県と、ポケモンGOの運営会社・ナイアンティックによる共同記者会見が行われました。ポケモンGOでは初となる、自治体との協力事例です。「被災県観光振興」を目的に4県とナイアンティックが取り組んでいくことが発表されています。

被災地域のポケモンGOによる観光振興具体策
被災地域のポケモンGOによる観光振興具体策

具体的には以下のことが予定されています。

1:ポケストップ、ポケモンジムを被災県に追加

→被災県での観光地などを周遊してもらう目的

2:周遊ルートマップなどの作成

→ポケストップ・ジムを生かして周遊ルートマップを自治体などで作成・配布

3:被災沿岸部を結ぶイベント開催

→ポケモンGOと被災地域でのイベント開催

ポケモンGOでは企業(マクドナルド・TOHOシネマズ)によるポケストップ・ジム追加は行われてきましたが、自治体との連携で「ポケストップ・ジムを追加する」と明言したのはこれが初めてです。

「レアなポケモンを出現させることも検討するか?」という質問に対し、ナイアンティック・村井説人社長は「それも1つのアイデア。ゲームのバランスもあるが検討したい」とレアなポケモンを出現させることを否定はしませんでした。

岩手県・ナイアンティックが呼びかけて実現へ。ポケモンGOが「記憶の風化」を防ぐ?

この取組みは、ナイアンティックの位置情報ゲーム・イングレス(Ingress)での東北3県との連携がきっかけでした。宮城県・村井嘉浩知事によれば「イングレスでは東北3県が連携させていただいて、地域振興のイベントの実績があった。ポケモンGOはより大衆性があり、被災地域の観光振興に生かせるのでは、とナイアンティック社にご相談したところ快諾を得た」とのこと。

自治体からの呼びかけであることが大きな注目ポイントでしょう。さらに村井知事は東北3県だけでなく、熊本県の蒲島郁夫知事に電話で「一緒にやりましょう」と声をかけ、熊本県を加えて被災県4県×ナイアンティックという取組みが実現しています。

ポケモンGO観光振興の目的
ポケモンGO観光振興の目的

また単なる観光客誘致だけでなく、交流促進も目的の1つとしています。被災地域を訪れる人と地元住民の交流、また地元住民同士の交流もポケモンGOで進めていきたいと述べていました。

被災地域では観光客の減少と、記憶の風化が起きています。そんな中、ポケモンGOで訪れる人を増やし、さらに記憶の風化を防ぐこともできるかもしれません。

ナイアンティックの村井説人社長は「イングレスのポータルは、過去から繋がっている遺産などをポータルにしてきた。普段見過ごしている石碑などがポータルになっており、それがポケモンGOでのポケストップ・ジムになっている。ポケモンGOを楽しむことで、大上段に構えることなくゲームを楽しみながら、記憶の風化を防ぐこともできたらいいと考えている」と述べています。

具体策はまだこれから。ポケストップをどう申請させるか、過疎地でどうするかが課題

注目の取り組みではありますが、課題もいくつかあります。

まずはマナーの問題です。訪れた人が立ち入り禁止区域に入ってしまう可能性もあり、「原発周辺の避難区域は入らないようにお願いしたい(福島県企画調整部長・伊藤泰夫氏)」「熊本では被災者が避難所に二千人いらっしゃる。避難所は避けてほしい(熊本県東京事務所長・渡邉純一氏)」などと呼びかけていました。

もう1つ、ポケモンGOが地方でどこまで楽しめるのかという問題もあります。ポケモンGOは明らかに都市型ゲームであり、ポケストップ・ジムが多数あって、プレーヤー(トレーナー)も多数いないとゲームとして成り立ちません。過疎地では事実上遊べないゲームなのです。被災地域の振興を行うならば、多数のポケストップ・ジムを作らなければなりません。

ナイアンティック・村井説人社長
ナイアンティック・村井説人社長

これについてナイアンティックの村井説人社長は「追加するポケストップの数はまだわからない。各県と協議をしながら、考えていきたい。誰にポケストップを申請してもらうか、などの具体策もこれから協議していく」として、これからの検討課題だとしました。

イングレスの場合は、ユーザーが自ら周遊してポータルを申請することで、ゲームが成り立っていました。しかしポケモンGOには、ポケストップ申請のしくみが今のところありませんから、何らかの手段でポケストップの情報収集・申請・設置を行わなければなりません。今後の大きな課題となります。

各県のキャラクターもポケモンGOに協力する?
各県のキャラクターもポケモンGOに協力する?

このように課題はあるものの、これほど早い時期にポケモンGOと自治体の協力が成り立ったのは素晴らしいことだと考えます。まだ具体策は見えていませんが、宮城県・村井嘉浩知事は「必要であれば、宮城は9月に補正予算を組むために議会にかけるつもりがある」とかなり踏み込んだ発言をしていました。ナイアンティックではなく、自治体側が積極的に取り組もうとしていることは評価できるでしょう。

単なる観光客誘致にとどまらず、トレーナーが楽しめる場所を作り、現地のトレーナーとも交流ができ、結果として被災地域の振興につながれば理想的。この取組みはぜひとも成功させたいものです。

ITジャーナリスト

セキュリティ・ネット事件・スマートフォン料金を専門とするITジャーナリスト。テレビ・ラジオ・雑誌などでの一般向け解説多数。読売オンライン「サイバー護身術」、アスキー「5分でわかる時事セキュリティ」などを連載。文教大学情報学部非常勤講師

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