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それでもスマホで占いをしますか!?

森井昌克神戸大学大学院工学研究科 教授
占い(写真:アフロ)

システム開発などを委託されていた占い提供会社の営業秘密を他社に漏らしたとして、警視庁生活経済課は12日までに、不正競争防止法違反(営業秘密の領得、開示)の疑いで東京都練馬区向山、システム会社取締役、石黒清容疑者(61)を逮捕した。

出典:人気の「電話占い」でも情報流出 占い会社情報を漏洩の疑い システム会社幹部逮捕【産経新聞】

この7月上旬ですが、あるシステム開発会社の社長が故意の情報漏えいの疑いで逮捕されました。漏れた情報とは、電話を使っての占いを事業としていた会社の情報で、その占いを受けていた顧客情報が含まれます。個人個人の占いの結果やその占いに至る情報(生年月日やアンケート形式による個人情報)が漏れていたのかは不明ですが、漏れていないとは限りません。

この情報漏えいとなった占い提供会社は電話による占い業務でしたが、ネットでの占いが以前から流行っています。スマホの一般化もその背景ですが、単純な姓名判断や手相判断だけでなく、人生相談に近いような、特定のイベント(人生の岐路に立つような判断等)に関する占いも行われています。いくつかのアンケート形式の質問に答えて、占いを行うようなサービスは多々あるのです。無料で、かつ匿名で行う占いも多いことから利用している人も多いことでしょう。

しかし、占いに没頭するあまり、本人が意識することなく、個人情報だけでなく、プライバシーにかかわるような機微な情報を多く伝えている場合も多いようです。匿名であることから安心しているようですが、匿名性というものは必ず保証されているわけではなく、一人一人を識別できているわけですから、何らかのきっかけで特定される可能性は十分あるのです。実際、匿名のSNSで炎上が起こると、必ずと言っていいほど実名が晒されてしまいます。これは容易に「名寄せ」が行われてしまうからです。

昨今、個人情報やプライバシーに対して、その漏えいや利用に関して厳しい声が聞かれます。ある国際的な調査で、日本国民は個人情報やプライバシーに関して極めて敏感な部類に属するものの、個人個人のその対策では、もっとも鈍感な部類に属するという結果が出ています。さほど必要でない懸賞に応募する人も多いようですが、懸賞の第一の目的は個人情報収集です。安易に応募すべきではないでしょう。それと同様、あるいは以上にネット占いでは、ややもすると非常にシビアな個人情報を提示することもあり、注意するに越したことはありません。

神戸大学大学院工学研究科 教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工芸繊維大学助手、愛媛大学助教授を経て、1995年徳島大学工学部教授、現在、神戸大学大学院工学研究科教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、インターネット、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。加えて、インターネットの文化的社会的側面についての研究、社会活動にも従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。電子情報通信学会フェロー。

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