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スパコン「京」世界第一に返り咲き、実は?

森井昌克神戸大学大学院工学研究科 教授
スパコンTITAN(提供:OLCF/ORNL/ロイター/アフロ)

前回2014年11月のランキングでは「京」は第2位だったのですが、ドイツのフランクフルトで開催中のHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング:高性能計算技術)に関する国際会議「ISC2015」で7月13日(日本時間7月14日)に発表されたGraph500ランキングでなんと1位を奪還したことが判明しました。

出典:日本のスーパーコンピュータ「京」がついに世界第1位を奪還【GIGAZINE】

スパコン「京」が世界ランキング1位を奪還しました。Graph500というランキングで、「グラフ探索問題」と言う具体的問題をどれぐらいのスピードで解けるかというランキングで1位に返り咲いたのです。実は、ここ数年でも「京」は、ずっと世界一のスパコンと言っても良い地位を占めていました。スパコンのランキングと言っても、様々な評価の仕方があるのです。よく使われるスパコンランキングであるTop500では、TFLOPSという単位での競争になります。1秒間に浮動小数点演算をいくつできるかという競争です。2015年6月のTop500では、スパコン「京」は世界第4位です。しかし、HPCチャレンジベンチマークという評価では、コンピュータの複数の特性を評価する指標になっています。先の浮動小数点演算だけでなく、巨大な連立一次方程式を解く問題や高速フーリエ変換、あるいはメモリ転送書き換えの速度といった指標をまとめたものです。「京」はここ数年、連立一次方程式を解く問題やメモリ転送速度においては世界一の座を守っています。実用に具される事を考えると、世界一のスパコンは「京」と言っても過言ではないのです。

HPCチャレンジやGraph500、それにTop500では何が違うかということですが、陸上競技に例えればTop500は100m走です。競技の花形と言えるかも知れません。しかし、Graph500やHPCチャレンジは十種競技のようなものです。実用的な性能という事であれば、Graph500やHPCチャレンジのほうが参考になることでしょう。

神戸大学大学院工学研究科 教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工芸繊維大学助手、愛媛大学助教授を経て、1995年徳島大学工学部教授、現在、神戸大学大学院工学研究科教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、インターネット、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。加えて、インターネットの文化的社会的側面についての研究、社会活動にも従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。電子情報通信学会フェロー。

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