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意識してますか?!言葉ではなく写真での誹謗中傷、写真は究極の「打ち言葉」!?

森井昌克神戸大学大学院工学研究科 特命教授・名誉教授
写真撮影(写真:アフロ)

スマホの普及で、今や誰もがどこでも簡単に写真が撮れる時代。撮った写真をツイッターやフェースブックなどSNSに投稿する人も多いだろう。しかし、無断で撮影した人物の写真の投稿は、訴訟に発展する可能性もある。ちょっとした遊び心では許されないこともあるので、注意が必要だ。

出典:「目の前のおっさん、きもい(笑)」 若い女性の中高年盗撮、SNS投稿で訴訟も【産經新聞】

不注意な一言が思わぬ炎上を引き起こす事が問題になっています。「話し言葉」と「書き言葉」が異なる事は昔から良く言われていました。ネットが出現してから、それに加えて「打ち言葉」が加えられました。「書き言葉」と「打ち言葉」の違いは、「書き言葉」がある程度の時間をとって、吟味された表現であるのに対して、「打ち言葉」は瞬時的な表現です。リアルタイムで発するのは「話し言葉」と同等なのですが、その言葉を補完する情報がありません。「話し言葉」では、面と向かってであれば表情や仕草がそれにあたり、電話であったとしても声のトーンや即座の反応がそれに対応します。「打ち言葉」は補完される情報がないのです。それゆえに相手、特に不特定多数の相手となると、意図しているコミュニケーションが出来ず、トラブルを生じる場合が有るのです。それを幾分補うために顔文字や絵文字が多用されるというのは必然なのでしょう。

写真は究極の「打ち言葉」かもしれません。簡単に撮れるだけでなく、今では即座に投稿できるからです。さらに「百聞は一見にしかず」ということわざは、百を語るよりも1枚の写真が訴える効果が大きいということを意味してますが、逆に、瞬時に思わぬ効果を与える事があるのです。一つの文章を解釈が人によって異なるのと同様、写真も、その情報量の多さゆえに、必ずしも一通りの解釈とは限らないからです。

どのような画像であれ、一般に公開する事ことに対して、十分注意する必要があるのです。それは意図しなくても、誹謗中傷等、あるいは批判につながる議論になるような文章の解釈が問題になる事と同等です。

画像も文章と同じです。投稿した本人にとっては何気ない画像が、特定の人に取って非常に不快に思い、訴訟になりうる事も有り得るということを常に考えなくてはなりません。画像を誰が見ているのか、誰が見ても不快に思わないか、そして極端な話をすれば、自分に敵意を抱いている人が見た場合でも、批判の対象になり得ないかを考えなくてはなりません。

繰り返しになりますが、文章に比べて写真は簡単に撮影でき、かつすぐに投稿できます。それゆえ、文章以上に投稿には注意すべきなのです。

神戸大学大学院工学研究科 特命教授・名誉教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工芸繊維大学助手、愛媛大学助教授を経て、1995年徳島大学工学部教授、2005年神戸大学大学院工学研究科教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、インターネット、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。加えて、インターネットの文化的社会的側面についての研究、社会活動にも従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。電子情報通信学会フェロー。

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