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中高校生がサイバー犯罪に手を染める!?

森井昌克神戸大学大学院工学研究科 特命教授・名誉教授
マルウェア(提供:アフロ)

インターネットバンキングの不正送金に使われるコンピューターウイルス「ZeuS」を自宅パソコンに保管していたとして、兵庫県警警備部は1日、不正指令電磁的記録保管容疑で、同県相生市の高校2年の少年(16)を書類送検した。

出典:不正送金ウイルス保管容疑で高2書類送検…「アノニマスにあこがれていた」 兵庫県警【産經新聞】

パソコンを遠隔操作できるコンピューターウイルスを使って、ショッピングサイトのIDを盗み出すなどしたとして、東京都内の高校1年の男子生徒が書類送検され、警視庁は生徒がおよそ1800件のIDを盗み出し、転売を繰り返していたとみて調べています。

出典:遠隔操作でID盗み出した疑い 高校生を書類送検【NHK】

今年、奇しくも「サイバーセキュリティ月間」である2月に入り、マルウェア(コンピュータウイルス)を所持、悪用することで、高校生が連続して書類送検されています。これは珍しい事ではなく、特にここ数年、マルウェアの所持や販売、悪用で、中学生、高校生が数多く、補導や書類送検されています。

彼らに対して、「ハッキング能力に優れた人材」と評価をしたり、「将来を期待する」という一部の意見を見かけますが、これは非常に危険です。まず、マルウェア(ウイルス)を扱うぐらい、その気になれば誰でも扱えると言って過言ではなく、中高校生どころか、小学生が扱ったとしても珍しい事ではありません。誰も知らなかった脆弱性(システムの欠点)を発見したり、まったく新しいマルウェアを開発できる能力があれば別ですが、ネットでマルウェアを探して扱うぐらいは容易にできることなのです。ナイフを違法に手に入れ、振り回したことと変わりがありません。この送検された本人はもとより、同じようなことを考えている人たちを勘違いさせて、犯罪に手を染めさせてはなりません。

犯罪に巻き込まれないためのスマホやSNSの利用法といったルールやマナーを教える事も大事ですが、同じようにネット社会の論理教育も必要であり、前者と同じように、出来るだけ早い時期、つまり小中学生から必要です。ネットで何が出来るのか、それを悪用するとはどういうことか、そしてそれが社会に対してそれだけ被害があり、許されない事であるかを教えなければなりません。

神戸大学大学院工学研究科 特命教授・名誉教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工芸繊維大学助手、愛媛大学助教授を経て、1995年徳島大学工学部教授、2005年神戸大学大学院工学研究科教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、インターネット、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。加えて、インターネットの文化的社会的側面についての研究、社会活動にも従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。電子情報通信学会フェロー。

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