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ペルシャ湾岸は生存不可能に 今世紀末までに気温60℃に達する恐れも

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
(写真:アフロ)

The combination of high temperatures and humidity could, within just a century, result in extreme conditions around the Persian Gulf that are intolerable to humans, if climate change continues unabated.

(このまま気候変動が続けば、たった一世紀のうちに、高い気温と湿度によって、ペルシャ湾周辺は人々が耐えられない過酷な環境になる恐れがある)

これは科学誌ネイチャーに発表された、スイスの大気気候研究所クリストファー・シェール氏による論文の一節です。このまま温暖化が進むとすると、2100年までには、中東の一部の地域で人が住めなくなるかもしれないと言うのです。

これに関連し、アメリカの研究者は、クウェート市やアラブ首長国連邦のアル・アインなどで、気温が60℃に達する恐れがあると予測しています。ちなみにこれまでの最高気温の世界記録は、1913年に米カリフォルニア州・デスバレー(死の谷を意味する)で観測された、56.7℃です。

ペルシャ湾岸の地域では高い湿度も加わって、体感温度が75℃まで上昇する可能性も指摘されています。日本人に人気のドバイやアブダビも、観光どころの騒ぎではなくなるかもしれません。

一体、体感温度70度台とはどんな環境でしょうか。

サウジアラビアに住んでいた男性はこう言います。「誰かにホットタオルを強く押し付けられているような暑さ」、そして「汗はすぐ出てきて、メガネをかけるとレンズがすぐ曇る」と。

先月は観測史上最も暑い9月だった。クレジット:NOAA
先月は観測史上最も暑い9月だった。クレジット:NOAA

温暖化で得する国もある

しかし、物事には表と裏があるものです。温暖化は、中東など元々暑い場所にとってはいいことはなさそうですが、寒すぎて人が住むのに不適だったところには、好影響をもたらす可能性があります。

例えば極寒の地・グリーンランドでは、気温の上昇に伴い農業生産が増加しています。実際、2008年から2012年の間にジャガイモの収穫量が2倍に増えたと報告されています。

またアイスランドでは、氷河が溶け続けていることにより、鉱物資源の開発が加速しています。さらにロシアのシベリアでは、永久凍土が溶け、ダイヤモンドや金などの採掘も盛んになっているようです。

その他にも北極圏の氷が解けて北海航路ができ、貿易が盛んになる、渡航が容易になることで、観光産業が盛んになることなどが期待されています。もちろんこうした国々もいいことばかりではないでしょうが、少なからず、こうした温暖化の恩恵を受けているようです。

それでは、日本ではどうでしょう。

ゲリラ豪雨が多発して洪水リスクが高まる西日本などでは米の収穫量が減少したりするなど、いくつもの問題が懸念されています。しかし一方で、特に北日本では農業の栽培期間が長くなる以前作れなかった作物が作られるようになるなど、好影響も考えられます。

IPCCも温暖化の進行は不可避のところまで来ていると指摘しています。今後私たちは、来るべき気候の変化に順応する道を探る必要があるのです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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