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センバツ前半終了  大阪勢と早実の優勝争いか?!

森本栄浩毎日放送アナウンサー
清宮の大会といわれる今センバツ。好投手が姿を消し、やはり打力のチームが勝ち進むか

センバツの1回戦が25日に終わり、出場32校が出揃った。屈指の好カードは予想通りの熱戦になり、後半戦へ期待を膨らませた。また、屈指の好投手が初戦で姿を消し、打力のあるチームが上位をうかがう様相となっている。

履正社は難敵撃破

初日から好カードに沸いた。優勝候補同士が激突した日大三(東京)と履正社(大阪)の一戦は、序盤から激しい攻防となり、8回を終わって5-5。

日大三の桜井は鋭いスライダーで安田、若林の履正社中軸から計7三振を奪った
日大三の桜井は鋭いスライダーで安田、若林の履正社中軸から計7三振を奪った

しかし、立ち上がりから飛ばしていた日大三のエース左腕・桜井周斗(3年=主将)が9回に息切れし、猛攻を受けて大差がついた。試合内容は互角で、優勝争いを左右する一戦だったことは間違いない。3日目には大会を代表する右腕が相次いで登場し、明暗が分かれた。福岡大大濠の三浦銀二(3年)は、創志学園(岡山)相手に3失点(自責2)で完投勝利。変化球の制球も良く、序盤のリードでペースを握った。東海大市原望洋(千葉)の金久保優斗(3年)は、滋賀学園に粘られ、延長14回に力尽きた。自己最速タイの147キロを計測したが、さすがに200球を超えてからは制球に苦しんだ。スライダーのキレも抜群で、完成度はトップと言える。

早実、明徳との激戦制す

4日目あたりから波乱も目立ち始め、仙台育英(宮城)が福井工大福井に逆転負けを喫した。先制したあとの攻めが雑になって相手を勢いづかせた。三拍子揃った好チームだっただけに、力を出す前に敗退したのは惜しまれる。5日目に敗れた神戸国際大付(兵庫)もハイレベルでまとまる好チームだったが、自信のある守りが乱れたのは残念のひと言。夏の捲土重来が待たれる。そして1回戦のハイライトが、早稲田実(東京)と明徳義塾(高知)の試合だった。明徳の北本佑斗(3年)は、早実の怪物・清宮幸太郎(3年=主将、タイトル写真左)を1安打に抑えたが、あとアウトひとつが取れなかった。2点リードで迎えた9回2死までリードしていたが、清宮の前打者の投ゴロをファンブル(失策)。清宮まで回ると球場の雰囲気が一変し、動揺した北本は、清宮に四球を与えて満塁とすると、4番・野村大樹(2年)にも押し出し四球を与えた。延長10回に、9番・野田優人(2年)にこの試合3本目のタイムリーが出て、早実が大一番を制した。清宮は、「個人的には50点」と表情は冴えなかったが、「チームが勝つことが大事なので、先攻で勝てたのは価値がある。下級生が活躍したのも勢いがつく」と次戦への意欲を口にした。球場全体を味方につけられるのは、大きなアドバンテージになる。

大阪桐蔭は1回戦完勝

1回戦の最後に登場した大阪桐蔭は、選手層の厚さを見せつけた。大会前に正捕手の岩本久重(3年)をケガで欠いたが、それを感じさせない堂々たる試合運びで中国大会優勝の宇部鴻城を寄せ付けなかった。

大阪桐蔭の根尾は、シャープなスイングで甲子園デビュー。投手としても期待される
大阪桐蔭の根尾は、シャープなスイングで甲子園デビュー。投手としても期待される

本塁打を放った山田健太を始め、初回5点の口火を切った藤原恭大、初回にタイムリーの根尾昂ら2年生が伸び伸びと躍動。岩本に代わって最終登録で出場機会を得た柿木蓮(2年)の143キロデビューもあって、大収穫の初戦だった。勝ち進めば連戦になる苦しい日程運だが、予想通り下級生が力を伸ばしていて、勢いもつきそうだ。この日は2回戦の2試合もあり、履正社と盛岡大付(岩手)が8強に進出。センバツ連覇を狙った智弁学園(奈良)は打線が沈黙し、昨夏に続く2回戦敗退となった。

左右ナンバーワン投手が敗退

ここまで見る限り、投手力で今後の展望が開けそうなのは福大大濠くらいで、得点力のあるチームが優位な情勢。左腕は日大三の桜井。右腕では望洋の金久保がナンバーワンと思われるが、いずれも消耗から力尽き、上位進出を阻まれた

望洋の金久保は、延長14回に力尽きた。速球とスライダーはともに今大会随一だ
望洋の金久保は、延長14回に力尽きた。速球とスライダーはともに今大会随一だ

。桜井は、「(履正社の)安田(尚憲=3年)と若林(将平=3年)を抑えたのは自信になる。収穫もあったが、前半から飛ばしすぎて最後は腕が振れなくなった」と課題がはっきりした様子。早実との西東京代表争いが今から楽しみだ。金久保も、「下半身をもっと鍛えないと」と悔しそうに話したが、200球を投げても140キロを超えていたスタミナは高校生離れしている。左右の違いはあっても、両者ともスライダーが一級品で、コースに投げられれば高校生では打てない。

21世紀校に壁厚く

21世紀枠校は、いずれも甲子園優勝経験校相手で分厚い壁に跳ね返された。

10人で健闘した不来方は、スタンドからの声援に応え最後まで全力プレーを見せた
10人で健闘した不来方は、スタンドからの声援に応え最後まで全力プレーを見せた

多治見(岐阜)は秋の県大会優勝校だったが、報徳学園(兵庫)に21得点され、いいところなく敗れた。中村(高知)は、明徳を県大会で破って優勝していたが、前橋育英(群馬)に押し切られた。直前のインフルエンザ禍で大きなハンディがあったことを考えれば、攻守にわたってその片鱗が垣間見えたのは救いだった。10人で健闘した不来方(岩手)は、エースで4番の小比類巻圭汰(3年=主将)の先制打で好スタートを切ったが、静岡に2桁失点で完敗。それでも打線は9安打と奮闘し、「冬の練習の成果が出た」と小比類巻。小山健人監督(30)も、「(人数が)少ないなりにやれることはやれた」とすがすがしく振り返っていた。甲子園出場の意義があったかどうかは、それぞれの今後にかかっている。

大阪勢と早実の優勝争いか

優勝争いは、大阪勢を軸に展開されそうだ。8強一番乗りの履正社は、2回戦は打線が奮わなかったが、相変わらず攻守に質が高い。大阪桐蔭は強豪の揃ったゾーンに入り楽ではないが、選手層の厚さでは他校を圧倒している。早実との準々決勝が実現すれば、優勝争いを左右することは間違いない。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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