「オレたち、すごくね?」キー局内定者飲み会での傲慢トークの一部始終

来年の4月採用に向けて民放キー局やNHKの採用活動がほぼ一段落した。

残っているのはTBSなど一部の放送局の夏採用やNHKの秋採用だけだ。

テレビの世界に進む若者たちには、テレビという面白くて刺激的なメディアをもっと楽しく面白くタメにになるものにしてほしい。

報道の分野ならば、ぜひあまり表に出てこない社会の問題や権力の暴走を暴いて、世の中が変な方向に向かわないように「社会の木鐸」としての役割を発揮してほしい。

テレビの職場は、それだけの価値がある場所だと思う。

ところが・・・!

ちょっと心配なことが耳に入ってきた。

現在は大学に合格した場合でも入学式を前にLINEで「○○大学×学部新1年生」などの「グループ」が出来てどんどん広がる時代だ。

「キー局内定者」も、すでにLINEのグループを作っているという。

「キー局内定者飲み会」の呼びかけも行われ、まだ顔見知りになる前にLINEで「つながっている」のだ。

その「キー局内定者飲み会」の一つが先日、東京の渋谷のスポーツバーで行われた。

日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京、と民放キー局からの「内定者」80人あまりが集まった。

そこでの会話だ。

「オレたちって、すごくね?」

(年配の人向けに解説すると、「すごくね?」は若者言葉で「すごくない?」とか「すごいよね」とほぼ同義。要は、彼らが自慢する時に口にするフレーズだ。)

「だってさ、各局の応募者2万人のうちから選ばれた20人なんだぜ」

大人の目から見て、「不遜」としか言いようがないフレーズも飛び出す。

「どうしてこの飲み会に週刊誌が来ないのかな~、だってオレたち、これから日本の報道の中心を担うメンバーなんだぜ。週刊誌の記者がいたら良い記事が書けるのに何で来ないんだろう?」

自信満々。

その自意識の高揚たるや大変なものだ。

確かに民放テレビキー局の就職戦線は、宝くじと言われるほどの高い競争率だ。

だいたい各社2万人受験して、20人内定するかどうか。ざっと1000倍の競争率だ。

実は、「オレたちって、すごくね?」というフレーズは、テレビ業界に入る若者たちが本音ベースでよく口にする。

民放キー局の内定者だけでなく、NHK内定者、地方局の内定者などの飲み会でも、このフレーズが時々、飛び交う。

テレビの世界に入って行く学生たちから何度か耳にした。

口にするのは、精神的には女子学生に比べると幼いヤツが比較的目立つ男子学生だ。

「オレたちって、すごくね?」

確かに君たちは、マスコミの就職戦線の「勝ち組」だ。

各テレビ局にエントリーシートを提出した数万人ほどの中から、5次6次の試験をくぐり抜けて、「内定」を獲得したわずか数十人なのだ。

キー局の生涯年収は5~6億円。

通常の大卒「正社員」の生涯給与も倍ほどもある。

フジテレビでは平均年収が1500万円を超え、生涯賃金は5億8500万円弱にも及ぶ(図表2参照)。大学、大学院卒の生涯賃金平均は男子2億9000万円、女子2億6000万円となっており、その差は実に2倍以上にもなる。

出典:President on Line

年収も30代半ばで1500万を超え、40代で2000万円プレーヤーも少なくないテレビ業界。

他方、テレビ番組の制作を支える「制作会社」の年収は、その4分の1に過ぎない。

制作会社従業員の年収はテレビマンの4分の1。生涯賃金に換算すると制作会社の従業員は約1億5000万円で、フジテレビ局員との乖離は4億円以上にのぼる。まさに、テレビマンが高給を貪る一方で、零細の制作会社が薄給に耐えながら制作を担っている、という構図。「所得格差、ここに極まれり!」だ。

出典:President on Line

制作会社の「正社員」だったら上記の通りだが、実際には「契約社員」など1年ごとの不安定な非正規契約も少なくない。それがテレビ局という職場におけるピラミッド構造だ。

こうした構図がテレビから発信されるニュースの「上から目線」ぶりの背景になっている。

非正規で働く人たちがどんなに増えても、自分の回りには非正規の人たちが多いにもかかわらず、自分は「努力して勝ち組になった。高収入をもらうのは当然」という意識になってしまう。

失業をきっかけにホームレスになった人たち、わずか6万円程度の年金収入しかない高齢者、母子家庭で文房具も100円ショップで買わなければならない子どもの気持ちなど分からない。病気で仕事を失った人たちの痛みなど、分からない。

だから、消費税アップのニュースも、以前、ヤフーニュースでも書いたような上から目線やセレブ路線の見方が広がってしまう。

特に気になったのはこの夜の「ニュースウォッチ9」。 デパートや外食産業で高級志向などの新機軸を打ち出して売り上げが落ちていなかったり逆に売り上げが伸びているという報告をしていた。 若い女性記者がデパートで11万円の高級衣料品を買おうとする熟年女性に微笑みながらインタビューしたり、焼肉店では高級な”せれぶメニュー”に人気が集まっていて200gで2600円する特上和牛ロースを頬張る男性サラリーマンなどを映していた。 確かにお金を持っている人たちもたくさん存在しているのだろうが、そうした人たちばかり画面に登場させてどういうつもりだろうか?

出典:ヤフーニュース個人

「ホームレスって、自分が好きでやっている人がほとんどでしょう?」

キー局という職場で、そんな偏見を平気で口にする報道局員は実は少なくない。

被災地の取材に豪華な洋服で乗り込む記者など、制作会社からの派遣社員や非正規社員の前で「給料が下がったよ」などとぼやいたり、ボーナスの多寡を大声で話したりする正社員など、持たない者へのデリカシーに欠けるような光景はキー局の現場では日常的にある。

それはいつも高いメシを食い、高い服に身を包み、高い海外旅行などに行く、という「勝ち組意識」を持ち続けてきたせいだと感じてきた。

その萌芽が、すでに内定者の間でも広がっている、というのは筆者にはショッキングだった。

「オレたち、すごくね? どうして週刊誌が来ないのかな~、だってオレたち、これから日本の報道の中心を担うメンバーなんだぜ」

そこまで言われたのなら、週刊誌の記者たちよ。

ぜひこのバカな若者たちの実態を取材してほしい。おバカぶりを会社名とともに世にさらけ出して欲しい。

ちなみに私は会社名を知っている。ここでは書かないが。各局の中で特に不遜トーク、傲慢トークが多いテレビ局がある。

こんな連中はどうせ、数年以内にカネに飽かせて、未成年買春や痲薬か何かで逮捕されて職を失うのが関の山だろう。

ここで言いたいことは、昨年、逮捕されてクビになった有名キャスターの息子だけが傲慢なのではないということだ。

キー局に入った。そのことだけで「傲慢」「不遜」になる人間が数多い、ということなのだ。

「勝ち組意識」が強いと、本当に「庶民の痛み」が分からない。

努力すれば自分のように東大や慶応に入ってテレビ局にも入れるのに、あなたたちは努力が足りなかったのね~、という目線で庶民を見下してしまう。

もちろん、キー局だってそんな人間ばかりじゃない。

こういう意識に違和感を覚えている若者たちがいる。

筆者はそうした若者たちにこそ、希望を抱く。

だが、残念なことに内定したとたんに「勝ち組意識」を振りかざし、「傲慢」「不遜」のご自慢トークに熱中する、おバカ学生が目立ってしまうのも事実なのだ。

「オレたちって、すごくね?」

そう言って舞い上がっている学生に、テレビ局のOBとして、大学の教員として教えてやろう。

「オマエらは別にすごくはない。単に運が良かっただけだ。自慢しているんじゃないよ。バカモノ!」

「そんなことで舞い上がっている程度の人間には、その先はない」

確かにちょっと心配になる。

テレビ業界もインターネットとの競合など、大変な時代を迎えている。

そんな激動の時代に、こんなレベルの若者たちでテレビ局は大丈夫?

(この記事は、複数の内定者をニュースソースとして書いています。)