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センバツ8強決定! 準々決勝の見どころ

森本栄浩毎日放送アナウンサー
近畿勢優勢の中、関東で唯一勝ち残った木更津総合の早川は大阪桐蔭を破って進撃

センバツ高校野球は8強が出揃った。はじめの2試合はいずれも近畿勢同士の顔合わせとなり、さながら『近畿大会』の様相だ。センバツは再抽選がないため、この『近畿大会』を勝ち抜いたチームが決勝に進出する。一方のブロックは最右翼と見られた大阪桐蔭、連覇を狙った敦賀気比(福井)が敗退し、混沌としてきた。28日の準々決勝を展望する。

智弁学園(奈良)-滋賀学園(滋賀)

この近畿同士のカードはいずれも昨秋では実現しておらず、力関係は未知数。ただ、この試合は焦点がわかりやすい。今大会好調の滋賀学園打線と、速球派右腕・智弁の村上頌樹(3年)の激突が最注目だ。村上は、初戦の福井工大福井には10安打されながらも完封。鹿児島実には立ち上がりを攻められたが、何とか1失点で切り抜けて味方の反撃につなげた。

滋賀学園の4番馬越は、頭上でバットを回す「ヘリコプター打法」で長打を連発
滋賀学園の4番馬越は、頭上でバットを回す「ヘリコプター打法」で長打を連発

この試合でも村上の出来が試合を大きく左右する。滋賀打線は、2回戦で本塁打を放った4番の馬越大地(3年)を軸に下位まで当たっている。どんなタイプの投手でも打ち崩していることから、村上は徹底してコーナーを突く必要がある。滋賀のエース・神村月光(ひかり=2年)は、昨秋ほどの出来ではないが、緩急を使うなど投球にうまさが増した。滋賀は2戦とも打線が爆発して接戦を経験していないことから、智弁としては、中盤まで競り合えば勝機は十分。逆に滋賀は村上の立ち上がりを攻めて序盤戦を制すれば、滋賀勢初のセンバツ4強も見えてくる。

龍谷大平安(京都)-明石商(兵庫)

優勝候補の東邦(愛知)を破って勢いに乗る明石商を、甲子園98勝の平安がどう食い止めるか。初戦のサヨナラスクイズで勢いづいた明石商は、2回戦で東邦・藤嶋健人(3年)に適時長打3本、エース・吉高壮(3年)の完封で完勝した。

安定感ある投球で東邦を完封するなど、秋から大きく成長した明石商の吉高
安定感ある投球で東邦を完封するなど、秋から大きく成長した明石商の吉高

勝ち残った近畿4校で最も安定した戦いぶりだ。平安は、エース・市岡奏馬(3年=主将)が安定感を増し、制球難から崩れる心配はなくなった。本塁打を放っている橋本和樹(3年)、岡田悠希(2年)が好調の打線は明石商を上回る。吉高は、多彩な変化球を持ち、的は絞りにくいが、軸になるのはスプリット。平安は、ストライクを取りにくるところを狙いたい。ただ吉高は、東邦戦後、太ももがつるアクシデントがあり、このあたりの回復具合は気になる。控えの山崎伊織、三浦功也(いずれも3年)の登板も。明石商は、中盤まで競り合った展開で、得意の機動力、犠打を駆使できる展開に持ち込めればチャンスも生まれる。

木更津総合(千葉)-秀岳館(熊本)

大阪桐蔭を5安打1失点に抑えた木更津総合の早川隆久(3年=カバー写真)と、2回戦で3本塁打16得点と猛爆した秀岳館打線の対決は興味深い。秀岳館は、初戦で花咲徳栄(埼玉)の好左腕・高橋昂也(3年)を攻略した。今大会での出来は早川が上回っていて、2回戦のようにはいかないだろう。特に速球とチェンジアップのコンビネーションが冴えを見せる。

秀岳館は、4番九鬼を中心に右打者が快打を連発。徳栄・高橋昂に続き、早川攻略なるか
秀岳館は、4番九鬼を中心に右打者が快打を連発。徳栄・高橋昂に続き、早川攻略なるか

4番の九鬼隆平(3年=主将)ら好調な中軸の右打者が、大振りするようだと打線が沈黙する可能性がある。また秀岳館は、投手起用と継投のタイミングもポイントになる。先発は3試合連続で右腕の堀江航平(3年)か。調子が出ないようだと早めの継投も考えられるが、2回戦で大型右腕の有村大誠(3年)を温存できたのは大きい。有村はブルペンでしっかり投球練習していたので、先発での登板も考えられる。木更津総合は、桐蔭戦のように早い回で得点できれば投手に信頼感があるため優位に展開できるが、打線も含めた総合力は秀岳館に分がある。

高松商(香川)-海星(長崎)

秋の神宮を制した高松商は、初戦を苦しみながら勝ち上がり、2回戦では創志学園(岡山)の150キロ右腕・高田萌生(3年)を打ち崩した。各打者の選球眼がよく、2ストライクからでも粘れる相手投手には厄介な打線だ。当たっていないトップの安西翼(3年)が出塁すれば、一気に活気づく。主戦の浦大輝(3年)は制球が安定し、2回戦を94球で完投した。

敦賀気比を破って喜ぶ海星ナイン。好救援した土谷(右から二人目)を笑顔で迎える
敦賀気比を破って喜ぶ海星ナイン。好救援した土谷(右から二人目)を笑顔で迎える

1回戦で好救援した二塁手の美濃晃成(3年)を温存できたのは大きい。一方の海星は、2回戦で優勝候補の敦賀気比を破って自信を深めた。左腕・春田剛志(3年)から土谷一志(3年)への思い切ったリレーも鮮やかに決まって、勝ちパターンが確立されている。ピンチで救援するのではなく、イニングの頭から代えるのが特徴だ。両校とも継投機がポイントになってくるが、打線の調子は高松商がやや上か。連戦になるため、先発が早い回で交代すると救援投手の出来が最大のポイントになる。

波乱の大会を制するのは?

当初、4強と見られた中で、常総学院(茨城)は1回戦で。東邦、大阪桐蔭、敦賀気比が2回戦で敗退する波乱の大会。投手が消耗してくる準々決勝以降は、複数投手や継投策のチームが優位だが、今大会は集中打を見せたチームが好投手を呑み込む試合が目立つ。打線に底力のあるチームが頂点に立つとみた。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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