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アメリカ1000年に一度の大洪水 

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
浸水したサウスカロライナの様子(写真:ロイター/アフロ)

最近すっかり聞き慣れてしまった「記録的」な天気。記録的豪雨、記録的高温など、このところ、今まで経験したことのないような天候が頻繁に起きています。

NOAAによる週前半の降水予想。サウスカロライナ州に大雨の予想が出ている。
NOAAによる週前半の降水予想。サウスカロライナ州に大雨の予想が出ている。

しかし、アメリカ南東部のサウスカロライナ州では、「記録的」に収まらず、「1000年に一度」とも言われる大洪水が発生しています。

同州では非常事態宣言が出され、洪水により少なくても15人が死亡。18のダムが決壊または氾濫し、州の50%以上の土地が浸水しています。

何が起きたのか?

先週末から、アメリカ南東部に前線と低気圧が居座っていたことに加え、大西洋上のハリケーン・ホワキンがゆっくりと北上する際に、湿った空気を次々と送り込みました。

NOAA。雲が何日にも渡って南東部にかかっている。
NOAA。雲が何日にも渡って南東部にかかっている。
NOAA。前線と低気圧が2日からずっと南東部に居座っている。
NOAA。前線と低気圧が2日からずっと南東部に居座っている。
NOAAのよる総降水量の図。東部ほど雨が多く降っている。
NOAAのよる総降水量の図。東部ほど雨が多く降っている。

サウスカロライナ州では、10月1日から5日の間に、680ミリを超える雨を観測。また、州都コロンビアの空港では、日曜日に170mmの雨が降り、日最大雨量の記録を更新しました。さらにその翌日にも174mmの雨が降り、記録はあっという間に塗り替えられたのです。

アメリカのメディアでは、"Biblical floods" (聖書に出てくる洪水)や、"Once in a thousand deluge" (千年に一度の大雨)など、インパクトのある言葉でこの惨状を伝えています。

洪水による、意外な被害

この歴史的洪水によって、衝撃的な出来事が起きたり、聞き慣れない注意喚起がされています。

・ 墓地で洪水が発生し、棺が流されてしまったため、神父が浮かんでいる棺を取りに行った。

・ 気象局から野生動物への注意喚起が行われた。その内容は以下のもの。

“Be alert to wildlife that may have been displaced by flood waters … including alligators and snakes. (洪水でワニやヘビが逃げているかもしれないので、注意してください)”

・ 川の水が濁っているために、州がボイルウォーター注意報を発令。水は1分以上沸騰させてから使用するよう注意喚起している。

・ 人気気象キャスターのアル・ローカー氏が、洪水現場で笑顔の写真を撮って投稿したことから、非難が殺到。謝罪に追われた。

今後の天気

先週から続いた雨は、6日(火曜)ようやく終わりを迎えました。しかし、広範囲に広がった洪水はなかなかひきそうにありません。今後は、復旧作業に伴うけがや、カビの繁殖や感染症などといった、新たな問題に直面していかなくてはならないのです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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