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親がネイティブじゃなくても大丈夫! 〜バイリンガルへの道は1日30分の読み聞かせから〜

宮下幸恵NY在住フリーライター

少し前の話になるが、『コモンコアスタンダードとバイリンガル教育』と題されたセミナーに行ってきた。堅いお題な〜なんて思いつつ、バイリンガル教育の言葉に惹かれて行ってみると、それはそれは中身の濃いセミナーだったのだ。

主催するのは、ニューヨーク近郊に住む日本人家族や日本語で子育てを行う人のための大規模なプレイグループ「アップルキッズ」http://www.applekidsnyc.org。定期的に季節にちなんだ遊び会や、ニューヨークの公立・私立学校の選び方など、海外で暮らす日本人家族や、国際結婚した日本人ママさん向けの講座を行う頼りになる会だ。

名門コロンビア大学教育政策研修所の研究員として専門的に研究を行っている長倉若さんがメインスピーカーでマイクを握り、舞台演出家でありながら、ご自身の子育ての経験から「マンハッタンの学校のことなら右に出る人はいない!」ほど、教育問題に精通している河原その子さんがサポート役を努め、熱気に満ちたセミナーが始まった。

学習指導要綱でアメリカが変わる!

まず、コモンコアスタンダードとは、アメリカで導入された日本のような学習指導要領の事を指す。長倉先生曰く、「高校卒業レベルが、大学入学に必要な学力に追いつかず、2年の差があると言われてる」そうで、小さな頃から学力を底上げし、落ちこぼれをなくそうというものだそうだ。

私が住むニューヨーク州では2010年7月にコモンコアスタンダードの導入が決まり、(http://www.corestandards.org/in-the-states参照)、実際に2013年から2014年でのスクールイヤーで適応されていく。

実際に本を手に取りながら、丁寧に話す長倉若先生。
実際に本を手に取りながら、丁寧に話す長倉若先生。

長倉先生は、変更点が分かりやすくまとめられたパワーポイントを使って解説して行く。例えば、ある事象に対して「自分の意見を述べよ!」が多かった作文では、2つの事象を理解し、「それを比較し、状況を説明せよ」といったような、より理解力、要約力を必要とされる作文が求められるという。

アメリカの宇宙政策の1つ、アポロ計画について書かれた「MOONSHOT」でも、これまでなら「アポロ計画について考えを述べよ」という問題だったのが、「ロケットの高さは建物だと何階分か?」など文章をきっちり読み取って答える問答になるという。

読解力を上げるため、今まで小学4年生で読むべきとされてきた「Charlotte’s Web」(邦題シャーロットのおくりもの、E・B・ホワイト著)が3年生で読むべきとされるなど、読むべきレベルも上がって行く。

びっくりしたのは、現在アメリカの小学校のクラスでは、皆が同じ本を読んでいるのではなく、学力に合わせて別々の本を読んでいるんだそうだ。学校によっては、それぞれ子供に読解力のレベルを伝えているところもあるそうだ。

長倉先生によれば、「どの子がついていけてないかがわかるように、テストの回数も増えて行くと予想される」という。コモンコアスタンダード導入で、落ちこぼれ防止を目指すアメリカ。「自分が自分が」という全面に出るより、より客観的に物事を捉える力がつけば、将来のアメリカ人のイメージが変わるかもしれない。

語彙力アップの近道は読み聞かせ!

子供がアメリカで生まれ育っても、両親、もしくは母親、または父親が日本人の場合、やっぱり、英語の語彙力は劣ってしまう。その語彙力をつけるためには、どうすればいいのか?

『読み聞かせ』が一番効果的なんだそうだ。

例えば、うちの場合。私も旦那も日本人で、娘はまだ2歳ちょっと前。家では日本語だけでも、英語の本を英語で読んだほうがいいの??

「よく、『私ネイティブじゃないんです』というお母さんがいますが、小学校にあがる前は、それでも大丈夫だと思いますよ。とにかく、本、私、お母さん、いい感じというイメージをもたせる事。本を嫌いにさせない事ですよ」

と長倉先生。

本嫌いになったら元も子もないけど、ネイティブスピーカーのような英語を操るわけではない私が英語の本を読んだらダメなんじゃない?

「アメリカに住んでいると、スーパーに行ったり、電車に乗ったりいろいろな場面できちんとした英語を耳にしますよね。それでいいんじゃないかと私は思っていました」

理解度の目安は・・・

長倉先生は、「一概には言えない」「家庭環境や子供の性格もある」と前置きしながら目安をするべき具体例を上げてくれた。

「小学校1年生で30分は自分で本を読めたらいいですね。でも、本当に読んでるか分からないですから、『どんなお話だったの?』『じゃあ、どうしてその子のスクールバスに乗らなかったの?』『主人公はどんな人?』とストーリーを確認するような質問をしてあげることです」

なるほど。そういう質問で考える力、ストーリーをきちんと把握する力を家庭でも養えるのだ。日本語の本を読もうが、英語の本を読んでいようが、こうやって聞いて行くのは効果的かもしれない。

「すらすら読める時は理解していると思いますが、1ページに3つ分からない単語があると、100パーセント理解できないと言われているので、立ち止まっているんだったら『この言葉分からないの?』と聞いて上げるのもいいと思います」

でも、分からない単語を調べるときは電子辞書でもいいの?

「私の個人的な意見では、電子辞書では1つの単語に2つか3つの意味しか載っていない場合がありますよね? でも、英語には6番目や7番目に出てくる意味合いで使われる場合もある。そういうニュアンス的な意味を掴むため、あとは、1つの言葉を調べたら、それに派生して用例文だったり、その単語の前後に並んでいる言葉を見たり広がって行くので、電子辞書はそういう事にはならないので、辞書のほうがいいのでは」

就学前の子供は30分も自分で読めないですよね?

「でも、30分読み聞かせる事はできますね」

家の中の会話も英語にしたほうがいい?

「議論が別れるところです。とにかく、日本語でも、英語でもぼやっと理解するのではなく、100パーセントしっかり言葉の意味を理解できる方の言葉を使うことです」

とにかく1つの言葉の意味をしっかり理解できる言語を作らないといけないとると、やっぱりうちは日本語か・・・。

アメリカ生まれの子供をもつ日本人ママさんたちは皆熱心に質問し、(もちろんパパさんも居ましたが・・・)あっという間に時間は過ぎていく。

最初の壁は小学校低学年

ニューヨーク州マンハッタンの場合、公立中学でさえ、進学時に小学校4年生で行われる州統一テストの点数が基準になる。それだけに、小学校2年、3年と学年が上がるたび、どんどん授業レベルがあがって行くため、マンハッタン在住の日本人ママさんの間では「小学校2、3年が最初の壁」と言われてるそうだ。現地校での英語の勉強が大変になるときに、日本語の勉強もおろそかに出来ないからだ。

小学校入学前は、親がネイティブスピーカーじゃなくても、絵本を英語で読み聞かせてもいいというのには目からウロコ。それでも、やっぱり、私は発音に抵抗があって、なかなか踏み切れずにいるのだけれど・・・。

まずは、英語でも日本語でも、「子供、本、お母さんのいい感じな時間」になるように絵本を読んでいこう。やっぱり、バイリンガルは1日にしてならず、だよね?!

NY在住フリーライター

NY在住元スポーツ紙記者。2006年からアメリカを拠点にフリーとして活動。宮里藍らが活躍する米女子ゴルフツアーを中心に取材し、新聞、雑誌など幅広く執筆。2011年第一子をNYで出産後、子供のイヤイヤ期がきっかけでママ向けコーチングの手法を学ぶ。NPO法人マザーズコーチ・ジャパンの認定コーチに。『「ダメ母」の私を変えたHAPPY子育てコーチング』(佐々木のり子、青木理恵著、PHP文庫)の編集を担当。

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