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いよいよ準々決勝!  波乱続く夏の甲子園

森本栄浩毎日放送アナウンサー
盛り上がりを見せる夏の甲子園もいよいよ8強が激突!どこが頂点へ駆け上がるか

リオ五輪の陰に隠れてはいるが、今年の夏も甲子園は熱い。2回戦で早くも優勝候補の履正社(大阪)と横浜(神奈川)が対戦して、履正社に軍配が上がった。その履正社が3回戦で常総学院(茨城)に敗れ、大会前から評判が高かった2強が準々決勝を前に姿を消した。

==常総・鈴木昭は力勝負避け奏功==

もっとも、常総は昨秋の関東大会で横浜を破って、今春センバツで優勝候補に挙げられていた実力校。選手個々の能力や試合運びの巧みさは今大会随一と言える。この難敵に対し、履正社は、今大会初登板となる左腕の山口裕次郎(3年)を先発させた。大阪大会をエース・寺島成輝(3年)と併用して勝ち抜いたチーム事情を考え合わせれば起用は不思議でない。しかし常総の佐々木力監督(50)は、「先発を想定し、対策は練っていました。同じようなタイプですが、スピードは寺島君の方が上」と分析し、積極的に仕掛けた。初回に速攻で2点を奪うと、2回も下位打者の活躍で、山口をKO。そして寺島の代わり端を1番・有村恒汰(3年)がとらえ、次打者も続いて一気に5-0と突き放す。その後は履正社も反撃に転じるが、序盤に引き離されたため、いつものようなきめ細かい攻撃ができず、残塁の山を築いた。

常総・鈴木昭は134球、13安打4失点(自責3)で堂々、履正社を打ち破った
常総・鈴木昭は134球、13安打4失点(自責3)で堂々、履正社を打ち破った

常総のエース・鈴木昭汰(3年)は、「今までの自分なら、(周囲に)乗らされて力勝負にいっていましたが、割り切れました」と敢えて寺島を意識せず、打たせて取る投球に徹した。13安打を浴びたが、20のゴロアウト(失策含まず)で奪った三振は0。佐々木監督は、「左打者の内角をよく攻めていた」と称えた。一方の寺島は急遽登板に、「(肩を)作り始めの状態でした」と明かし、「自分の一番自信があるタマを打たれたので仕方ない」と潔かった。その上で「ストレートもまだまだだし、持っている技術を全てアップしないと上(プロ)では通用しない」と厳しい自己評価を下していた。

==8強激突! 好勝負期待==

さて、波乱の中、8強が決まった。抽選で、出場49校中15校は2回戦からの登場(2勝で8強)になる。8強では、常総と鳴門(徳島)を除く6校が恩恵にあずかった。1回戦からの登場組には今夏の酷暑が堪えたのではないだろうか。このハンディを乗り越えて、6勝での優勝チームが出現するか興味深い。

常総学院(茨城)-秀岳館(熊本)

8強中、トップクラスのチーム力を持つ両校の顔合わせ。複数投手がそれぞれに力を発揮している秀岳館が、2回戦から登場の優位さを生かせるか。

秀岳館の九鬼捕手は、「次の試合は打ち勝ちたい」と。打っても4番で打撃も上昇気配だ
秀岳館の九鬼捕手は、「次の試合は打ち勝ちたい」と。打っても4番で打撃も上昇気配だ

3回戦では、「相手打者との相性などを見極めて交代させたい」と話す鍛冶舎巧監督(65)の投手交代がことごとく成功した。今大会屈指の好捕手・九鬼隆平(3年=主将)が各投手の良さを存分に引き出している。「(各投手の)その日のいいタマをどう使うか。それも相手に読まれないように」と九鬼は洞察力も非凡だ。常総は上位打線が当たっていて、多彩な攻撃パターンを持つ。投手交代機に畳み掛けられれば、常総にチャンスが訪れる。ただ、常総はエース・鈴木昭の疲労が気がかり。右横手から力のあるタマを投げる倉田希(3年)の起用も考えられる。カギは常総投手陣の出来で、秀岳館は、序盤から引き離して得意の継投に持ち込みたい。

鳴門(徳島)-明徳義塾(高知)

四国勢同士の対戦。今春の四国大会で当たって、明徳が3ー2で勝っている。投手は明徳が右横手投げの金津知泰(3年)、鳴門がエース左腕の河野竜生(3年)でいずれも完投した。

鳴門の河野は3年連続の夏舞台。2年連続初戦敗退の雪辱を果たし、一気に頂点を狙う
鳴門の河野は3年連続の夏舞台。2年連続初戦敗退の雪辱を果たし、一気に頂点を狙う

鳴門は投手陣に疲れが見られ、打線の奮起が望まれる。森脇稔監督(55)は2回戦でも攻撃優先のオーダーを組んだ。今大会の開幕試合となった初戦の佐久長聖(長野)戦で初回に、4番の手束海斗(3年=主将)が先制2ランを放って打線に勢いをもたらした。3回戦でも初スタメンの中山晶量(3年)が本塁打を放つなど打線は好調を維持している。3回戦で救援し、終盤大量失点した河野は、「しっかり準備はしていたんですが、(交代の)タイミングとかわからなくて難しかった」と話すように、河野の先発が順当か。一方の明徳も、投手に不安を残す。外のスライダーが冴えるエース・中野恭聖(3年)は球威がいまひとつ。馬淵史郎監督(60)が、「守り合いならどこにも負けない」と自信を持つ守備陣を信じて、打たせてとる投球に徹することができるか。こちらも鳴門が1回戦から登場しているのに対し、明徳は2勝で8強と抽選運に恵まれている。

北海(北海道)-聖光学院(福島)

10年連続出場の聖光は、3回戦で、予選でも投げなかった4番打者の鈴木駿輔(3年)が先発し、東邦(愛知)に完投勝ちした。今大会、エース温存が裏目に出て敗れるチームが目立っているが、鈴木駿は救世主になった。5月以来の公式戦登板で、9回完投は初めてと言うから驚く。斎藤智也監督(53)は、「スピードが最後まで落ちなかった」と試合後のインタビューでも驚いた様子だった。ただ、準々決勝は左腕の鈴木拓人(3年)の先発が順当か。

北海・大西は、「聖光には、同宿だったクラーク国際も負けているので何とか」と意欲を見せる
北海・大西は、「聖光には、同宿だったクラーク国際も負けているので何とか」と意欲を見せる

北海は、エース・大西健斗(3年=主将)が大黒柱として踏ん張る。過去2試合は、終盤まで熾烈な投手戦を展開して勝ち上がった。平川敦監督(45)は、「粘り強く、丁寧な投球ができている。気持ちのこもった素晴らしい内容」と絶賛。予選でも大事な試合は全て大西が完投していることから、聖光戦も先発が濃厚で、大西の投球が勝敗を左右するのは間違いない。北海は、立ち上がりに聖光投手陣を攻めて、序盤で主導権を握る展開に持ち込みたい。

作新学院(栃木)-木更津総合(千葉)

今大会屈指の好投手を擁する関東の強豪同士。作新の今井達也(3年)は、3回戦で今大会最速の152キロをマークした。中盤にはカットボール、チェンジアップも使い、「三振を取るところと打ち取るところのメリハリがつけられた」と自賛した。初戦よりも力が抜けていた印象で、小針崇宏監督(33)は、「できるだけ打たせていこうと指示したが、思ったところにいいタマがきていた」とこちらも高評価。

木更津総合の早川は、「甲子園で不思議なパワーをもらっている」と好調をキープ
木更津総合の早川は、「甲子園で不思議なパワーをもらっている」と好調をキープ

一方の木更津総合・早川隆久(3年)は2試合連続完封で、甲子園経験の豊富さは今井を上回る。特に3回戦の広島新庄戦は、3安打で3塁を踏ませない完璧な内容だった。五島卓道監督(62)は、「低めに投げる意識が徹底されていた。捕手の大澤(翔=3年)ともども、相手打者をよく観察できるようになった」と成長を認める。連戦となるだけに、両エースが先発するかも含め、投手の出来がポイントになるが、両校はともに2回戦からの登場で条件は同じ。7月に練習試合をしていて1勝1敗。両エースは投げなかったようで、全くの互角だ。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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