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仰天151キロ! 東海大相模 小笠原

森本栄浩毎日放送アナウンサー
9回1死、勝利目前の東海大相模は、心をひとつにエースの小笠原をマウンドへ送った

夏の甲子園は49代表が出揃う7日目に、ようやく優勝候補筆頭の東海大相模(神奈川)が登場。左右の150キロ豪腕が評判通りの投球を披露し、6-1で快勝。初戦から本領を発揮した。

先発吉田が起用に応える好投

相手の聖光学院(福島)は戦後最長となる9年連続の出場で、近年は試合巧者としても知られる。難敵を迎え、先発はエース左腕の小笠原慎之介(3年)ではなく、背番号11の吉田凌(3年)だった。

吉田は三振を狙って取れる本格派だが、初戦は制球重視で低めに変化球を集め、好投した
吉田は三振を狙って取れる本格派だが、初戦は制球重視で低めに変化球を集め、好投した

「(甲子園への)移動のときに先発を言われました。緊張しましたが、やってやるぞ、という気になりました」という立ち上がりは、2番打者に安打を許す。しかし次打者を併殺に打ち取って「波に乗れました」(吉田)。攻撃は初回の2死から打線がつながった。3番杉崎成輝(3年)から3連打に盗塁、四球を絡め、捕手の長倉蓮主将(3年)が2点二塁打で一挙4点を奪った。試合はこの立ち上がりで決したようなもの。吉田は大量援護ですっかり楽になり、打たせて取る投球に徹した。「三振にこだわると球数が増えるので」と9回途中までわずか86球。4安打1失点で奪った三振は2つだけと本人も納得の内容だった。

あとアウト二つで小笠原登場

9回1死となったところで、待ちかねた4万6千の観衆からの拍手に送られ小笠原がマウンドへ。吉田に「ナイスピッチング」と声を掛け、バトンを受け取った。初球はいきなり148キロ。

力強いフォームから剛球を投げ込んだ小笠原は、大舞台で自己最速をマークした
力強いフォームから剛球を投げ込んだ小笠原は、大舞台で自己最速をマークした

左腕から繰り出される剛球に場内はどよめく。次も148キロ。この打者を二塁ゴロに抑え、次打者の4球目(ファウル)に自己最速の151キロが出て、スタンドは驚きと歓声に包まれた。最後を三振で締めた小笠原は、「スピードは狙っていないので、(自己最速には)ちょっとびっくりしました。全然、手応えもなかったし。ここ数日の練習でストレートの調子がよくなかったので、(本番は)大丈夫かな、と思っていました」と拍子抜けしたように話した。それでも打者二人に9球投げただけで、今大会ナンバーワン投手であることを証明した。

監督は総合的に判断して吉田を先発に

「相手(聖光学院)は粘り強く接戦に強い。勝てるために総合的に考えて、力で押し切るのではなく、相手を上回る粘りを見せてくれる吉田の方がいいと判断しました」と門馬敬治監督(45)は初戦の先発起用の理由を明かした。小笠原の言うように調子が上がっていなかったことも吉田先発の一因だったかもしれない。昨年も優勝候補に挙げられながら、初戦で盛岡大付(岩手)に1点差負け。6日目の初戦登場は今回の7日目とダブり、門馬監督は「調整が難しい」と抽選日にこぼしていた。しかし、2回戦からの登場は消耗が激しい夏の大会を勝ち抜くには大きな追い風となる。5年前の準優勝時も2回戦からの登場だった。今後の試合でこの日のような継投になるのか、一人にその試合を任せるのか、投手起用はポイントになるが、6得点が全て2死からだったように、チーム状態はかなり良さそうだ。評判の高かった静岡、智弁和歌山、天理(奈良)などが力を出す前に初戦で散ったが、東海大相模は別格の安定感を見せつけた。次の相手の遊学館(石川)は主戦の小孫竜二(3年)が安定し、打線もミートがいいので油断できないが、準々決勝まで1日空く日程にも恵まれている。東海大相模が、高校野球100年の大会の主役になりそうだ。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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