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なぜアメリカ気象キャスターは、同じドレスを着るのか

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
(提供:アフロ)

今、全米気象キャスターをとりこにしている、一枚のドレスがあります。

とてもカラフルで、体のラインがはっきり見える、セクシー、かつ上品なドレスです。なんでもオクラホマ州の気象キャスターが、この洋服をSNSで紹介したところ、瞬く間に広がって、50人以上のキャスターが同じドレスを購入したというのです。

しかし、確かに綺麗なドレスではありますが、他にも素敵なものはいくらでもあります。一体なぜ、このドレスが人気になったのでしょう。

その裏には、アメリカの気象キャスターの抱える、とある事情があるようです。

その1:衣装が自前だから安く抑えたい!

驚くことに、このドレス、価格がたったの22.99ドル(約2800円)です。そのエレガントな見た目からは信じられない価格ですね。

日本もそうですが、アメリカでは多くの気象キャスターが、自前で衣装を用意しています。多数の視聴者は衣装を楽しみにしているので、同じ服を何回も着るわけにはいかない。それで一着分の費用はなるべく抑えたいのです。それにこのドレスは袖があるので、寒い時期も着られ、経済的というわけです。

その2:衣装のルールが厳しい!

アメリカのニュース番組はイメージを大切にするので、出演者の衣装の色形にも厳しく注文がつくようです。また過度な露出も好まれません。その点でこのドレスは、カラーが7色、かつ適度なスカート丈とフォーマルなスタイルなので、安心といえましょう。

その3:視聴者フレンドリーなデザイン!

当たり前ですが、気象キャスターは天気図や降水予想図など、背景にカラフルな画面を背負っています。つまり、バックに多くの色が使用されているので、視聴者の目がチカチカするような、小さい柄の入った洋服や、色が多様に使用されている服をなるべく避けたいのです。この服は、黒との2色使いなので、その心配もなさそうです。

その4:緑色の服は禁止

アメリカの多くの天気番組は、「クロマキー」と呼ばれる緑色のスクリーンの前で撮影をしています。緑色の部分はCGなどの他の情報に入れ替わり、何も映らない設定となっています。そのため緑の服は御法度。もし着たら、そこだけ映りません。ちなみに緑の代わりに青のスクリーンの場合もありますが、青い目の人は目が透けてしまうので、緑の方が数は多いようです。

このように、気象キャスターの衣装は、何気に制約だらけなのです。

ちなみにこのドレス、あまりの人気ぶりに2日で800着も売れたとのこと。ただまだ完売ではなく、アメリカのアマゾンで購入できるようです。実は、私もつられて一着購入。来年1月頃に届くそうです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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